エピローグ 『そうして、僕達は』
一緒に笑った夏があって
必死に戦った秋があって
寒いねってまた笑う冬があって
別れや出会いの春があって
────そうして、また一年が経った。
◇◆◇◆◇◆◇
「卒業おめでとう、隼人。それに結衣ちゃん」
「ありがとう姉ちゃん」
「ありがとうございます」
あれから一年以上が経った。
長いようで短かった高校生活も終わりを告げ、遂にこの日卒業を迎えた。
卒業式には親が仕事の都合で来れず、代わりに姉の春奈と妹の由希が来てくれた。
「お兄ちゃん、おめでとう」
「ありがとう、由希も高校生活頑張れよ」
「うん、私も来年から夢乃原高校通える様に頑張るから!」
「まぁ程々にな」
「うん!」
由希も気付けば中学三年生。
今年は受験生になり、兄の僕と同じ夢乃原高校へ通える様に勉強を頑張っている。
「おーい隼人!写真撮ろうぜ!」
冬葵の呼ぶ声がした。
声のする方を見る。冬葵の隣には梨花も居た。
「ほら、私が写真撮ってあげるから並んで」
春奈に促され、僕 冬葵 梨花の三人で写真を撮って貰う。
今思えば、これが制服で撮る最後の写真だ。
これから先、制服なんて着ればコスプレになってしまう。
「いやー遂に俺たちも卒業かぁ」
「なんか早かったよね三年間」
「まぁな」
実際の所、僕からすれば三年間+巻き戻った五ヶ月なので若干他の人よりは長い。
それでも、思えばあっという間だった。
あれから、瑠香と夏希とは違う形で接点が生まれた。未来を知っているからこそ、何が起こるかは分かっていたから。結果的に、僕が刺された動画は出回るし、夏希はアイドルを辞めかけるし……世界は変われど、結局辿り着く所は一緒らしい。
ただ、一つ。上野優衣とだけは出逢う事は無かった。それはそれとして、淡い初恋の想い出として心にしまう事にした。
「今までずっと一緒だったけど、遂にバラバラになるなぁ」
冬葵は、残念そうに語る。
冬葵の言葉の通り、幼稚園からずっと一緒だったこの三人も、遂に別々の道を歩む。
僕は結衣と同じ大学へ。梨花は違う県の大学、冬葵はスポーツ推薦で県内の大学。
それぞれに違う道があり、これからは交わる事は無くなってしまうかもしれない。
「けど、たまに集まろうぜ。飯食いに行くとか」
「当たり前じゃん!」
「右に同じく」
「なんなら今日早速卒業おめでとう会するか!」
「いいねぇー」
「上野さんもどう?」
冬葵に突然話を振られ、結衣は驚いた様子だ。
それでも、少し考えた後、
「私も……行く」
と答える。
この一年で結衣も変わった。
見えていたものが見えなくなり、人と接する事に抵抗が無くなったお陰だ。
現に、姉の春奈や梨花なんかとも普通に会話できるくらいにはなってる。
今でも少しは目を見る事躊躇するらしいが、友人も多少増えたらしい。
「じゃあ隼人と梨花のバイト先集合な!」
「OK〜!結衣ちゃんと隼人もまた後でね」
そうして僕と結衣を置いて、二人は再びどっかへ行ってしまった。友人が多い人間は大変そうだ。
「じゃあ私と由希は先に帰るから」
「またねお兄ちゃん」
「おう、またな」
「ありがとうございました 」
「うん!結衣ちゃんもまたね」
姉と妹の二人も帰り、今度こそ完全に二人きりになる。
生憎、この一年で上坂隼人に友人が増えることはなかった。故に、これ以上ここに留まっても、何のイベントもない。
「上坂、もう向かう?」
「いいけどお前の親は?」
「仕事だよ、上坂と同じ」
「そっか、挨拶しようと思ってたけど。ならもう先に行くか」
結衣の手を取り、僕と結衣は歩き出した。
満開の桜並ぶ並木道の下を。
「なぁ、結衣」
「何、上坂」
「絶対に幸せになろうな。二人で。」
「……うん!」
どうか、いつまでもこの幸せが続きますように。
そうして、僕達はこれからも生きていく。
完。
見えない物が見える僕達は Yuu @yuu01055555
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