誤爆☆少女!かのん~誤爆で百合告白しちゃって困ったことになったけど美少女なので受け入れてください!~
宮嶋ひな
これはスマホで読んでね!
「リコちゃーーん! たすけてわたし死んじゃうーっ!」
肩口で切りそろえられた桜色の髪を三つ編みハーフアップにした、美少女JKが教室にどかどか入ってくる。
一番後ろの窓際でまどろんでいた、長身長髪、つややかな黒髪のつり目美女がうろんげに美少女をにらんだ。
「かのん、うるさい」
「わーーーんもうムリむりムリぃぃぃ終わったマジ終わったぁー!!!」
「あんたの教室はお隣よ」
「冷たッ!? リコちゃん冷たいよぉ幼なじみでしょぉ~お話聞いてよぉおおお」
かのんはリコの豊満な胸にぐりぐりと頭をこすりつけながら、土下座する勢いで頼み込んだ。リコは心底面倒くさそうにため息を吐いて、ちらりと時計を見る。
十二時、三分過ぎ。お昼休みはまだ始まったばかりだ。
ついでに、何事かと驚きの表情でたたずむクラスメイトたちの顔も視界に入った。白い肌を少し赤らめながら、リコは立ち上がる。
「聞くだけよ。こっち来なさい」
「あひゃぁ~さっすがリコちゃん~♡ 行く行く! ついて行きますぅ~!」
かのんの見えない尻尾がブンブン振られている。リコの腕に自らの腕を絡ませながら、上機嫌で教室を出るかのん。
聖アルレシオ高等学校は、由緒正しいキリスト系の共学校だ。その歴史に比例するように、あちこちに噴水や木々、庭園が広がり、生徒たちは思い思いに昼休みを満喫していた。
その庭園の奥、白鳥の噴水がきらきらしく輝くバラ園にかのんを引っ張ってくると、白いベンチに座ったリコがようやく口を開いた。
「で? いきなり突撃してきて、なんの用よ」
「あーんリコちゃん~これ見てぇ」
そう言ってかのんは、自らのスマホを取り出した。白猫の立体的なカバーがしてある、いかにもかのんらしい可愛いスマホだ。
差し出された画面を見てみれば、LIMEの画面が映し出されていた。そこにははっきりと『大好きです!』の文字が表示されていた。
リコは全身の血の気が一瞬でザッと引き、青ざめた顔でかのんを見た。
「……あんた、もしかして……」
「ひぐっ!? リリリ、リコちゃん、お顔こわぁいよぉ……?」
「このおバカーーー!!! あんたまた誤爆したでしょーー!?」
「ぁひゃああぁんごめんなさいぃぃ!! よく見てなくてーっ!」
「ちょっと貸しなさい!」
ひったくるようにかのんのスマホを奪い取ると、リコは改めてLIMEの表示を読んだ。
―――――――――――――─────
┌─────────────┐
─┤ いきなりごめんね、真剣に │
│ 聞いて欲しいんだけど… │
└─────────────┘
┌───────────┐
│えっ…… │
│かのんちゃん……? ├─
└───────────┘
┌────────────┐
─┤ わたし、あなたのことが │
│ 大好きです! │
└────────────┘
――――――――――――――――――――
「これどう見てもかのんのことフワッとしか覚えてない子よね」
「そうなのぉ~……去年学級委員で一緒になった、1組の
「なんで大事な告白をミスって誤爆するわけ……?」
しごくもっともなリコの質問に、かのんは真剣に腕を組んで考えてみた。
考えてみた――が、考えたからといって、答えが出るわけでもないのが世の常である。
「わっかんなーい♡」
ついでにピンク髪で美少女は大抵主役級キャラで淫○でちょっぴりおバカなのも世の常である(当社比)。
「はぁ……もう既読になってたら取り返しがつかないじゃない……どうすんのよ」
「えーーーんだからリコちゃんの力を借りたくてぇ~!」
「そうやってなんでもかんでも甘えない!」
「あいダッ!」
どしゅっ、と振り下ろしたリコの見事な手刀が、かのんの頭部に突き刺さる。
「とりあえず、紬さんの様子を見に行きましょう。もしかしたらまだ間に合うかもしれないわ」
「う、うんっ、そうだねリコちゃん!」
「――『ら”いむ”っ!!』」
二人の行動指針が決定した、そのとき。
かのんのスマホが、LIMEの新着通知を告げた。
やけに甲高い通知ボイス。なぜか二人はびくりと肩をふるわせた。
――――――――――――――――――――
┌───────────┐
│かのんちゃん │
│今どこ? ├─
└───────────┘
――――――――――――――――――――
「あ……ありゃりゃ~? なんか、ずいぶん早くない??」
「……もしかしたら、紬さんは初めての告白だったのかもしれないわ。刺激が強ければ強いほど効くもの」
「ねえ、それってヤバいんじゃ……!?」
「そうよ、ヤバいわよ! だから誤爆には注意ってあれほどマザーから注意受けてたのにこの子は……!!」
「わーーーん今は過ぎたことよりこれからのことだよぉーっ! どうしようこれー!」
――――――――――――――――――――
┌───────────┐
│かのんちゃん │
│会いたい ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│なんで既読スルーするの├─
└───────────┘
┌───────────┐
│ひどいよ │
│ずっと待ってたのに ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│かのんちゃん │
│今すぐ会いたい ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│会いたい ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│会いたい ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│うそつき ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│ ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│ ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│ ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│ ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│ ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│ ├─
└───────────┘
┌───────────┐
│ 死ね ├─
└───────────┘
――――――――――――――――――――
「か、のん……ちゃん……」
ガサリ、と。
近くのバラの茂みが揺れる。そこから、バラのトゲに手足を貫かれても表情ひとつ動かさない、茶髪の地味な三つ編み少女がゆっくりと歩み寄る。
「紬ちゃん!」
「……見つかるの早かったわね」
「あっ、スマホのGPS切るの忘れてた☆」
「かのんんんんん!!!」
「リコちゃん、来るよ!」
紬は片腕を上げた。すると、制服の袖口から真っ赤なイバラが鞭のようにしなって飛び出してくる。
イバラはまっすぐにかのんめがけてうねり、襲いかかってきた!
「おわっとぉ~」
かのんはしかし、猫のように身軽な動きで軽やかに鞭を避けていく。しかし、鞭を避けるたびに紬の顔はどす黒く染まり、人から離れていった。
「こりゃ時間かけてらんないね、リコちゃん!」
「仕方ないわね」
大きく二人は後方へ飛びすさり、二人はスマホを手にした。かのんは空へ、リコは地面へそれぞれスマホを突き出す。
「――略式召喚! 『ティシポネー』!!」
「お
二人のスマホが光る。かのんはピンクに。リコは青く。
手から放たれる光の渦に身を浸せば、彼女たちの制服がみるみるうちに融け、変化していった。
まるでドレスのような装い。右手にはそれぞれ、巨大な宝石のついたステッキを手に、髪も長く伸びた二人が、かつて紬であったモノと対峙した。
リコの魔法具が青く光る。魔法具の先端に水が集まり、巨大な水球ができあがる。それを紬に向かって振り投げた!
がぽんっ、と水に飲まれる紬。かのんはその水の中に飛び込んでいく。
「――ごめんね、紬ちゃん」
かのんは紬を引き寄せ――
「んムぅっ……!!」
問答無用に、唇を奪った。
ぱしゃん、と水球が割れ、辺りに水をまき散らす。すると、鞭のイバラも消え去って、あとにはきょとんとした顔の紬が座り込んでいた。
「……あれ? かのんちゃん……? それに、リコさん……? どうしたの、その格好……」
「わたしたちは
「は!?」
かのんの突然すぎる告白に、紬は目を丸くした。
「私たちの放つ文字は呪い。告白で男を魅了し、恋の呪いで精気をいただく」
「でも――恋の呪いにかかった女の子は……」
紬は顔を引きつらせた。
嫌な予感が駆け上がる。
かのんは、にっこりと笑った。
「――ようこそ、
誤爆☆少女!かのん~誤爆で百合告白しちゃって困ったことになったけど美少女なので受け入れてください!~ 宮嶋ひな @miyajimaHINA
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