スマホは何でもできる!?

夜野 舞斗

スマホがあるなら

 隣の席の少女はだいたいスマートフォンをやっている。授業中もこっそりやっていることがあるのだが。

 彼女がバレると傍観していた俺まで教師に叱られないか、ひやひやしていたものだ。

 そんな彼女は何をするにもスマートフォンを愛用しているのではないか。放課後になっても教室に残っている彼女の隣で考えていた。


 例えば、料理を作る時。

 これならば普通に分かる。彼女はレシピを探るためにスマートフォンのインタネットを使うか、動画サイトで作り方を見ながら、鍋の中身でもかき回しているのだろう。間違えて、スマートフォンを落としてお湯の中にドボンと入れることはないだろうな。


「ううん、危険だ……料理に……」

「ねえ、君、何の想像してるの?」


 隣から声が聞こえたと思い、彼女の方を見る。しかし、彼女はスマートフォンの画面へと釘付けになっていて。口を開いていたとは思えない。

 きっと空耳だと思って、想像を続けることにした。


 例えば、大勢の不良を相手に喧嘩をする時。

 彼女は迫りくる不良を相手にネットで培った様々な奥義を駆使するはずだ。いや、それだけではない。

 まずはライトで相手の眼に攻撃して、相手の視界を奪ってから。そこからが本気だ。彼女はスマートフォンの硬さを利用し、遠投武器として使用。投げては拾い、相手の腹に当てては回収する。

 彼女のスマートフォンにちょびっとヒビが入っているのもそのせいではないか……?


「そんな理由があったとは」

「いや、ただ手が滑って落としただけだから」


 また彼女の声。俺はまたも彼女の方を見やった。ただ、彼女は首を動かした形跡もないようで。またも変な声が聞こえてしまったか。

 気にせず、次に行こう。次に……!


 買い物をする時も彼女はネットショッピングで。ゲームも携帯機器ではなく、アプリ版が出るまで待ってから遊ぶのだろう。

 恐ろしきスマートフォン文化。

 近くにものが売ってなくて、わざわざ遠くの街まで出掛けた……そんな手間すら、今ではゼロにしてしまうとは。

 万能であり、人を依存させてしまう兵器でもあろう。彼女を見てればよく分かる。


 きっと、そういう彼女は無人島に持っていくのもスマートフォン。電波が届かない中、ただただ電機の無駄遣いをしながら「あああ……スマートフォン、使えないじゃないの!?」と叫ぶのだろう。

 愚かな事よ。

 そして、きっと最後には食料として、スマートフォンを見始めるに違いない。

 精密機械だし、小さい部品なら飲み込めるかと分解して齧り始めるはずだ。ああ……見えているぞ。


「何てことをするんだ……」

「さっきから何か酷い想像が口に出てるんだけど、何!? えっ、ワタシに何か文句でもあんの!?」

「えっ、知影さん……聞いてたの!?」

「聞いてるわよ!? さっきから言いたい放題! ワタシ、そこまでスマートフォンに頼ってないから! 確かにSNSとか、そう言うのは活用してるけど!」


 横を見て、彼女が話していたことに気が付いた。彼女はスマートフォンを見ながら眉間にしわを寄せて、俺に話し掛けていたのだ。

 何という……。


「じゃあ、スマホがなくても平気なんだよね」

「何言ってるの。これが無くなったら、ワタシはどうやって生きてけばいいのよ!?」

「やっぱ、無人島に持ってくの?」

「ええ。SNS位はあるでしょ!」


 SNSもソーシャルネットワークサービスと言って、電波が届かないところでは使えないのだが。

 それを言っても良いのかどうか。彼女を怒らせないか。俺には分からなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スマホは何でもできる!? 夜野 舞斗 @okoshino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ