いつもながら精緻を極めた文章にはうならされるばかりです。
進路希望の用紙に何も書き込むことが出来ず、悩んでいる高校二年生。
それをテーマにして七千字以上書ける作家がどれほどいるでしょうか。
悩める高校生の持つ五感全てを駆使して、とてもリアルな「大人になろうとしている子ども」を表現しています。あどけなさや我がまま、甘えん坊な所も残っている一方でそのままじゃいけないという自覚もちゃんとあるのです。
家族と真剣に話し合うことで一つ屋根の下で暮らした相手の素顔に初めて気づかされる描写も実にリアル。
結論は先生ならずとも「それでいいのか?」と確かめたくなるものですが、高校生ですからね。ドラマのようにはいきません。道は動きながら探すものなのでしょう。
たった今、進路に悩んでいる人も。悩んだあの頃を思い出したい貴方も。
リアルな青春に触れてみたい貴方へ、おススメです。