第3話 五等分のマスター・オブ・ベイション 〜後編〜
突然ですがここは近所の山です。
昨日、僕は鈴木先輩に頼まれて五つ目のモーションを持つOBの元へやってきた。そのOBは卒業と同時に山へ籠ったそうだ。
OBの名は
山へ向かったのは僕を含めて三人、あと二人は親友の『下レバー』のTシャツを着た下レバーとクラスメイトの渡辺君だ。
「地図によるとこの辺りだね」
「その爆天豪先輩てのはどんな容姿してんだ?」
「つかなんで俺まで来なくちゃならないんだ」
「でも渡辺君て付き合いいいよね」
僕は下レバーに爆天豪の写真を見せた。写真に映る爆天豪先輩は非常にガタイが良く、確かに強そうだった。
だが、同時に利発的な印象を与え、頭も良さそうだ。
「名前からもっと鬼みたいに厳ついのを想像してたけど、意外と普通なんだな」
「お前失礼だぞ」
「もしかしてあれかな」
見回すと岩場に掘っ建て小屋があるのに気付いた。雨風さえしのげればいいと割り切っているのだろう、茣蓙が敷かれてるだけで居住性はあまりよろしくない。
小屋の前には焚き火の跡があった。
「ここで間違いないね」
「だな、待ってれば来るんじゃね?」
「いやもう来たみたいだぞ」
渡辺君の言う通り、薄暗い木々の間から何かが迫ってくるのが感じられた。
「みんな、ここは第一印象を大事にしないとだよ」
「苦手だから任せる」
「俺は関わりたくねぇ」
「任せたまえ、僕の駅前留学で鍛えた交渉術を見せてあげよう」
「「おお!」」
僕は気配のする方向へ歩を進め、爆天豪先輩の影が見えたところで恭しくお辞儀をしながら声を上げる。
「お初にお目にかかります! 僕はバッテン高校の新入生の村上康平です! この度は鈴木先輩の……」
「キエエエエエエエエエエエエ」
僕の華麗な交渉術によるファーストコンタクトは謎の奇声によって阻まれた。悪寒がはしった僕はその場をバックステップで退避した、瞬間僕の立っていた所に爆天豪先輩がクレーターを作っていた。
「貴方が爆天豪先輩?」
「ウキィィィ!!」
「「「野生に帰っていらっしゃる!!!」」」
なんてことだ、爆天豪先輩は山篭りの末に人間であることを捨ててしまったのだ。その証拠に爆天豪先輩は衣服を着用しておらず生まれたばかりの野生を晒していた。
「爆天豪先輩の野生がワイルドでいらっしゃる」
「村上おめぇ何言ってんだ」
「ここは俺達も野生を晒すべきでは」
「お前だけやってろ」
「とりゃ!」
威嚇を続ける爆天豪先輩に対抗して、下レバーが渡辺君のズボンとパンツをずり下ろして渡辺君の野生をワイルドさせた。
意外と大きい。
「テメェ!! 何してくれてんだくぉらああああ!!!!」
「渡辺、お前結構でかいな、渡辺サイズぱねぇ」
「やかましいわ!!!」
すぐさまズボンを履いた渡辺君だったが、時すでに遅し、渡辺君の渡辺サイズは爆天豪先輩に見られてしまっていた。
そして爆天豪先輩が膝まづいた。
「まさか、渡辺サイズが爆天豪先輩の野生に打ち勝ったのか」
「渡辺サイズやべえええ!」
「お前ら全員ぶちのめすからそこに並びやがれ!!」
――――――――――――――――――――
ロボバトル大会当日、鈴木先輩率いるロボ研チームは順調に勝ち進み、いよいよ件の最強チームとの対戦となった。
「いよいよですね鈴木先輩」
「間に合って良かったよ、試運転できてないのが気になるけど」
爆天豪先輩からモーションを回収するのは困難を極めたが、何とか間に合った。ただ戻れたのは大会当日であり、更に言えば鈴木先輩に渡せたのはつい今さっきの事だ。
つまり例のチームと戦う直前という事で、当然吟味する時間はなくすぐさま組み込まれた。
「こいつは、賭けだ。出来ることなら使わずに済ませたいな」
「とんでもない威力なんですよね」
「危険すぎて封印されたぐらいだからな」
僕達の心配をよそに、試合が始まる。
お互いのロボが向き合って、フラッグがおりた。
「あの機体にくっついてる丸いやつはなんですか?」
「コアと言ってね、全部で十個つけるんだけど、制限時間内に相手のコアをより多く破壊した方が勝ちなんだ」
「へぇ」
試合開始からしばらく経って、鈴木先輩のロボは健闘しており相手チームのコアを三つ破壊したが。やはり最強チームの名は伊達ではなく、鈴木先輩のロボのコアは残り二つとなっていた。
「く、やはりアレを使うしかない」
「いよいよですか」
「あぁ! 行くぞ!」
鈴木先輩がついに禁断のモーションプログラムを発動させた。指示を受けたロボは腰に差してあった棒を引き抜いた。
「そうか、棒術で戦うのか。鈴木先輩のロボは人型だから出来る技だ」
「ああ、一から三のメモリーにはモーションに必要な装備と縮尺が記録されていた。そこから推察するに棒術が正解だと思う」
相手チームも鈴木先輩のロボがとった突然の行動に警戒して距離をとった。その間にも鈴木先輩のロボは棒を青眼に構えて正面をキッと見据える。
そしてそのまま棒を、股間に刺した。
「「ん?」」
ロボは股間に刺した棒を上に屹立させると、その棒を右手で掴んで上下にスクロールさせる。ゆっくり、ゆっくりと。
シーコ、シーコ、シーコ。
「まさかこれ」
会場にいた誰もが状況を理解して凍りついた、沈黙がこの場の異様さを表している。
ロボはスクロールさせる手を止めず、ひたすら棒をシゴいている。
シーコ、シーコ、シーコ、シコシコシコシコ……
ロボの動きはどんどん早くなっていき。
シコシコシコシコ……ピィーーーー。
謎の警戒音を発して動きが止まった。棒の先端は何故か着いていた蛍光ランプが白濁色に光っており、それは出し切った後によく見る白濁液を彷彿とさせた。
全てを出し切った当のロボは、野生をワイルドに解放したからか上を向いて恍惚としていた。
賢者モードである。
爆撃! バッテン高校のバカ共! 芳川見浪 @minamikazetokitakaze
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