第10話寝起きには心臓が悪くなる起こされ方

休日である日曜日に、惰眠を貪っていると突然、太もも辺りに柔らかい感触と共に動きづらさを感じた。

起きたくないので、低い唸り声をあげながら身体を捩るがびくともしない。

そうこうしていると耳もとで聞き覚えのある甘い囁きの挨拶が聞こえた。

「おはようぅ~せぇ~んぱぁいぃ~ねぼすけさんですねぇ~」

「ぅぅぅ......っはぁっ!うっ、わぁぁぁー!?何でいるの?花見さんがここにっっ!」

オフショルダーブラウスに短いデニムパンツ姿の花見が僕に馬乗りになっていた。

「お母さんが快く入れてくれたの。どこかに出掛けません?暇じゃないですかぁ~」

「......考えて欲しい。読みかけの本があるから今日は......」

「今、何か愚痴りました?不機嫌な顔しちゃって。そんなに私を邪魔扱いして、胸が痛みませんか?先輩は」

「花見さんにじゃなくて......邪魔扱いなんて、してないけど......決めてあるの?行き先は」

馬乗りになられたままで顔の前で両手を左右に振り、否定してから行き先を訊ねた。

「行く気になってくれたんですか?ありがとうございますっっ、先輩っ!デート先はですね──」

行き先を口にしようとした彼女を遮り、叫んだ。

「デートなんてしないよっっ!デートじゃないからね、付き合うのはっ!出かけるのに付き合うってだけだからねっ!」

「むぅ~っ!一緒じゃないですか?出かけるのとデートは」

頬を目一杯膨らませながらそんなことを言ってくる彼女。

「違うってば。それに付き合ったら機嫌を直してくれるの?花見さん」

「はいっ!どうなんですか?先輩っ!」

「はいはい。行きます、付き合いますよ、花見さんに」

鼻と鼻が触れ合いそうな距離まで顔を近付けてきた花見に折れて了承したのだった。

「あのさ、そろそろおりてくれないかな?ここから」

「今、おります。これじゃあ、ムラムラしてきませんでしたか?......次は──」

ベッドからおりながら、そんなきわどい発言をする彼女。

「そう言うのは言わないでよ、花見さん......これでも男なんだよ、僕は」

「つい、いつもの調子で。ごめんなさい」


花見と階段をおりてリビングに向かった。

彼女は母親と談笑しているのをダイニングテーブルに並んだ朝食を摂りながら眺める僕。


彼女らの話題は僕に関連したもので、最悪としか言えない。


彼女がいう行き先は──。

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からかってくる後輩の表情が可愛くて憎めない 闇野ゆかい @kouyann

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