第9話ささやかな幸せ

「八恵木が迷惑掛けてすみませんでした。あの娘、私に執着してて......私のことになると周りが見えなくなっちゃうみたいで。私から言いきかせとくので、どうか許してもらえないですか......」

「花見さんが謝ることじゃ......許す許さないってことじゃなくて、何て言うのかな?ふりょ、八恵木さんだっけ?彼女の性格がどうのこうのってことじゃなくて......ああいうふうに想われるって中々ないことだし、素敵だなって思わせてくれた。羨ましい、ああいう友達がいるっていうのが。大事にしないと......僕に構うより、彼女と──」

「先輩が言ってることは分かるんですけど、先輩に手をあげたっていうのは納得しないし、許すことは出来ないですっ!先輩がなんと言おうとさんから離れることなんてないですよぅ~私はっ!」

釈然としないようで、不良さんこと──八恵木がしでかしたことを許せないでいるとはっきり、断言した直後に語気をゆるめながら将来の旦那とさらっと呼んできた花見だった。


「ああぁぁ~もうっ!台無しだよ、花見さん......」


ため息まじりにそんな言葉が出てしまう僕。


えへへぇ~と表情をゆるめながら、僕を見つめてくる彼女。


下校中のささやかな幸せを噛みしめる僕。


──彼女、花見も同じようなことを思っていたら、とふと頭を過ったのは......彼女には秘密にしておこう。

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