第122話 ミルラ

 夕方の辺境伯家の食堂、テーブルに並んでいる皿に並んでいる食事が自分たちをもてなす気持ちの大きさが表されている。

 

 流石に国王をもてなそうとしているようには見えないが、結構重く見られているみたいだ。 

「どうだ?私の娘では不服か?」

 俺はエリザベータさんに視線をそそいだ。

 俺は軽く左右に首を振ると辺境伯の前言を否定した。

「不服はありませんが……」 

 寧ろ自分の方に足りない部分があるとしか思えないのだが……

「寧ろ私が冒険者になったのはわずか40日前でしかありません。生活基盤……家ですらまだ持っていません。」

「家か?」

「はい。拠点となる家と田畑を手に入れたいと思っています」

 田畑をするなら安定した水の流れる小川が欲しい。

 他にも広い土地と家を建てる材料と能力、日数。

 できれば温泉でもあれば万々歳なんだが……

 この領にも温泉があるようだ。

 温泉と言っても間欠泉のようだ。

 間欠泉と言えば100度近い温度での噴出になるので、噴出した後の湯の処置を

しないといけないことは予想できた。


「街の中の空き家は買いたい家が見つかるかどうかが……」

 と言う辺境伯に……

「街の中に住むことは無いと思うのですが……」

 と言う決定的な一言をぶつける。

「田畑なら空いている土地に自由に作れる」

 この世界では受益者負担が基本だ。

 街中に住んで騎士団の保護を希望すれば、それなりに人頭税を払う。

 人頭税が高いか?と言えば得られるメリットを考えれば充分お値打ちだと思う。

 だが実際自分にはスケルトン以上に便利な防衛方法は知らない。


 とにかく自分の希望を叶えるためには土地を先に決めるのが一番だと思われる。

明日は領内の街の外、北東のローレリアの国境近くを見に行こうと思う。


 俺は辺境伯に予定を告げる。

「私は自分で家を建てて田畑で作目をつくり、冒険者をしながらのんびりした生活をしていこうと思っています。明日はローレリアの近くの土地を見に行こうと思います」

 辺境伯はエリザベータさんの方を見ると……

「エリザベータ、お前はこの人と一緒になることでいいのか」

「はい。私はこの人と結婚しようと思います」

 辺境伯は小さく頷くと、

「エリザベータよ。今日でエリザベータ・グリンウェルの名前を解く。これからはミルラと名乗るがいい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染に捨てられた俺は異世界で死霊術師(ネクロマンサー)になってハーレムを作る 蒼空 隆志 @marglyef

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ