第30話 青い小鳥

「リラ!大好きだ!愛している!」


 シエン、聞いていたか?番云々は私にはわからんと言っているのだぞ。


「そうですか。シエンさん。言っておきますが、彼女は世界から縛られていません。ですので自由です。貴方以外の人を好きになることも自由です。」


「あ゛?」


 シエン!聖女様を睨むな!聖女様の言うことを聞かなかった事を忘れてしまったのか?


「本当のことですよ。目の前にツガイの男性がいても、何人も見た目のいい男性に声を掛けていた女性を知っていますから、だから、リラさんに捨てられないようにしてくださいね。」


 何人も・・・私はそこまでしないと思うぞ。


「それから、リラさん。これに魔力を込めてもらえますか?」


 そう言って聖女様はどこからか人の頭部ほどの大きさの青い魔石を取り出した。初めて見たよ、こんな大きな魔石。

 これに魔力を込めろって?魔石に手に触れて魔力を込める。

 ・・・どれだけ込めればいいんだ?残っている私の魔力の殆どを込めてしまっているぞ。


「まぁ。これぐらいで良いでしょう。」


 私が手を離すと今度は聖女様が魔石に手を触れ魔力を込めだした。すごい勢いで魔力を込めている。私の倍?いや5倍は魔力を入れている。

 私、魔力や魔術に関してはチートだと思っていたが、聖女様からしたら、私の魔力など雀の涙なのだろう。そんな事を考えていると、魔石から目が開けられないほどの強力な光が放たれ、光が収まり目を開けると目の前から魔石が消えていた。


「新しい守りまじないです。これなら、無くならないし、壊れませんよ。」


 そう言う聖女様の視線をたどると、シエンの頭の上に青い色をした雀が乗っていた。あれが護符?生きているように見えるけど?


 最後に聖女様は世界各地に旅をするなら、冒険者ギルドに入ることをお勧めしますと言われたので、その足で坂を下り冒険者ギルドで登録することにした。

 しかし、何かを忘れているような?


 冒険者ギルドの入り口で手を腰に当てて立っているオリビアさんがいた。なんだ?何かあったのか?と思っていたら、私と目があった瞬間、私の目の前に来て


「配達はどうしたのですか?」


 と言われた。配達?・・・あ!東地区の技術者の家に夕方までに届けてくれって言われていたのだった!


 空をみれば、完全に日が暮れ、星が瞬いていた。予定の時間をとっくに過ぎている。


「オリビアさん、実は色々あって・・・」


「言い訳は無用です。先程、依頼者が直接来られ、まだかとクレームを言われました。」


 クレーム!ヤバい。始末書?苦情処理?あ、会社員の癖が出てしまった。


「あのそれで魔石の方は・・・」


「別の物で対応しました。リラさん。中に入りなさい。」


 ヒー!何を言われるんだ?オリビアさんの赤い目が揺らめいていて恐いんだけど。

 中に入ると、サブマスの机のところに連れて行かれた。


「リラ。お前は幼児以下か。配達すらまともにできないのか。」


 そんなこと言わないで欲しい。あの落ちる直前、目的の家は見えていたんだ。すぐそこだったんだ。


「それが、王都の道が陥没して、地下に落とされたのです。」


「寝言は寝て言え。」


 そうだよな。私も人から聞いたらそんな反応すると思う。舗装された王都の道が陥没するなんて、それも王都に地下の道があるなんて、思いもよらないよな。


「もしかして、シエン様もご一緒されていました?」


 サブマスの横で首を傾げながら、オリビアさんが聞いてきた。


「すまん。俺のせいだ。」


「そうですか。それなら仕方がありませんね。」


 そこは納得するのか?


「これからはそれも抑えられると思う。新しい護符をもらった。」


 シエンはフードの隙間から頭の上に乗ったままの青い雀を見せた。


「もしかして、それは守護鳥様ですか?」


 オリビアさんは驚いたように前のめりで青い雀を見ている。


「ああ、国にいる守護獣様と同じだと思う。」


「良うございました。」


 オリビアさんは涙目で言っているが、誰か私に説明してくれないか?青い雀がなんだって?

 まぁ、後で聞けばいいか。今日は登録だけしておきたいんだけど、サブマスの目がお説教はまだあるって感じなんだよな。


 あと、3ヶ月で卒業だから、その間にやれることをやっておかなければならないな。潜れるだけダンジョンに潜って、必要な物をレシピ化して、忙しくなりそうだ。


 しかし、シエンと旅ってやっていけるのか?




とある地下の一室

 薄暗い部屋の一室に四角いモニターのような石版に青い髪の少女とフードを被った者。その向い側に人族の男と鬼族の女が映し出されていた。

 映像が映し出されている石版の前には美人には違いなが、目の下の隈が酷く顔色が悪い男が石版の光景を眺めていた。


「覗き見してるー。そんなことしているなら、私を手伝ってくれても良かったと思うよ。そろそろあの呪いの鎧を処分してくれてもいいんじゃない?」


 突然、男しかいなかった部屋に一人の女が湧き出てきた。


「覗き見は君の専売特許ではないのかね?それから、これは今後、煩わしいことをしなくてもいいという確認をしているだけだ。あと鎧は実験中だ。」


「ははー!大魔導師様にはお手数をおかけしました。出来れば鎧の数を減らして欲しいのが本音でございますぅー。」


 ショートヘアの黒髪の女はわざとらしく、男に頭を下げる。


「しかし、君も粋な事をするものだね。あの子がわざわざ番の龍に見つからないよう、小鳥に隠蔽の術を掛けていたのに、それを解除したのだろ?」


「バレてた?だって、聖女様、聖女様っていつまで頼るつもりかって思っていたし。でも、収まるところに収まったって感じだよね?」


「これで、光の神の愁いも無くなっただろう。しかし、白き神も酷いものだな。闇喰いの龍と人の心を清める小鳥で世界中を旅をさせようだなんてな。まぁ、あの子はそんな神の願いよりも、小鳥の少女の心のほうが大事だったみたいだがな。」



____________



 ここまで読んでいただきましてありがとうございました。


 評価をしていただきました読者様ありがとうございます。

 毎回、書きたいものを書いているだけなのですみません。



 ご意見、ご感想等がありましたらよろしくお願いします。



 本当は炎国に行ったり、旅に出ようかと思っていたのですが、あまり読まれていないので、この辺が妥当でしょうね。

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私は聖女じゃありませんから、ただのパン屋の娘です 白雲八鈴 @hakumo-hatirin

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