第29話 失敗作?
「だから、言いましたよね。貴方の番に会っても番だと伝えてはならないと。言ってしまったことは取り返しがつきませんからね。リラさんもこう言っていることですから、諦めてはいかがですか?シエンさん。」
聖女様は以前からシエンに言っていたのだろう。私に番だと伝えるとシエンの気持ちに疑問を呈することが、わかっていたのだろう。ん?それだと、私とシエンが番だと言うことを知っていた?
流石聖女様となるとそんなことまで分かってしまうのか。
「それは、俺に死ねと言っているのか?」
え?流石にそれは大袈裟だろ?
「それを判断するのは私ではなく炎王です。」
せ、聖女様!何を言っているのですか?なんで、番云々で生死が関わってくるんだ?
「リラ。リラも俺に死ねと言うのか?」
「そこまでは思ってない。そもそもなんで死ぬことが確定されているんだ?」
「リラさんは学園でグローリア国とラース公国の悪災について習いましたか?」
聖女様からそのような事を聞かれた。悪災。確かに歴史の授業で習ったな。大陸の6分の1が焦土化して使い物にならなくなったってやつだろ?
「習いました。」
「原因についてはどのように?」
原因?そんなこと習ったか?魔王のせいだった?違うな。時期的には魔王討伐後に起こったことだったよな。
「習った記憶がありません。それがどうしましたか?」
私の答えに聖女様は舌打ちをして『あのキングコング、後でシメてやる。』とか聞こえたが、気の所為だろう。
「はぁ。その悪災は勇者の番狂いが引き起こしたことなのですよ。」
勇者!勇者が大陸の6分の1を焦土化した!そもそも番狂いって初めて聞いた言葉だな。
「あの番狂いってなんですか?初めて聞いた言葉なのですが。」
「そうですね。私には分からない感覚ですが、相手をツガイと認識すればツガイという存在を常に感じるそうです。まぁ、種族によって範囲は異なるようですが。」
うぇ?なにそれ。もしかして、ストーカー並に私の居場所がわかったのも、それ?
「そのツガイの存在を失った時、失った側には大体3通りの行動がみられます。一つ目はツガイの死を受け入れ、何事もなく余生を過ごす者。
二つ目はツガイの死を受け入れられず狂い、自我を失い破壊行動に走る者です。その破壊行動に走れば一族の長に殺される運命しかありません。
40年前の勇者の番狂いは勇者が召喚者であったため一族の枠組みが存在せず、大陸の6分の1を破壊するまでに至りました。」
おお、一族の長に殺される。だから、死か。ん?3つ目はなんだ?
「三つ目はなんですか?」
「三つ目ですか。」
そう言って聖女様はシエンの方を見る。どうしたのだろう。その続きをシエンが話しだした。
「三つ目は世界の闇を取り込んで魔人化する。そうなれば、この大陸から魔の大陸へ排除されることが決められている。」
魔人化。これも初めて聞いた言葉だな。学園って本当に意味ないな。番云々のことってこの世界じゃ知って置かなければならないことなんじゃないのか?
それとも一族って奴から聞かされるのか?そもそも私の一族ってなんだ?
ん?・・・あれ?さっき変なことを言っていたな。闇を取り込んで魔人化?シエンは世界から闇を喰らう者の称号を与えられていなかったか?
「シエンは魔人化する?」
「ああ、闇を浄化しなければ、
それってヤバくない?世界って何を考えているんだ?魔人化ってのはよくわからないが、排除されるってことは危険だってことだからだろ?
「ごめん。意味がわからないんだけど、シエンの称号は魔人化するためのもの?」
「失敗作らしいですよ。」
聖女様がそう言われた。失敗作?まるで物のような言い方だ。
「神の威など知りたくもないですが、安易な考えだったのでしょうね。まぁ、光の神の慈悲により、リラさんをツガイとされたようですが、これではねぇ?私は言うべきことは言わせてもらいましたよ。この選択肢をしたのはシエンさんです。後は、炎王に殺されるなり、魔人化するなり好きなようにしてください。」
え?ここで放り出すのですか?聖女様それはちょっと可哀想ではありませんか。
「私がシエンの浄化をすればいいってことですよね。」
「リラ!」
シエンが力を込めて抱きしめてきた。内臓が出そうだから、放してほしい。
「リラさんがシエンさんをツガイだと受け入れるのなら、それで構わないと思いますが?」
それはちょっと、受け入れられないかな?だってさ、番って言われても、私そんなことわからないし、困るな。でも、ここで、シエンを放り出すのは何か違うような気がする。
「番とかはわからないですが、私が世界から与えられた役目というものするとなれば、シエンが付いて来ると聖女様はおっしゃいましたよね。なら、旅は道連れということでいいのではないのでしょうか?」
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