発光食品
@1000thSummer
第1話
「あら、今日は烏賊ですか。きれいですね。」
ご近所の奥さんが私の荷物を見て立ち止まった。
「
私の右手のレジ袋には、氷と一緒に透明な生き物が入っている。
「そうそう、いかそうめん。でも、蛍烏賊ってこんなに大きかったかしら。」
「これは特別大きいんです。夏に獲れるんですよ。」
今夜は七夕。夕涼みの後は星空の下で夕食。机の真ん中でいかそうめんが光っている。
ガラスの器は透かし彫りの波を青く浮き上がらせている。
「これおいしいね。どうやってつくるの。」と娘が尋ねてきた。
「これは蛍烏賊のいかそうめん。烏賊の刺身だよ。」
「光ってるから蛍って言うんだね。あ、」
ぽちゃんと、一切れ吸い物の中に落ちた。箸でわかめと一緒に引き上げる。
ふと、笹竿を見上げる。
天の川と笹なんて、釣り人みたいなこと、いったい誰が始めたんだろう。
わが家の笹は願い事が大漁。書き出さなければ自分でも知らないくらい、いっぱい。青々と茂る枝葉が風に鳴いている。赤や黄色をひらめかせながら若々しい身体をしならせている。
気付けばそうめんはあと一本。まるで光っている命を食べているよう。
ああ、おいしかった。ごちそうさま。
発光食品 @1000thSummer
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