　記紀周辺の関連文献資料として最後に朝鮮・中国の文献資料をご紹介させて頂き、資料の紹介に関しては締めくくらせて頂きます。

◇朝鮮史料（『三国史記』『三国遺事』他）

　三品彰英・金富軾・井上英雄訳注の『三国史記』（平凡社）、『三国遺事考証』（塙書房）の他、東洋文庫（平凡社）に翻訳版の『三国史記』などがありますが、デジタルコレクションで閲覧できるものには以下があります。

◆原文

○『朝鮮史』

　第1編第1巻では目次に同年代の古代朝鮮の三国の王を並べ、誰の治世であるのか確認しやすいことと『三国史記』『三国遺事』だけでなく『高句麗好太王碑』や『釈迦文像光背銘拓本』などの関連資料も纏まっており便利です。第1編第3巻では中国史料による朝鮮史料が纏まっています。

・『朝鮮史第1編第1巻』朝鮮史編修会編　朝鮮総督府　昭和7

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/1147710

・『朝鮮史第一編第三巻第1編〔新羅統一以前〕第3巻支那史料』朝鮮史編修会編

朝鮮総督府　昭和8

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/3439858

◆研究・三国史記批判

○『古事記及び日本書紀の新研究』所収「三国史記の新羅本紀について」津田左右吉　岩波文庫　大正8

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/1918863/1/289

　三国史記の新羅本紀における建国神話をはじめとした本書の記事批判、成立背景やシナ的政治思想の影響、国王の世系年紀、倭に関する記事など。上代の部における倭に関する記事が史料としての価値が無いものであるとし、その戦争の記事は四世紀後半以後に於いて、絶えず我が国に抵抗していたという事実に基づいて構成されたものらしいと推察しました。

◇中国史料

　中国史料に関しましては、過去の稿（本稿末「関連内容」参照）でご紹介させて頂いた書で事足りるかと思いますが、研究書に関しては多く存在します。個人的には佐原真の『魏志倭人伝の考古学』（岩波書店）がお勧めですが、昭和初期が初版にも関わらずタイトルを改め、平成に出版された橋本増吉の研究が著名かと思われます。

◆原文

○『漢・韓史籍に顕はれたる日韓古代史資料』太田亮磯部甲陽堂 1942

https://dl.ndl.go.jp/pid/1917919

　タイトル通り、日韓古代史に関わる漢・韓史籍を取り上げています。各書の冒頭に簡単な説明文がありますが、注の類が無いので過去にご紹介させて頂いた市販の書籍類を購入した方が良いかも知れません。

◆研究

○『邪馬臺国論考』（１～３巻）橋本増吉

　邪馬台国学の先覚者橋本増吉による『魏志倭人伝』研究の決定版。邪馬台国をとりまく古代の国際情勢に周到な目配りをし、文献をはじめ遺跡・遺物の総合的研究から邪馬台国九州筑後国山門郡説の結論にいたる。壮大な橋本史学の集大成。（ebookの詳細情報より引用）

　現在ebookの電子書籍を購入出来ますが、実はデジタルコレクションで同じ内容の書籍を閲覧出来ます。佐伯有清氏の解説が不用であれば以下で十分かと思います。

・『東洋史上より観たる日本上古史研究第1 (邪馬台国論考)』橋本増吉大岡山書店　1932

https://dl.ndl.go.jp/pid/1920176

◆民俗学

〇『日本民俗学歴史篇』中山太郎大岡山書店　昭和5

https://dl.ndl.go.jp/pid/1466424/1/9

　「魏志倭人伝の民俗学的考察」では魏志倭人伝にある風習を民俗学的な視点で分析なさっています。

◆外交史

〇『日本上代史の一研究 ―日鮮の交渉と日本書紀―』池内宏近藤書店昭和22

https://dl.ndl.go.jp/pid/1041672

　倭の五王の通行に関して詳しいです。

　本稿を以て書籍のご紹介は一旦終了致しますが、当方の知識不足でまだまだ紹介しきれていない論文や著書が多数あります。良い書籍が見つかった場合、あるいは紹介が漏れていた事に気付いた場合は随時追加するかと思います。（実際、初回投稿時よりも何冊か追加しています）その際は極力近況ノートでお知らせするつもりですので、留意していただければと思います。

◆関連内容

・記紀周辺の文献（海外）

https://kakuyomu.jp/works/16816452219091770654/episodes/16816452219145974209