直感なんて無いんじゃない
リュウ
第1話 『直感』なんて無いんじゃない
私、アウラは、最新型AI搭載された人型アンドロイドのティトと地球に向かっていた。
私たちは、地球に戻るにあたり選択に迫られていた。
私は、全神経をそれに集中し、選択する情報を集め、多数ある選択しの中から、二点に絞り込んでいた。
迷っている私にティトが話しかける。
「どっちにするんですか?
私には、そのデータがないので、どちらがいいかのアドバイスは出来ません。」
「データがないと答えられないの?」
私は、選択対象から目を離さずに言った。
無視されたと思ったのか、ティトは少し強い口調で言葉を続けた。
「そうですね。AIの私には、過去から蓄積されたデータは必須です。
そうじゃないと判断や選択は出来ないです。
なぜ、選んだかの理由を説明できませんから。」
出来ないのは当然だと言わんばかりだ。
「私は、できるわ。」
私は、得意になって言ってしまった。
「理由がなくても、選択できる?
……それは、人間特有の直感ってヤツですか?
『カン』は、感じるの方ですか?」
「そうそう、その直感ってヤツ」
「AIは、感じる『カン』ではなく、観る方の直観です。
感じる方の『直感』なんて、この世に存在しないのでないでしょうか?」
ティトは、馬鹿にされていると思っているせいか、言い返してきた。
「ハァ、何言ってんの」
私もティトの言葉にすこしイラッとしてきた。
私の苛立ちに気が付いたティトは、更に語尾を強める。
「感じるのは、人間しかできないと思っていないですか?
感じる事の出来ないAIは、人間より劣っていると思ってないですか?」
<うぁ、最新型AIだから、そんなこと考えるんだ。AIなのに、怒った?>
「あ、今、AIのくせにと思ったでしょう」と、ティト。
「思ってないって、何でそう思うの?」
「あなたの表情、心拍数、血圧、声のトーンなどデータは蓄積されているんです」
<うっ、気持ち悪。ストーカーか?>
「それは、直観……ね。感じるじゃない方の。裏付けるデータがありそうだし……」
「もちろん、あります」自信ありげだ。人間ならきっと鼻の孔が広がってるな。
「感じる方の直感は、人間が誕生してから、生命の危険を避けるため備わった遺伝子レベルの記憶で、危険を避けるスピードの要求に答えるため、無意識に判断し行動を起こさせるものと考えられますが、意識しないだけで、蛇が危険であるという情報を持っているので、感じる方じゃない直観だと思うのです。つまり、感じる方の直感は、存在しないと考えます」
「なるほど……」私は、面倒くさいので聞き流した。ティトは話を続ける。
「蛇を怖がるというのは、良い例ですが……。
感じる方の直感があるとしたら、異性を選択する時だと考えます。
人間同士のパートナーを選ぶ場合は、人間をある程度の未来を予測しているのではと。そうでなければ、『一目ぼれ』を説明できないのです」
「面白いね。人間が未来を予測できるなんて。」
『一目ぼれ』その言葉に、反応してしまった。
確かに、初めて会った人が自分のパートナーにふさわしいかどうやって判断しているのだろう。何を基準に判断しているのだろか?
その人の情報がないのなら、今までパートナーを持ったことがないのなら、判断できない。
ティトの言う通り、将棋の手を読むように、何て先かは分からないけど、その人との未来を見ているのではないか。
ダメ。今は選択するのに専念しなければならなのだから。
「そんなに迷うなら、帰って寝た方が良いのではありませんか?
寝て起きたら、ひらめくってデータもありますよ」
『早くしろ』という遠まわしの催促だ。それも最新型のせい?
答えないでいると、更にティトの声のボリュームが上がった。
「アウラさん、早く選んでくださいよ。お客様が待っていますから」
振り向くと、いつの間にか私たちの後ろには長蛇の列が出来ていた。
「分かったわよ、両方貰うわ!苺ショートとモンブランを頂戴!」
私は、焦って大きな声で言った。
「ありがとうございます。苺ショートとモンブランですね」
笑顔のメイド姿の売り子アンドロイドが答えた。
後ろから、ティトのつぶやきが聞こえた。
「直感?……選んでないじゃん」
直感なんて無いんじゃない リュウ @ryu_labo
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