終末から始まる

氷水とうふ

第1話「出会い、始まる」

 ロケットに乗り、操縦し、宇宙を駆ける少女。

 少女はとある惑星に辿り着く為に単身宇宙へ飛び出した。


「ここまで長かった──やっとここまで来れた……!」

 そう言った少女の目線の先には青色の惑星が見え始めていた。

 目的地である"地球"と呼ばれる惑星だ。

 地球の大気圏に突入しロケットの噴出口を地上に向けジェットを放出して引力を軽減させて減速しながら草原に着陸する。

「……(これが、あの地球?想定と全然違うなあ)」

 少女はロケットを降りながらそう思った。

「(空気がとっても気持ちよくて動物も多いみたいだけど──まだ文明が発達してないのかな)」

 少女は周りを見渡す。

「ん~っと、まずは辺りの探検からかな!」

 見渡し終わって体を伸ばし、少女は探検の準備を始める。

 


「よし! 先住民の方達と仲良くなるぞー!」

 準備が整いロケットを布で覆い隠した少女はリュックを背負い探検に出る。

「(とりあえずは手頃な高さの木の上から地形とかの確認と把握をしなくちゃ)」

 5メートル程の高さの木に登る少女。

「んっ、しょ──おお~辺り一面自然だ~(ちょっと着陸地点ミスったかな、もっと栄えた所に降りれたら良かったんだけど)」

「……! 川だ!(ラッキー!)」「ギリギリミスではなかった!」

 周囲を見渡し、急いで木から降りたせいで尻もちをついた少女。無言で痛がる。

「みーずっ、みーずっ、みーずっ」

 水が少なくなってきてたのもあり、ウキウキしてスキップで川へ向かう少女。



 遠くの方で鹿が川の水を飲んでる中少女は水筒に水を汲む。

「……ん?」

 水を汲み終わる時、少女は白い羽根が川の下流へと流れていくのを見つける。

「──なんか気になる」

 本人も分からない謎の興味に惹かれ追いかける。



 1、2分追いかけて羽根を手に取り見てみるが綺麗な白い羽という事以外には特に何もない普通の白い羽根だった。

「でも綺麗だから帽子にでも付けておこうかな」

「……あっ洞窟だ! 探検しなきゃ!」

 羽根を追いかけてしばらく進んだ少女は川の更に先の方に洞窟があるのを見つける。

 ダッシュで洞窟に向かう。



 洞窟の前まで着き数メートル先が真っ暗な洞窟を覗く少女。

「……なんか怖くなってきたかも」不安になる少女。

「(これからこの星でいろんな知識を得ていろんな体験をして故郷に帰りたいからな~危ない行動は良くないよね私いたいけな少女だし)」

 とか思いつつヘッドライトを照らして躊躇なく進み始める少女。


「(かなり長いしかなり暗い……けどどこか不思議な雰囲気、落ち着く)」

1分2分と歩くと教室4つ分ほどの開けた空間に着いた。

 天井は吹き抜けていて草木や葉で覆われており少しばかり木漏れ日が差していた。

「すごい、神秘的……ん? 誰かいる!」

 草と葉っぱで覆われた石のベットの様な所で仰向けで眠っている人に気が付く。

「(抜き足差し足で)こんにちは~……寝てる?」

 そこで眠っていたのは少女と同い年くらいの顔の整った中性的な人だった。

 しばらく周りをウロウロする少女。

 頬をつんつんしてみる。

 デコピンしてみる。

「全然起きないな……あれ?」

 眠ってる顔に近づいてよく観察する。

「……! 呼吸してない! 生きてないの!?」

 あたふたし始め3秒ほど頭を回転させ、何を考えたのか水筒の水を顔にぶちまけてみる少女。

「どうしよどうしよ」

 水をかけても反応が無くて更にあたふたし始める。

「んーと、んーーーんーーーーーー」「んっ! そうだ!」

「人工呼吸しちゃえ! 恥ずかしいけど命の為だ!」

 口を思い切りつけて空気を吹き込む少女。すけべさを微塵も感じない純粋な人工呼吸である。



 ~2分経過~

「はあ゛~はあ゛~はあ゛~……全っ然ダメだ……もう遅かったのかな」

「(でも唇がちょっと温かかった気がするんだけどな……)」


 眠ってる人に近くに寄る少女。

「えいっ起きろよっ」

 中性的な顔をぺしぺしと叩く。


「……ん……なになに……」

「あーーー!」

 少女は叫んだ。

「え?え?」

 目覚めて起き上がった少年は戸惑う。

「起きたぁーーーーー!」

 少女は飛び跳ねながらベットの周りをグルグル回って喜んだ。

「なになに……どういう状況……?」

「ねえねえ! 名前は??」

 少女は目を輝かせて意気揚々と尋ねた。

「な、名前?」

「うん!」

「んー──多分、ハオン……?」

 ハオンと名乗る子は自信なさげに、そう答えた。

「ハオン? 多分っていうのは?」

「いや……ちょっと頭が回らなくて……君は?」

 尋ねるハオン。

「! 待ってました! なんと! 私は! この惑星とは違う別の惑星からやって来たU-muuという者です!」

「ゆー……むー?別の惑星?」

 頭が追い付いていないハオン。

「突然こんな事言われても簡単に理解するのは難しいよね! ましてや寝起きだし!」

「簡単に言えば別の世界から来た感じ! 凄いでしょ! 実は結構頑張っ(長話をし始める)」

 U-muuの長話は右から左のまま頭を回転させるハオン。


「……ここって、どこ__?」

「(長話ぺちゃくちゃ)……ん?どゆこと?」

「いや、その、実は何でここにいるのかとか今まで何してたのかとか全然分からなくて……」

「えー! 記憶喪失って事かな?」

「うん、そうだと思う」

「どこからどこまで覚えてる?」

「えっと、さっき言った通り名前と……後は多少の言語と常識は分かる、気がするけど……」

 自信がなさそうにハオンは答えた。

「確かに違う惑星で言語が違うはずなのに意思疎通できてるね、あれ?何でだろう」

 疑問符を浮かべるU-muu。

「あとは……」「僕は……人間じゃ……ない?」

「……?」

 ハオンは少し焦燥感を感じ始め、U-muuは疑問符が増えていく。

「そうだ、僕は人間じゃないはず!」

 立ち上がって外へと走り出すハオン。

「ちょっ、どこ行くの!」

「川とか湖とかの水面を探してくる! 自分の姿が確認したい!」

「鏡持ってるけど私!」

「!!」


「せっかちだね、ハオンは」

 申し訳なさそうに鏡を受け取るハオン。


「うーん……いまいちピンとこない……」

 ハオンは鏡に映る自分とにらめっこしている。

「記憶がないんじゃピンと来ようがないよね、でも普通の人間でしょ?ちゃんとっ」

「んー……そうなんだけどなんか引っかかるというか、どこか納得できないというか……」

 ハオンは目だけじゃなく自分の顔を触りまくって感触でも確認をし始める。

「……ハオンはさ、ここがどこかも、ここまで何してたかも覚えてないんだよね?」

「ん? うん、そうだね」

「じゃあさ、私と一緒に冒険しようよ!」

「冒険! したい!——」

 そう答えたハオンは一瞬間を置き、続けて口を開く。

「あー…でも、ゆむは本当にいいの? 今初めて会ったばかりのそこで寝てた変な記憶喪失男だよ? よく考えたらこの状況めちゃくちゃで意味わからなくて今後行動を共にするの怖くない?」

「くすっ……これで怖気付くくらいならわざわざ別の星から一人でここまで来ないよ」

 ハオンの発言を聞き、くすりとしながら答えた。

「それに別の星に来て私と同じで分からない事だらけな人と出逢えると思ってなかったから嬉しいよ! 私!」

「ならいいんだけどね、 僕もなんだか嬉しいよ!」

「あと私結構やれるタイプだからね! 万が一のことがあってもこの身一つで何とかなるよ!」

 洞窟の壁を走ったり空中で一回転したりまるでパルクールの様な動きを取るゆむ。

「な、なるほど確かにそれなら平気だね」

 想像以上に動ける彼女を見て冷や汗を流すハオン。



「そういえばなんで濡れてるんだろう僕……」

 洞窟の外まで二人で歩いてる途中、ふと自分が濡れてる事が気になったハオン。

「ああそれ私が掛けたんだよ」

「えっ」

 歩きながら、ハオンは驚いた。

「起こす為に水筒の水を全部掛けたんだけどそれでも起きないから人工呼吸もしたんだけどそれでも起きなくて最終的に顔をぺしぺししてたら起きたんだよね、結果的に何が良かったんだろう」

「ああ起こす為にね……確かに何が……人工こ……えっ??」



「わあ……明るい……」

 洞窟から出て久々の陽に当たり眩しさで目を閉じるハオン。

「そういえばどれくらい眠ってたのかとかは分かる?」

陽の光で目を眩ますハオンに尋ねた。

「どのくらい……長い夢を見てた気がするけど……そんなに覚えて無くて、体感だと数年か十数年か……」

「そんなに!?」

「た、体感だから! あくまで!」

「でも、もしそうだとするなら確かにハオンは普通の人間とは違うのかも」

「……うん」

「でもってそうなるとハオンは人間と同じ見た目の人間より優れた種族って事だね! ご飯食べずにそんなに生きていける人間いないもん!」

「そ、それはどうなんだろ……別に優れた種族とかではないんじゃないかな」

少し照れつつもにこやかにハオンは言葉を返した。

「え~せっかく別の星まで苦労して来たんだからそれくらい夢見たっていいじゃんっ!」

「た、確かに! じゃあ優れた種族かもしれない!」

「でしょ!」





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