「直観」から読み解く日本語の奥深さ

古博かん

第三回お題作品「直観」KAC20213

 第三回目のお題が発表された。

 直観。

 改めて提示されると、少々、戸惑ってしまう。

 直感と、どう違うんだろう?


 頭を悩ませてしまったので、久々に、新明解国語辞典を手にとった。「金田一京助氏(国語辞典といえば、無条件にこの人だと思っている世代)、ご無沙汰しております」少々、罪悪感を覚えながら、埃を払っておもむろにページを開く。

 さて、金田一先生によると、二つの言葉の違いは、ばっくりと次のとおりである。


 直観:推理によらず・直覚的(瞬間的)に物事の本質をとらえること。直接に知り、また、判断すること。


 直感:推理・経験によらず、感覚的に物事の真相をとらえること。


 うん……? あまり違いがないように思うのだが(汗)

 仕方ない。もう少し、辞書引きするか……。


 直覚:推理や思考などによらず・聞いた(見た)だけで、すぐ・それが何であるか(何が起こったか)を了解すること。直観。【直覚的】一目ですぐ分かる様子。


 感覚:一、見たり 聞いたり さわったり して、大小・形・色・音・臭いなどの状態や物事の性質を知る働き。二、その物についての善悪・美醜・新古のとらえ方や、それに付随する価値判断。【感覚的】一、感覚するままに行動したり 表現したり する様子。二、見たり 聞いたり する人に強い刺激を与える様子。


 本質:そのものの特徴となっていて、それ抜きには その存在が考えられない、大事な性質・要素。


 真相:[世間で取り沙汰されたのとは違う]事件などの本当の事情。


 つまり、何だ。

 直観とは、「推理によらず、聞いた(あるいは見た)だけで、それが何かを了解し、物事の大事な性質・要素をとらえること」で、直感とは、「推理・経験によらず、見たり聞いたり触ったりして、ものの状態や性質を知り、本当の事情をとらえること」である——と。


 それって、つまり、どういうこと?

(金田一先生、すんません。アホには、今ひとつ理解が及びません……)


 早々に日本語での理解に限界を感じたので、私が唯一、かじったことのある外国語——英語からもアプローチしてみることにした。手軽に凶器になる辞書、ロングマン現代英英辞典のお出ましである。

 うっわ、すっごい埃……。


 あれ、待って。その前に、直観と直感を英語にしないといけないのか……(うっかり)。一応、調べておく。

 直観=Intuition

 直感=Intuition


 あれ。一緒? そうなの? 振り出しに戻ってない?

 まあ、いいか。とりあえず、辞書引くぞ。


 Intuition:1 [U] the ability to understand or know something by using your feelings rather than by carefully considering the facts. 2 [C] an idea about what is true in a particular situation based on strong feelings rather than facts.


 え、何これ。何て書いてあんの?

 おかしいな。学生の時は、この辞書使って勉強してたはずなんだが、記憶のどこにも引っかからないぞ……。

 まあ、いいや。とりあえず、破れかぶれに意訳するぞ。

 亀の甲より年の功。起きろ、私の英語脳。


「一、事実を慎重に検討するよりも、感情(を使うこと)で何かを知る、あるいは理解する能力。二、事実よりも、強い感情に基づく特定の状況において、何が真実であるかを考えること(または、その考え)」


 ほう。

 英語だと、またちょっとニュアンスが違う気がする。


 とりあえず、事象より感情ってことか。直感——と訳す方が、個人的にしっくりと馴染む。ちなみに、グーグル先生は、どういう結論を出すんだろう。


 脳科学的に、直観:大脳皮質、直感:大脳基底核——と、どうやら使う部位が異なると紹介しているサイトを発見。そうだったのか、それは凄い。

押したい)


 真偽混濁のウィキペディア先生によれば、哲学的解釈と、認知科学的解釈でも、定義が異なる——となると、これはなかなか、ややこしい話だ。考えようによっては、と言える気がする。

 あえて突き詰めると、物事を論理的に解釈できるか(=直観)否か(=直感)の違いということらしいが、それはどうやら経験に裏付けられるそうだ。


 一例挙げてみると、こういうことだろうか。


 ただただ、書くことが好きで、感情の赴くままに作品を書き散らかしているものの、閲覧回数が今ひとつ伸びない——という人は、直感的に創作をしている。


 一方、どういった作品を、どういう風に書いて公開すれば、効率的に閲覧回数を伸ばすことができるか——を蓄積した経験から予測し、執筆している人は、直観的に創作をしている——と、そういう例えも可能である、と言える。


 いずれの場合も、意識していようが、いまいが、自分の創作について論理的に説明のできる人を、直観的作者と表現できるし、何となく書いてる(理由を聞かれても、ちょっと……)という情熱先行型の人を、直感的作者と表現できる。


 以上が、今回のお題を元に、私の導き出した結論である。

 まさか、カクヨムでレポート仕立てをやらかすとは、思いもよらなかった。どうやら、私は直感的作者のようである。

 最後に、一応、参考文献を記載しておく。



——————

新明解国語辞典 第四版

ロングマン現代英英辞典 第三版

「直感」と「直観」の違いとは? 【人生と直感の驚くような話】

ウィキペディア - 直観

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