クロ

ペコロス

しば犬

またか。

「そろそろお前も彼女を作れよ。」

「一生1人って訳にも行かないだろ。」

「ずっと1人で寂しく無い?」


ほっといてくれ!!


俺には彼女がいないが

別に欲しいと思っていない。


そして俺は一人じゃ無い。


黒シバのクロ。


ホームセンターのペットショップの前を

通った時に運命を感じた。


俺はファミレスでメニューを頼むのに

いつも15分ほどは悩むが

その時は違った。


連れて帰る!

今までペットなんて縁日の金魚くらいしか

飼った事の無かった俺が犬を飼うなんて。



握り潰してしまいそうなくらい

か弱く小さな身体。


まるで黒い水晶のように輝く

ウルウルとした目。


ちょんと生えたヒゲ。


オカリナを吹くようなか細い声の

鳴き声。


素通りなんて出来るわけが無かった。


そう決めたものの。

何の知識も経験も無い俺とクロにとって

毎日が大騒ぎだった。


何か少しでも異常があれば

すぐに近くの獣医に連れて行き

そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。

と言われたものだ。


未だに仕事に行く前には不安で仕方無い。


でもあの玄関を開けた時に真っ先に

自分へ向かって走って来るクロを

抱きしめると最高に幸せを感じることが出来る。


だから同僚や上司に何を言われようと

気にもならない。


さぁっ今日の仕事も片付いた。

あいつが待ってるから早く帰ろう。

そうだ新発売のおやつが売ってたし

それを買って帰ってやろうと。


玄関ドアの鍵穴に鍵を入れる。

音には気付いてるはず


ゆっくりとドアを開ける


キィーー


シーン。


パチッ

玄関の電気を点ける。


あれ?ああ。






「俺犬なんて飼って無かった。」


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クロ ペコロス @pekopekopekoros

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