「では、異世界転生……」「もう、騙されんぞ、クソ神が!!」

@HasumiChouji

「では、異世界転生……」「もう、騙されんぞ、クソ神が!!」

「あ〜、次の方……。で、転生にあたって、どんなチート能力が御希望ですかな?」

「ふ……ふざけんなッ‼」

 このクソ神の前に立つのは何度目だろう。

 三〇回目で数えるのをやめたが……百回以上なのは確かだ。

「……はて……前回の転生で、何か……問題でも?」

「前回だけじゃねえッ‼」

 魔法関係のチート能力を考え得る限りもらって1回目に転生した先の世界は……世界全体が「魔法阻害結界」とやらの中だった。

 続いて、やっぱり、魔法関係のチート能力を考え得る限りもらった上で、ちゃんと魔法が使える世界に転生させろ、と要求した。

 そして、俺は、その世界で、瞬く間に有名になり……その世界最大の帝国の皇立魔法学院の教師として高給で雇われた。

 だが、チート能力で得た「魔法」を他人に教える事など出来る訳が無く、半年で馘になり、しかもその間に社会的信用を失なっており、マトモな仕事につけぬまま、「チート能力持ちのホームレス」と云う訳の判らない立場になり……慈善施設で一生を終えた。

 勇者系とか聖戦士パラディン系とかのチート能力をもらった時は……ある時は、「ゴミのポイ捨て」「たまたま道端で急病人と出会した場合に見て見ぬフリをする」程度の「悪事」で能力が失なわれる、と云う制約が付いた上に、転生先の世界は「『正義』が嘲笑される」「『正義の味方』が逆に危険人物と見做される」世界だった。別の時は、俺が人間として最初の生を送った世界より遥かに科学技術が進歩した世界で……そんなチート能力はクソの役にも立たなかった。

 では、チート級の料理人……になれば、転生先は石器時代で、ロクな鍋も包丁も無かった。それどころか、塩さえも、自分で海水から作るか、岩塩を採掘するしか無かったが……海も岩塩も見付けられぬまま、一生を終えた。

 超イケメンにしろ、と頼んだ時は、俺の基準で超イケメンにした挙句、俺とは美的感覚が全然違う世界に転生させられた。

「はぁ……左様で……。で……今回の御希望は?」

「もう、騙されてたまるかッ‼ ‼」

 ずっと考え続けた事だった……。

 もう、他の誰か……神であろうと……に運命を弄ばれるのはコリゴリだ。これからは……俺が他のヤツの運命を弄んでやる。

「よろしいんですね? では、最終確認です。ここでOKの意志を示せば……もう取り消す事は出来ませんぞ……」

「もちろん、OKだ」

 次の瞬間、クソ神は消え、俺が神になっていた。

「さて……神の権限を使って……」

「あの〜、神様。あんたは『異世界転生』の権限しか無い神様なんで、大した事出来ないよ。それに仕事量がハンパ無いんで、自分の楽しみの為に何かやる暇なんて無い」

 その時、横に居る天使らしき「何か」が、そう言った。

「えっ?」

「とりあえず、今日1日で残り五百個の魂を転生させないといけないんで、さっさとやって。で、明日は二千個以上の予定ね」

「な……何で、そんなに……?」

「さぁ……。理由は判んないけど、先先々代か……更に、その前の『異世界転生の神』の前任者が『異世界転生させる魂』の選抜基準を変えたんで……」

「あ……あの……神様を……やめる事出来る?」

「誰かが自分の意志で、あんたの仕事を引き継いでくれたらね」


 あたしは「異世界転生を司る神」の役目を、あるヤツに押し付ける事に成功して、元の世界……二一世紀のアメリカ西海岸の町に戻る事が出来た。

 あたしが人間に戻ったのに伴なって歴史が変ったらしく、あたしが死ぬ原因になった自動車事故は「無かった」事になっていた。

 そして、あたしは、再び……人間としての普通の生活を送るようになり……その日、あたしはネット配信サービスでアニメ映画を見ていた。

「あれ?」

 話も終りに近付いた頃、あたしは、ある事に気付いた。

 あたしが「異世界転生を司る神」の役目を押し付けたヤツも……元々は、この時代のこの世界の出身の筈なのに、あいつは、何故、この「罠」に気付かなかったんだろう?

 PCのモニタに表示されているディズニーの「アラジン」では、悪役のジャーファーが、ランプの精に向かって「」と命令していた。

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