3.11 〜あの日の判断〜

金魚屋萌萌(紫音 萌)

3.11

 3.11から数年後。あの時の判断は未だに正しかったのだろうか。私は今も悩み続けていた。いいや、仕方なかったのだ。私が生きて行くためにはやむを得なかったんだ、と言い聞かせる。たとえ多数の生命を犠牲にしてでも私は生き延びるべきなのだ。私が終わってしまったら、多数どころではない、人類は当然、そのほかのほとんどの生物が死滅してしまうのだから。


  私の中に存在する生物は一つの例外を除き、あまり私に害を与えないし、逆にあまり利益をもたらしてくれる事もない。基本的に等価交換で害を与えた分だけ利益をもたらしてくれた。そして、私が創った環境に従い、進化をしていった。


 ――ただ、一つの例外「人」だけは違った。


彼らは最初こそ利害の等価交換、環境に従って自分の進化を続けていったが、次第に環境を克服し始めた。


 やがて彼らが自分で年代を数えるようになると彼らは自分自身を進化させるのでなく、身の回りの物事、つまり技術を進化させ始めた。そして逆に環境を従えだし、利害も等価交換にならず、私にとってほとんど害になる事を行い始めた。


 でも、私は分かっていた。今彼らが害しか与えていないのはまだ技術が進化の極みに到達していないからだと。もし「人」の技術が極みに達したら、恐らく今まで私に与え、蓄積されてきた莫大な害を余裕で越える程の利益を与えてくれるだろう、いや違う、私「世界」自身が進化し「新世界」となる可能性だってある。


 でも、その前に彼らは自分自身で自滅を起こし、私の存在意義すら失わせる技術を開発した。原子力技術だ。この技術は「人」の進化の極みへ到達できる近道なのは確かだった。でもリターンが大きすぎる。この技術は戦争の道具、核兵器として使われると、人類はもちろん、全生物のほぼ全てが死滅してしまう。私はそれを止める為に原子力を兵器として唯一使われた国、××の原子力発電所がある場所に地震を起こし、警告をしたのだ。

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3.11 〜あの日の判断〜 金魚屋萌萌(紫音 萌) @tixyoroyamoe

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