第2話 食事は一緒に食べましょう

「お兄様、本当にお医者さまに診てもらわなくても大丈夫ですの?」


「ああ、大丈夫だよ。特に頭痛とかも無いし……何よりクレアともっと遊びたいからね」


「やった!お兄様!!」


ガバッ!


向日葵のような笑顔で抱き着いてくるクレア。


「よしよし」


ナデナデ ナデナデ


「ふにゃあ~、ダメですわおにいさまぁ……」


なんだこの可愛い生き物は……。


「じゃあ何して遊ぶ?」


「クレアは夫婦ごっこがしたいですわ、お兄様」


夫婦ごっこ?

ああ、おままごとのことか。


「いいよ。俺が夫でクレアが妻役かな?」


「はい!ではお人形を持ってきま――」


タッタッ


クレアが突然口をつぐむ。


足音のする方に目を向けると、そこにはクラシックなメイド服を着た女の人。

年齢は20代前半くらいだろうか。あの人は確か――


「ルル様、お昼食の準備が整いました。旦那様と奥様が待っていらっしゃいますので食堂にお越しください」


「あ、ああ。分かったよ……ステフィ」


ステフィはこのラッシュフィール家に仕えるメイドの1人。

一応、クレアの教育係でもある。


「ごめんねクレア。夫婦ごっこは食事の後にしようか」


「はい、お兄様。クレアはここで待っておりますので、お食事をなさって来てください」


「えっ?」


どういうことだ?クレアは一緒に食事しないのか?


「では参りましょう。ルル様」


「ちょ、ちょっと待ってくれステフィ。なぜクレアも一緒に来ないんだ?」


「ルル様、それは奥様のご意向で……」


ステフィも困ったような顔をしている。

まさか、俺の母親――エレナが、クレアが一緒に食事をとることを禁止しているのか?


その瞬間、俺の中で何かがプツンと切れる音がした。


「クレア、行こう」


「お、お兄様!?」


パシッ


俺はクレアの手を取り、ズンズンと歩き出す。

なぜクレアだけ1人で食事しなければならないんだ?そんなの間違ってる!!


バンッ!


俺は食堂のドアを開ける。


「遅かったな、ルル」


「さあ、食べましょう――って……」


2人とも口を開けてポカンとしている。

だが、俺はそんな2人を無視してテーブルに着く。


「じぃや、クレアの分も用意してくれ」


「し、しかし……」


「嫌なのか?」


「い、いえ滅相もありません!すぐにご用意致します」


燕尾服を身にまとう白髪交じりの初老の男性。

彼の名前はルーク、ラッシュフォード家の執事長を務めている。

ルークは俺の教育係も務めており、俺は彼のことをじぃやと呼んでいる。


「お、お兄様。私、やっぱり帰ったほうが……」


「いや、ダメだ。だって俺は――クレアと一緒にご飯を食べたいからさ」


「お兄様……分かりましたわ」


こうして、ラッシュフォール家の食事が始まったのだった。

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悪役令嬢の義兄に転生したので、とりあえず義妹を溺愛します。 __ @kakerudd

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