三国志演義・街亭の戦い~泣いて馬謖を斬る~
@KiriyaSion02
三国志演義・街亭の戦い~泣いて馬謖を斬る~
作者:霧夜シオン
所要時間:約70分
必要演者数:12人(9:0:3)
(9:1:2)
(9:2:1)
(9:3:0)
※これより少なくても一応可能です。時間計測試読の際は7人で兼ね役しました
。
はじめに:この台本は故・横山光輝氏、及び、吉川英治氏の著作した三国志や各
種ゲーム等に、作者の想像を加えた台本となっています。その点を許
容できる方は是非演じてみていただければ幸いです。
なお、武将名に漢字がない【UNIコード関連に引っかかって打てない】
場合、遺憾ながらカタカナ表記とさせていただいております。何卒
ご了承ください<m(__)m>
なお、上演の際は漢字チェックをしっかりとお願いします。
ある程度はルビを振っていますが、一度振ったルビは同じ、または他
のキャラのセリフに同じのが登場しても打ってない場合がありますの
で、注意してください。
●登場人物
ている。しかし、己の才を鼻にかけ他人を侮る所があり、蜀の先帝・
まさに的中しようとしていた。
不世出の人物。劉備の臨終に際し子の
の権化で、魏を討って漢王朝再興を目指す。南蛮を平定して後、
ると北伐を開始する。
物。離間の計によって官職を剥がれ、郷里に引きこもっていたが、
再出仕の要請を受ける。魏を裏切り、蜀へ帰参しようとした
を、
一路前線へと急行する。
懿が軍権を預けられた際に特に乞い受けた人物。かつて漢中争奪戦
の際には、蜀の
仲違いし、蜀に降る。以後はその慎重な性格と誠実な人柄で信頼を
得、功を重ねる。今回の魏侵攻でも
が国から再出仕を求められる事を予見し、弟と共に軍備を整えてお
くなど先見の明を持つ人物。
父や兄と共に蜀軍の侵攻を阻止するべく従軍する。
将。
反骨の相【謀反人によく見られると言う人相】を持つ為、仕官時に
ある将軍。この為、諸葛亮とはわだかまりのある間柄。
名実共に現時点での蜀軍の武の要。豪胆かつ知勇に優れ、
時、
一騎で駆け抜けて主君劉備の元まで辿り着き、人材収集癖の塊である
先帝劉備曰く、「
て、後主・
蜀部将・♂♀不問:軍隊を根底から支えている名も無き部将その1。蜀軍側。
魏部将・♂♀不問:軍隊を根底から支えている名も無き部将その2。魏軍側。
兵士A・♂♀不問:馬謖のせいで不幸な目に逢う可哀想な兵士その1。
兵士B・♂♀不問:馬謖のせいで不幸な目に逢う可哀想な兵士その2。
兵士C・♂♀不問:馬謖のせいで不幸な目に逢う可哀想な兵士その3。
民・♂♀不問:乱世に翻弄される哀れな民。
ナレーション・♂♀不問:雰囲気を大事に。
※演者数が少ない状態で上演する際は、被らないように兼ね役でお願いします。
兵士A、B、Cと民は適宜割り振ってください。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:
た。この為、
の侵攻を受けた魏から再出仕を請われる。
未然に阻止、これを討ち取ると
預けられ、
司馬懿:いたずらに敵を讃えるわけではないが、この仲達の見る限り、
ない・・・。
張コウ:まこと・・・侮りがたき強敵でございますな。
司馬懿:もし自分が
立てるが・・・おそらく諸葛亮はその方針は採るまい。
何故なら、彼の従来の戦いぶりを見ていると、いかなる場合にも敗北
しない地を占めて戦っているからだ。
張コウ:ううむ、まるで手のひらを指すかのようなご教示。では我らがこれから
とるべき方策は?
司馬懿:うむ、まずは
更には
る。
司馬師:(英雄、英雄を知るとはこの事か・・・さすがは父上・・・。)
張コウ:して、
司馬懿:胸の奥深く秘めている事だが・・・
その近くにある城が
あの地こそは蜀軍の喉元にもあたる重要な地。ここを奪ってしまえば、
蜀軍の食糧輸送の道は絶える事になり、総退却せざるを得なくなるだろ
う。
司馬師:諸葛亮は
そこを父上と張コウ将軍で一挙に突く・・・実に愉快ですな。
張コウ:おお、正に
ものだ。
司馬師:
父上の神のごとき
司馬懿:待て待て、
張コウ:かしこまりました。
司馬懿:一里進むごとに十里先に
大胆に、細心に、よくよく性根をすえてかかるのだ。
張コウ:仰せまでもございませぬ。
司馬懿:うむ、では出陣の準備を。師よ、
を固め、
司馬師:はっ、ただちに!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:
はここに切られようとしていた。
この地は
めていた事は言うまでもない。
諸葛亮は早馬にて
諸葛亮:
いて来たからには、
いるであろう。
あの地こそは我が蜀の喉にもあたる要所。一刻の猶予もない。
すぐにでも軍を向けてこれを守らせねばならぬ。
誰を行かせるべきか・・・。
【少し長めの間】
馬謖:
諸葛亮:
馬謖:いいえ、たとえ司馬懿や張コウが世に並び無き名将であろうと、
を学び、
もはや年も三十九だというのに、何の功績も立てていないとあっては、
世に対して顔向けできませぬ!
諸葛亮:むむ・・・。
馬謖:
しょうや。
ナレ:軍隊において私情は禁物であることは、諸葛亮も十二分に承知している
はずだった。だが、日頃から
みにしている彼にとって、ここらで難敵に当たらせて鍛錬を積ませるのも
悪くはない、そんな考えにふと、心を動かされてしまった。
諸葛亮:・・・・・。
馬謖:
諸葛亮:・・・よし、わかった。
のだ。
馬謖:はっ! ありがとうございます、
て見せます!
もし過ちがあった時はこの身は言うに及ばず、
も、決してお恨みは致しませぬ!
諸葛亮:陣中に戯言なし、であるぞ・・・
決して甘く見てよい相手ではない。
それゆえ、副将として
図面にして送って参れ。
王平:ははっ! 承知いたしました。
諸葛亮:よいか。
さすれば魏軍がいかに大軍で押し寄せようとも落とされることはない。
馬謖:街道筋でございますな、
諸葛亮:もし
であるぞ。心してかかるのだ。
馬謖・王平:ははっ!!
諸葛亮:
魏延:なんですと、それがしに
諸葛亮:うむ、
魏延:それがしは既に先陣の大将を承った身! 先駆けし、敵を進んで破れと
あらば死をも恐れませぬ。
か!?
諸葛亮:真っ先に進んで敵を破るは部将の役目。将軍に
たのは、かの地は
られると我が軍の息の根が止まる。決して軽く考えてはならぬ。
魏延:! なるほど、言われてみれば確かにその通りでございました。
喜んで向かいます。
諸葛亮:頼んだぞ。なお、
兵一万を率いて駐屯せよ。
。
ナレ:勇んで二万五千の精兵を引き連れ、
だが、
彼が胸のうちに抱いた一抹の不安・・・それは、不幸にも的中しようと
していた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
馬謖:ここが
ナレ:
回っていた。その途上。
馬謖:・・・ふっ、はっはっはっはっは!!!
王平:? 馬謖殿、どうなされた?
馬謖:ふっ、
し、人がかろうじて通れる程度の細道が幾つかあるにすぎない。
こんな所に魏が大軍を差し向けるわけが無い。
――よし、この上は山頂に陣を構え、魏軍が来襲の折は一息に
殲滅してくれる。
王平:な・・・馬謖殿!
仰せられた。
もし山頂に陣取って魏軍に麓を取り巻かれたらどうされるおつもりか!
馬謖:ふん、貴公の考えはまるで婦女子のごとき軟弱なものだな。
王平:ッ!! 聞き捨てなりませぬな!
一体それがしの考えのどこが婦女子と言われますか!
馬謖:知らぬのか? 兵法にもある。「高キニ拠リテ低キヲ視レバ、勢イ既ニ
破竹」とな!
(※たかきによりて ひくきをみれば、いきおい すでに はちく)
それに
一体何を恐れる必要があるというのだ?
王平:それほどまでに
ここは我らが忠実に命令を遂行するべきと存じます。
蜀部将:申し上げます! 魏軍の
馬謖:来たか! この街亭へ至るまであと幾日もあるまい。
王平:むうっ、もはや一刻の猶予も無い・・・馬謖殿、それがしは
もって街道沿いに布陣致します!
馬謖:ええい、私の命令に従えぬというのだな! もし私が
魏軍を蹴散らしたとしても、貴公の功とは認めぬぞ!
王平:ッ・・・承知、しております・・・!
馬謖:我らは山頂へ向かうぞ! 急げ!
魏軍がやってくる前に布陣を終わらねばならぬ!!
王平:我が隊は街道沿いに陣を構える! 行くぞ!
ナレ:こうして二人は意見を
道沿いにそれぞれ布陣し、魏軍を待ち受けることとなった。馬謖は
を眺めて歯噛みし、王平は不安に駆られて山頂の陣を見上げていた。
馬謖:王平め・・・大将たる私の命令に従わぬとは・・・、この上は魏軍を蹴散
らして凱旋したのち、
ねばならん・・・!
王平:
彼の考えを変えさせるのは、
・よし、できた。我らの布陣図を
だ・・・間に合えばよいが。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:数日の後。魏軍の先鋒に先立って司馬懿の次男、司馬昭は父の命を受けて
街亭の様子を偵察に来ていた。
司馬昭:なに? 既に蜀軍が布陣していると? ぬうう、父上の作戦の上を行く
か、諸葛亮め・・・。
魏部将:はっ! 街道沿いに見える旗は王平、街亭山頂に見えるのは馬謖のもの
らしく見えました!
司馬昭:そうか、街道と山頂・・・、む? 山頂? 今、そう申したか?
魏部将:はっ、蜀軍はどうやら
布陣している方はそれに比べれば少数、五千ほどかと思われます。
司馬昭:ふ、ふふ・・・そうか、これは父上に良い報告ができそうだ・・・、
よし、
命令を待つように、と!
魏部将:はっ! 承知しました!
司馬昭:我らも一度父上のもとまで引き返し、現状を報告する。撤退!
ナレ:
報告に出た。
司馬懿:おお昭、ご苦労だった。して、蜀軍はまだ来ておるまいな?
司馬昭:いえ、既に蜀の防衛部隊が陣を張っておりました。
司馬懿:なに!?
く・・・さすがは諸葛亮、既に手を打っていたとは・・・神眼、神速、
まさに
司馬昭:父上、さほど悲観なさるには及びません。
私の見たところ、
司馬懿:昭よ、あまり大きな事を言って皆を惑わすな。
既に
司馬昭:ところが父上、蜀軍は街道沿いの守りを捨てて街亭山頂に陣取っていま
す。街道にはわずかに五千程度の兵しかおりませぬ。
司馬懿:なにい!? 道筋を抑えておらんだと!?
それではまるで奪ってくれと言わんばかりではないか!
・・・信じられぬ・・・。よし、この目で確かめてみよう。
【間】
ふむ、あの細い山道に砦を築いて軍を置けば、いかな大軍といえど通れ
ぬものを・・・。
司馬昭:父上、あれが敵陣でございます。
司馬懿:なに、あれか? !これはなんとした事だ。ふははははは!!
笑うべし笑うべし、蜀軍は自ら破滅の地に陣取って敗北を待っておる
わ!
司馬昭:更に蜀にとって致命的なことに・・・あれをご覧下さい。
司馬懿:ん? あれは・・・蜀兵か。手に持っているのは皮袋だな。
!! そうか、ふははは、そうかそうか、山頂にはあれが無いようだ
な!
して、守備隊の蜀の将は誰か?
司馬昭:馬謖とのことです。諸葛亮の愛弟子だそうですな。
司馬懿:ほう、馬謖か。
多少知恵が回るとは聞いていたが、大将の器ではないな。
賢者にも千慮の一失というのはあるが、
誤る事もあるか。よし、対策は立った。引き上げるぞ。
【間】
張コウ:
司馬懿:うむ、揃ったか。
諸将よ、先ほど
の大将は、この上も無い愚か者であったわ。
これは我が魏にとっては限りなく喜ばしき事だ。易々と打ち破れよう。
救援させてはならぬ。
張コウ:ははっ! お任せくだされ。
司馬懿:
そう・・・水をな!
食わずとも数日は持ちこたえられるが、水が無くば死、あるのみ
よ・・・。
では諸将よ、行動に移れ!
司馬懿役以外魏側役全員:はっ!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:魏軍はただちに蜀軍を包囲すべく動きだした。
場を、
の本隊は街亭山麓を
空気を震わせ、大地に響かせた。
蜀部将:申し上げます! 街亭山の麓、全て魏軍に取り囲まれています!!
馬謖:ふん、来たな魏軍。目にもの見せてくれるわ! 紅の旗が動いたら一斉に
掛かり、登ってくる魏兵を皆殺しにするのだ!
蜀部将:ははっ! 出陣の合図を!!
ナレ:馬謖は自ら有利の地形を占めていると思い込み、必勝の意気は天を
つくものがあったが、魏軍は
こなかった。
馬謖:怯んだと見えるわ、この上は我が方から
てくれる! かかれ!!
司馬懿・馬謖役以外全員:【喚声を上げる】
司馬懿:ふっ・・・来たか、愚か者め。固く守り損害を抑えよ! 敵は既に自ら
破滅の地へ身を置いているものだ! こちらから攻め
わ!
矢の雨を浴びせよ!!
司馬師:
司馬懿:よし、十分に引き付けて放てぃ!
司馬昭:射よ! 射よッ!! 蜀軍を残らず
ナレ:馬謖は功に
をかいくぐって魏将二人を討ち取った。
だが、蜀軍は序戦において勝ったものの、山上へ戻る頃には体力を使い
果たし、魏軍の追撃に討たれるその数はおびただしかった。
それでも
馬謖:はっはっは! どうだ魏軍め、初戦に将二人の首をあげたわ!
戦は勝っているぞ!!
明日も山を駆け下って魏軍を散々に打ちのめしてくれるわ!
ナレ:だが、魏軍は山麓包囲と同時に蜀軍の水汲み場も抑えてしまった為、
たちまちその日から水に苦しむこととなった。
蜀部将:申し上げます。将軍、水の貯えがもはやありませぬ。
馬謖:水だと? ならば汲みに行けば良いではないか。
蜀部将:それが・・・どうやら魏軍に包囲された際に、水汲み場も奪われて
しまったようです。
馬謖:なにい、水を絶たれたというのか!? ふ、ふん、
こんな時の為に丞相は、
を入れているのだ! それより、何としても水汲み場を奪回するのだ!!
夜には決死隊をつのって水を汲みに行かせよ!!
蜀部将:はっ!(あの時、
いをせずとも済んだのでは・・・?)
ナレ:
を奪い返そうとするが、その度に無惨なまでの損害をこうむった。
馬謖:くっ・・・おのれ、こんなはずでは・・・!
ナレ:水が無い為、食糧を煮炊きする事も出来ず、生のままか焼いて食べざるを
得ない。
また、こんな時に限って空も意地悪く、待てど暮らせど一滴の雨も降らな
かった。
馬謖:ぬうう、雨はまだか! まだ降らんのか・・・!!
ナレ:更には決死隊を何度もつのり、夜の闇に紛れて水を汲みに行かせたが、
それらは誰一人として戻らなかった。水汲み場で待ち構えていた魏軍に
捕らえられ、蜀兵達は皆、降伏してしまっていたのだ。
蜀部将:将軍、このままでは兵達の士気は下がるばかりです。
なにとぞ、励ましのお言葉を・・・。
馬謖:ええい、わかっている・・・!
【短い間】
聞け、皆の者! もうすぐ
耐えるのだ!!
兵士A:(ふざけるな! お前が素直に
な事にはなってねえんだよ! この無能!)
兵士B:(来る来るって、いつ援軍が来るんだよ!水が無いせいでどんだけ仲間
が死んだと思ってやがる!! もう喉の渇きが限界だ!!)
兵士C:(もう駄目だ。こんな奴に従っているよりは、いっそのこと魏
に・・・)
ナレ:
立たなかった。その日の夜、ついに全軍の約半数が密かに山を下り、
魏軍に降伏してしまったのだ。
蜀部将:将軍! 一大事でございます!!
【息切れ】
・・・っ、兵の約半数が・・・逃げ出しました・・・!
馬謖:なんだと!!? ・・・くっ、やむを得ぬが援軍は待っておれん。
明日にでも山を下り、敵軍の手薄な部分を突破し、
蜀部将:はっ・・・。(我が身の武運も、これまでか・・・。)
ナレ:その頃、
集めてそれぞれ作戦を授けていた。
司馬昭:父上、これほどの数の蜀兵が降ってきたという事は、山頂の蜀軍の渇き
がついに限界に達したという事ですな。
司馬懿:うむ、
の半数が降伏してくる。その程度の事は馬謖も計算できるであろう。
司馬師:では、今日か明日には必ず山を下りて、我が軍の包囲を突破しようと
するに違いありまぬな。
張コウ:突破を許して
司馬懿:まず、包囲網の西南の方角をわざと一か所、手薄にしておくのだ。
ある程度通らせ、蜀軍が山を下りきったら一斉に包囲し、徹底的に殲滅
するのだ。
張コウ:それがしは引き続き、
ですな?
司馬懿:いかにも。救援を成功させてしまったのでは獲物は少ない。師は
通る道筋に兵を伏せて、これにあたれ。
司馬師:はっ、お任せください、父上。
司馬懿:昭は
司馬昭:心得ました。必ずや蜀軍に目にものを見せてやります。
司馬懿:
同然であろう。守備の兵も大して残ってはいまい。
一部の兵を回して城を奪うのだ。
ナレ:魏の将達は作戦を行動に移すべく、各々の隊へと戻っていった。
いっぽう
蜀部将:将軍、西南の方角の魏軍が幾分手薄なように思われますが。
馬謖:よし! 皆、一気に駆け下りて列柳城を目指せ!
【短めの間】
魏部将:都督、蜀軍が山を下り始めました!
司馬懿:うむ、適当に通せ。網の中に入ったら、合図と共に一斉に襲い掛かるの
だ。
【短めの間】
・・・・・うむ、頃合いだな、掛かれッ!!
魏部将:はっ!! 合図を!!
馬謖:!!ぬうう、おのれ! 伏兵とは・・・誘き寄せられたか!!
逃れられぬ所、もはやこれまで・・・!
ナレ:この十数日、水を断つ計略にあって半病人も同然の馬謖の兵は、
魏軍にとって手頃な餌食となってしまう。更に魏軍は山に火を放ち、
その燃える様は他の蜀軍の陣からも臨まれた。
蜀の将軍達は直ちに援軍に向かおうとしたが、既にその道のすべてには、
司馬懿の伏兵が待ち構えていた。
蜀部将:
王平:(くっ・・・結局、
させる事もできなかったか・・・)いかん! すぐに本隊を救援に向かう
のだ!
張コウ:待ちかねたぞ
ここを通りたくば、その首を置いていけィ!!
王平:むむむ、既に伏兵が・・・!
張コウ:それッ、蜀軍を皆殺しにせよ!
蜀部将:将軍、このままでは三方から囲まれます!!
王平:くっ・・・この少ない兵では本隊の所までは進めぬ! 一旦引き返し、
陣を守り固めよ!!
張コウ:待てィ! 逃げるか王平!! 返せッッ!!
者ども、掛かれッ、掛かれェェェッッ!!!
【短めの間】
蜀部将:
魏延:ちっ、青二才め・・・大口を叩いておきながら、結局このざまか!
まあいい、すぐに
出せ!
我に続けィ!!
司馬昭・魏延役以外全員:【喚声】
魏部将:
司馬昭:ふふふ、
魏延:なにい、左から敵が! 伏兵か!! おのれ、突破するのだ!!
司馬昭:今だ、合図を送れッ!
蜀部将:ッ将軍! 右からも魏軍が!!
魏延:ぬうっ、蹴散らしてくれるわ!! おおおおおッ!!!!
司馬昭:ははは、
殲滅するのだ!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:
更には
る。
激戦は三日三晩続き、蜀軍のどの部隊も傷を負っていない者はないという
有様であった。そして四日目・・・。
魏延:
王平:はっ、ほとんどの兵が負傷しています。
魏延:そうか、我が隊も大分戦死した。無傷の者などおるまい。
王平:
思われますが・・・。
魏延:うむ、確かに・・・このままでは我らは
の憂き目に逢うだろう。
王平:ここは
魏延:わしもそれを考えていた。我らの役目は魏軍を打ち破ることではない。
食糧補給路を守ることだ。今この
我が軍は命綱を断たれることになる。
・・・よし、
王平:はっ、では夜明けと共に引き上げましょう。
ナレ:翌朝、
だがその途上、意外な敵と遭遇した。
魏延:ぬうう、この新手に傷ついた軍で戦いを挑むのは、自殺も同じだ。
無念だが、
王平:そうですな・・・急いで道を変えましょう。
ナレ:一方、既に
呼んだ。
司馬懿:
得まい。
張コウ:では、次は
さして落とすのに力は要しますまい。
司馬懿:否、それはならぬ。
せんと
がでてくる。
兵法にも「帰ル師ヲ掩ウ事勿レ。窮マル寇ヲ追ウ勿レ。」と厳しく
戒めている。
(※かえるいくさを おおうことなかれ。 きわまるあだを おうな
かれ。)
張コウ:恐れ入りました。確かにおっしゃるとおりですな。
ならば、いかがなされますか?
司馬懿:うむ、そこでだ。我らはかえって蜀軍の背後に回り、
思う。田舎の
これを手に入れてしまえば、遠征の蜀軍は確実に漢中へ退却せざるを得
なくなる。我が軍が多くの犠牲を払う必要も無い。
司馬師:
かの城を奪れば、
張コウ:心得ました。では早速に。
【短い間】
我らは
司馬昭:(勝てば勝つほど、父上の兵法は堅実を加えていく・・・。)
司馬懿:
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:
一人の為に、もろくも崩れ去った。一方、それより少し前、蜀軍本陣に
て。
蜀部将:申し上げます!
街亭の
諸葛亮:うむ、これへ。
【短めの間】
うっ、これは!!?
あれほど言い含めたのに・・・この布陣では、敵が山麓を包囲して水を
断てばそれまでではないか! なんたる愚か者だ・・・いくら若いにせ
よ、こうまで
急ぎ布陣を変えさせねば・・・! だが、敵は
は・・・・・
蜀部将:【↑の語尾に被せるようにして】申し上げます!!
が・・・落ちました・・・!!
諸葛亮:!!!ッ・・・やはり・・・落とされたか・・・! ああ、我が過ち
だった! 大事は去った!
夢となった・・・。
かくなる上は、魏の追撃の手をおさえて撤退せねばならぬ。
【短めの間】
轟かせ、
来たらば防げ。頃合を見計らって、
には出まい。
・・・余は、これより
兵五千を率いて
逃がし、あわせて食料も輸送させる。急ぐのだ!
諸葛亮役以外全員:ははっ!!
ナレ:
輸送させていた。その矢先。
兵士A:も、申し上げます!! 魏軍が・・・
この
蜀部将:な、何!? 既に兵の半数は食糧輸送の為に
いるぞ・・・!
諸葛亮:!!!・・・うろたえるな!
【短い間】
むうう、さすがは魏、さすがは
よ・・・。
四方の門を開け放て。門の入口には水を打って掃き清めよ。
将達は己の持ち場を守り、立ち騒ぐ者や声を出す者はその場で斬れ。
部署ごとに旗の下を動くな。
門を守る兵達は、敵兵がたとえ近づいてきても居眠るかのように
にしているのだ。・・・琴を持て。
ナレ:配下への命を伝えると、
そして香を焚き、琴を据えると弾き始めた。
魏部将:申し上げます!
は
司馬懿:な、なにっ? そのような事、信じられぬ・・・!
・・・よし、この目で確かめよう。
【短い間】
おお・・・あれはまさしく、
ナレ:琴の
いざ、通られよとばかりに八文字に開かれている。
なしに背筋に寒気を覚えると、やにわに味方へ向けて叫んだ。
司馬懿:退けっ、退けっ!! 退くのだ!!
司馬師:ッ父上、何故退けと仰せられますか!? あれは敵の計略に違いありま
せぬ!
司馬懿:これは
い。
司馬昭:しかし、多少の策などこの大軍の前には通じますまい。
司馬懿:かつて
せ、城ごと火計で焼き払ったことがある。
また、先の
穴をもって打ち破っている。
城内に誘き寄せて殲滅せんとする罠に違いあるまい。ここは退くのだ!
ナレ:
を見て、手を打って笑った。
諸葛亮:
う。
蜀部将:し、しかし、
か?
諸葛亮:
利用したのだ。
こちらはわずかに二千五百、城を捨てて逃げたとしてもすぐに追いつか
れ、今頃は捕らわれていたろう。それゆえ、やむなく用いた計略だ。
蜀部将:恐れ入りました。我らなら真っ先に城を捨てて逃げ出していたでしょ
う。
諸葛亮:彼は今頃、ここを退いた後は
から、あの地に伏せておいた
に違いない。これで退却に必要な時を十分稼げる。
すぐに撤退するのだ!
ナレ:
また、
起こしたが、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:蜀の国境において最も険しい道、
蜀の
げたのを
った。
趙雲:トウ
まず、我が旗を立ててお主が先に退け。勝ち
一泡吹かせておかなければしつこく追ってくる。
ナレ:トウ
すぐさま
まず先陣に
趙雲:ふふふ、さっそく現れおったな。
【短い間】
来た者は
蘇ギョウ:な、何っ!
趙雲:それっ、一気に片付けろ!!
焼き付けていけィ!!
蘇ギョウ:お、おのれっ、くっ、ぬぐっ、ぬうううっ!!
趙雲:ふん、そんな腕でわしを討てるとでも思ったのか! それっ!!!
蘇ギョウ:ぐっ、ぐあああ!!!
趙雲:口ほどにもない奴よ・・・退くぞ。
ナレ:
た。何事もなかったかのように静かに後退を続ける趙雲に、今度は
いう魏の将が、先の兵力を超える軍を率いて迫ってきた。
趙雲:また来たか。お前たちは先に退け。ここは大軍が一度には通れぬ絶好の
足場だ。わし一人で十分ゆえ、三十里ほど先の峰で待っておれ。行けい!
蜀部将:はっ。将軍・・・どうかご無事で。
万政:ぬうう、
て・・・! 者ども、かかれぇ!
趙雲:さあ、この
ナレ:道の左右は絶壁がそそり立ち、その上、
て立っている為、大軍もまるで役に立たなかった。
討ち取ろうと駆け上がり当たる者、皆、
く。
やがて魏の兵たちはひるみ、辺りは日が暮れかけた。
趙雲:なんだ、もう来ぬのか。張り合いの無い奴らよ。
ならば引き上げさせてもらうぞ。
万政:うっ、
【短い間】
ええい、どこへ行った!
まだ遠くまでは行っておらんはずだ!
追え、追うのだ! 逃がすな!!
趙雲:【↑の語尾に被せて】
わずらわしい魏のハエ共め! それほど死に急ぎたいか!!
万政:な、なに!? いつの間に!!? うっ、うわああああああ!?
趙雲:ふん、うろたえたあまり谷へ落ちたか。
・・・そこまで命を取りに行くのは面倒ゆえ、生きて陣に戻れたら
伝えィ! いつかきっとまた会うぞ、とな!!
ナレ:
一方、
蜀軍に付いて行かなかった民たちを呼び集めて訓戒を与えていた。
司馬懿:敵を慕って漢中へ移っていった民達は我が魏の仁徳を知らぬのだ。
民あっての国だ。それは蜀でも魏でも変わらぬゆえ、お前達は先祖伝来
の地を動かず家業に精を出すがよい。
・・・ところで、
時、蜀軍はどれほどいて、城内に何か仕掛けがあったか?
民:へえ、あの時、城には二千あまりの兵しかおりませなんだ。
司馬懿:ッ!! ・・・では、
民:あれは
かったようでごぜえます。
わしらは
不思議に思っておりました。
司馬懿:そうか・・・、いや、よくわかった。
こちらにも色々と事情があったのでな。
民:へえ、ありがとうごぜえますだ。
司馬懿:・・・皆も下がってくれ。
【短い間】
た・・・!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナレ:その後、
要害の守りを固めた。
一方、
いた。
そこへ
えてその労をねぎらった。
趙雲:
諸葛亮:おお、
先に進ませ、自分は後に残って常に敵に当たり、これを退けてきたそう
な。
将軍のごとき人こそ、真の大将軍というものであろう。その労にむくい
て、将軍に黄金と絹を賞として贈ろう。
趙雲:いや、お待ちくだされ。
皆がこうして引き上げてきたからには、誰にも功績はありませぬ。
なのに、それがしだけが賞を
批判のもとになりかねませぬ。
それよりは、これから冬を迎えた時に、これらを皆に少しずつ分かち与え
てくだされ。さすれば兵達の心も温まり、敗北の傷も癒えましょう。
諸葛亮:そうか・・・将軍がそう言われるのならばそうしよう。まずはゆっくり
と体を休められよ。
趙雲:ははっ。
ナレ:
の義兄弟と同じくらい深く信頼し、重く用いていた事をあらためて思い返
すと同時に、
と強く感じた。
数日後、ついに意を決して軍法会議を開き、まず
諸葛亮:
よ。
王平:はっ。
入念なお指図もあり、細心の注意を払って事に臨むつもりでありました。
ところが
出しました。それがしは口を極めて
れませんでした。
そこへ魏軍が近づきつつある報が入りました為、それがしの隊のみ、
しかし、魏の大軍が迫った時、五千程度の兵力ではとても歯が立たず、
また山頂の本隊も水を絶たれて士気を失い、最後には半数あまりの降伏者
を出す結果となりました。
たものの、ここまで防御を崩されてしまっている状態では、ほとんどどう
することもできませんでした。
それ以後の悲惨な状況は、他の諸将へお聞き願いたく存じまする。
ただ、それがしは最後まで
てこの度の作戦に臨んだ事だけは、天地に誓って恥じるものではございま
せぬ。
諸葛亮:よし、下がれ。・・・・・・・
蜀部将:はっ。
諸葛亮:・・・
た。
それゆえ、
た。
街亭を守り通すことは、
とまで言ったはず。
しかし、
ついに取り返しのつかぬ事態を招いたのはいかなるわけか。
馬謖:面目次第も、ございませぬ・・・・・。
諸葛亮:
わ・・・。
馬謖:!!
では、誰があたっても防ぐことは難しいでしょう!
諸葛亮:だまれ!
彼は
ていた為、敵も
近づかなかったという。
それにひきかえ、
過ちをあえて犯しているではないか!
馬謖:ですがッ、兵法にも「高キニ拠リテ低キヲ視レバ、勢イ既ニ破竹」
とありますから・・・
(※たかきによりて ひくきをみれば、いきおい すでに はちく)
諸葛亮:【↑の語尾に被せるようにして】馬鹿者ッッ!!! なんたる
か・・・正に
させたその罪は重い。・・・
・・・
速やかに
馬謖:死罪は・・・覚悟しておりました。
正す事になるのでしたら、わたくしは死すともお恨みは致しませぬ。
・・・今まで
蒋エン:しばし待て。・・・
優れた者を斬るのは、国の損失ではありますまいか。
諸葛亮:
依ル」と。
(※かちを てんかにせいするものは ほうをもちうること あきらか
なるによる)
天下は三つに分かれて争い、人の道が乱れている時に、法を
して、何をもってこの世を正そうというのだ。
蒋エン:しかし、
諸葛亮:それに囚われる私情こそ大きな罪である。惜しむべき者であるからこ
そ、斬らなければならぬのだ。
・・・・・まだ斬らぬのか。早く、首を見せよ。
【間】
蜀部将:
諸葛亮:!!!
を・・・!!【号泣】
ナレ:蜀の
若さであったという。
首は各陣に
一人に至るまで士気を高めたという。
後世にいう、“泣いて馬謖を斬る”故事となったのである。
END
●あとがき
はいはいはいおはこんばんちわー、作者であります。
・・・まさか、自分が好きだとはいえ、友達との談議の果てに書く羽目になると
は思わなかった今日この頃です、ええ(;^ω^)
間違いなく初心者向けの台本ではないですね、ええ(;´Д`)
多分、台本的には蛇足となる部分が多いと思います。別にそこいらなくね?と思う場面も多いと思います。しかし、個人的には諸葛亮の空城の計と、趙雲の撤退
戦は必ず入れたいと思っていたのであえて書きました。原作ご存知の方は知って
いると思いますが、趙雲はこの戦いを最後に病に倒れ、帰らぬ人となってしまうのです。
なので、彼の最後の花道のつもりで書きました。(作者は趙雲、カク昭推しです、ええ。)
もしツイキャスやスカイプ、ディスコードで上演の際は良ければ声をかけていた
だければ聞きに参ります。録画・録音は残していただければ幸いです。
ではでは!
三国志演義・街亭の戦い~泣いて馬謖を斬る~ @KiriyaSion02
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