あなたにうちにいて欲しい

三枝 優

テレワークの情景

月曜の夕方17時。

定例会議にて。


「係長、お疲れ様です」

『お疲れ様、夕方の進捗会議を始めましょう。会議の録画します。それではプロジェクトの進捗を報告してください』

「はい、まず開発の状況ですが順調に進捗しています。ベースモジュールの設計は80%の進捗でオンスケジュールです。請負さんに作業してもらっている通信部分の設計ですが本日完了したとの連絡がありました。明日レビューする予定です」

『設計については順調ですね』

「はい、一方で顧客にて発生した不具合解析の方は行き詰っています。現在、通信内容の解析を進めているのですが弊社ソフトに関して問題らしい部分が見当たりません。他社部分で怪しいところがあり、調査中です」

『了解しました、今週中には解決しないといけない予定だけど・・その解析はいつまでに終わりそう?』

「今夜残業して終わらす予定です」

『残業?残業しないで何とかならない?』

「でも、あと少しのところまで来ているので切りの良いところまでやっておきたいんですよ」

『管理している立場としては、残業時間が増えるのは好ましくはないってことを理解してもらいたいね。今どきは、ワークライフバランスも重要なので』

「できるだけ早く終わらせるようにします」

『わかった・・・あまり遅くなるようであれば明日に回すように』

「はい、あと明日のレビューの資料も今夜中に読んでおきたいと思います」

『それこそ明日の午前中ではできない?』

「今夜のうちに読んでおいて、NG箇所は指摘しておきたいので・・」

『わかったけれど、深夜になはらないようにしてください。あまり長時間働くのは効率が悪くなるので良くないことですからね』

「了解しました」

『他に報告事項はありますか?』

「この不具合の原因がわからなかった場合、週末に休日出勤をしたいのですが」

『それは許可できない。その場合には私の方から顧客へ調整します』

「でも・・・」

『今月すでに1回休日出勤していたので、許可はできません』

「そうですか・・・」

『他にはありますか?』

「他はありません」

『それでは、会議を終了します。お疲れさまでした。録画を終了します』

「お疲れさまでした」


『それで・・・今から、そっちに行ってもいい?』

「でも、残業するって言ったじゃない」

『わかっているわよ。でも、ご飯作りに行くから。残業したらカップ麺で済まそうとするでしょ。ちゃんと栄養取らないと』

「う・・・わかった」

『それに、残業するのは良いけどあまり遅くならないようにしてほしいわ』

「うん、がんばるよ」

『それでね、明日はずっとそっちにいて良い?』

「だめだよ。うちはワンルームなんだから、音声で絶対ばれるって」

『じゃあ、ウチに来るのはどう?うちならばリビングと寝室でそれぞれ仕事できるわよ』

「えぇ・・・」

『うちでご飯作っておくわよ。どう・・?』

「わかったよ・・・今から行くよ」

『残業終わったら、一緒におうち時間を過ごしましょ』

「じゃあ、今から行くから切るね」

『うん、待ってるわね。・・・大好き』

「大好き。じゃあ、後でね」

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