夢
さて、聡明な読者なら疑問に思っているかもしれないことに答えようと思う。第2話で聞いた声についてだが、結論を言うと俺にもよくわからなかった。
あれからまたノイズの嵐となり声は何一つ聞こえなかったのだ。俺は思案した。誰かが送信したのは間違いないが、もしや誤信だった?そんなことあるのか…?わからない。何しろこの受信機は件のあいつの手作りなんだ。既成品の受信機もあるのかもしれんが仕組みも形も知らない以上なんとも言えなかった。
声に関してもあの一瞬だけであった、恐らく聞いたことのない人の声だったと思う。あいつの声ならすぐにわかる、忘れるわけないがない。
しばらく考えたがこれについていつまで考えても埒が明かないと感じ考えるのをやめた。それにもし誤送信でなければきっとまた何かメッセージを送ってくれるだろう。
それよりもだ、受信以外にももう一つ気になることが出来た。夢を見た。その内容のせいで実は気が気でない。誤魔化すために答えの無い受信の事を考えていたとも言える。しかし所詮は夢、簡単に語っていこうと思う。
あいつが、殺される夢だ。
その日、いつもなら暗くなる前に帰ってくるはずのあいつが帰ってこなかった。俺は不可解に思い、悩み抜いた末に外に探しに出た。夢の中の俺は本能に抗い、理性を持ってあいつを探しに出る事にしたんだ。
部屋から出ると、目の前は民家だらけ。灯りも何もない真っ暗な民家を路地も含め早足で歩く俺。部屋から出てそこまで大きな時間は経っていない時、目が暗闇になれてきた頃、その場所にあいつはいた。
何故かその場でうつ伏せに倒れていたんだ。俺は静かに近寄って、話し掛けた。
「大丈夫か…?体調が悪いのか?こんな所で寝てたら危ない、とりあえず部屋に戻ろう?」
そう言いながら触ったあいつの肩は…肩がなかった。
あいつは、そこで倒れていた。半身を失って。
俺はひたすら部屋に戻るために走った、嘘だと思った。こんなことありえない、あいつはいつも無事に帰ってきていた。だから、部屋に戻って待ってればあいつは帰ってくる。そう思って走った。
部屋の扉に手を掛けたとき、先程まで居た方角から大きな鳴き声が聞こえた。でも俺は、聞こえないふりをして部屋に入り鍵を締めた。
布団に潜り、ガクガクと震えながらあいつを待っているところで目が覚めた。
とても嫌な夢だった、妙に現実味を帯びていたしなにより恐ろしかった。俺はあんな光景を見たことは無いし、なにより部屋の外に出た事もない。
もしも…もしもあれが夢でなかったら…現実だったら…そう思うだけで不快な気持ちで満たされた。
「早く…早く帰ってこいよ…」
そう一人部屋でつぶやいた俺だった。
依然ノイズは鳴り響いていた。
化け猫の声を聞いたことはあるか フレイムハート @FLAME_HEART
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