混沌の隣人たちへ

 ひるのあかり様と言えば、書籍化された作品も含め、創作されるジャンルは激戦区の異世界モノです。

 人気ジャンル故に、似通った内容も散見される昨今ですが、ひるのあかり様の作品は本当に同じ人が書いているのか分からなくなるほど、作品毎に印象が激変するのです。
 さらに設定や舞台装置、概念や小道具の数々はいつもオリジナリティに溢れていて、読み進める度にワクワクします。
 自身では絶対に考え付かない、辿り着くことのできない領域だからこそ、ワクワクすることができるのでしょう。
 その体験を毎回、味わうことができるというのは、ただ単にファンだからというフィルターだけでは説明が付かない気がするのです。

 簡単に分析してみます。
 作品に共通する基本構成は、主人公と仲間が最強に向かって進んでいくという流れです。
 多様な設定は前述の通りですが、それと同時に人の営みに対し妥協しない姿勢が素晴らしいと感じます。衣食住をしっかりと描写するということですね、
 物語の中で、人々が生きているリアリティを容易くイメージできる為に没入感、感情移入が加速します。
 結果として、破天荒な世界を体感する、まさに「読む仮想現実」と言える作品群に思えるのです。

 さて、本作「カオスネイバー(s)」も異世界モノであり主人公最強モノであります。
 序盤はダークファンタジーのような印象を抱きつつ、読み手には厳しい世界観を植え付けられます。
 この「無理ゲー感」「絶望感」に対し、どんなカタルシスに至るのか、主人公はどんな手法で成長を遂げるのか、そしてどんな仲間と共に歩むのか、否が応でも期待感が膨らみます。

 ただ、全般的に見れば王道的な展開なのでしょうが、そこに至る道のりが全く予想できません。
 どうすればそんな発想が沸きあがるのか、なぜそんな敵が、倒し方が思いつくのか、想像の埒外を常時体感する羽目になります。

 作者様は時折り、自作品について「迷作劇場」と評されます。
 ご自身が迷われているのか、読者を迷わせているのか、作品自体を迷路のように構成しているのか、本当の意味は定かではありません。
 ですが、ある種「混沌」にも近い作品に寄り添うことのできる「隣人」であることを改めて再確認できた作品でもありました。

 さて、前作の完結後も「ひるのあかりロス」に悩まされましたが、今回もまた過去作を巡回して、次の冒険の準備を整えておこうと思います。