寺田勇気の戦い~白黒学園R特待生~

僕に才能はない

第1話僕は1年A組の高校生

「ゆうき。ご飯できているよ~」

 はいはいとベッドから起き上がると窓ガラスから朝日はさしている。高校に入学の日だろうと相変わらず太陽は元気だ。

 「いただきます」「いただきます!!」

 家族はみな朝から機嫌がいい。妹は特に朝からとても元気で箸が早く進んでいる。あんな高校に行けるなんてすごいことじゃん、と言って昨日は寝る前まで騒いでいた。僕が今日から通う白黒(しろくろ)学園高等学校は高偏差値かつ入学者募集人数が極端に少ないことからエリート高校としても全国的に有名なのだ。

 「こんな朝迎えられて最高だね」と母は誇らしげに言う。やはり息子の出来がいいと嬉しいのだろう。反して父は既に着替えた服を汚さないようにいつも以上に丁寧に朝食を食べている。

 「そんなことよりみんな早く食べなさい。まだ着替えていないんだから」

 「はーい!!」妹と母は声を揃えて返事をして急いでかきこむ。

 黒い服に着替えた家族は朝から元気だ。


 体育館で行われた入学式を終えると家族は全員家に帰った。

「じゃあね」

家族全員にそういうと、僕は事前に配られていたプリントに書いてあった通り自分のクラスの教室に向かおうと体育館を出た。

 外に出ると広い敷地に再び驚かせられる。自転車があったほうが便利ではないだろうか。学校の敷地には高校だというのに校舎が10棟ほどある。3学年が使うだけでは持て余してしまいそういだ。事前に渡されていた『本校地図』から1年1組が位置するA棟に向かおうと歩き始めた。


 「ねえ君!」


 背後から肩を叩く声の主はおじさんだった。3~40代のおじさん。眼鏡をかけたヒョロヒョロ。印象からは数学の先生だと予想した。

 「君は……寺田君だよね?寺田勇気君」顔をバインダーにとても近づけ確認しながら尋ねてくる。

 「そうです。なにか」声をかけた後も何度もバインダーと俺の顔を見合わせるものだから少し苛ついてしまって失礼な合図になってしまった。気にし過ぎか。僕は通常運転の顔をして数学教師(仮)の答えを待った。

 「じゃあ来てくれる」そういうと俺に何も言わず背を向けて歩き出してしまった。向かっていたA棟とは反対の方向へ歩き出したので、何のために声をかけられたかと何度も質問するが足を止めないでズンズンと進んでいく。彼の背中に続き歩き続けていくと『本校地図』に何も記載されていないスペースにたどり着き急に足を止め、こちらを振り返った。

 「誰にも見られていないか」バインダーと俺を交互に見ていた時とはどこか違う。眼鏡の奥からの鋭い眼光に驚き思わず頷くと、納得したのかしゃがんで地面に触れだした。地面の砂を山を作るように1つに集めていき、小さな山が出来上がると小声で地面に向かって呟きだした。

 「OK行こうか」

       ゴゴゴゴゴゴゴ   

 地面が割れてないはずの地下へ続く階段が現れた。

 「ようこそR特待生の寺田君。ここが君の教室1年A組です」と眼鏡の男は言う。

 俺の学生生活は思わぬ形で始まった。

 

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