第38話

 大変勝手ながら友人キャラとして登場した本間明は本間けいへと名前を変更させていただきました。なぜ同じ名前を使っていることにずっと気付かなかったのだろう……

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 時が過ぎるのは早いもので、文化祭まで残すところあと一週間となった。放課後に行っていた準備も終わり、接客に不安のある人達だけが居残り練習をする中、俺は紅愛とカラオケに来ていた。


「ここがカラオケ……初めて来ました」


 俺の隣に座り、物珍しげに部屋の中を見渡す紅愛。


「ふふっ、また一つ蒼太くんに初めてを奪われてしまいました」

「っ!」


 そう言って紅愛が微笑む。その微笑みと発言にドキリとするが、いつまでもやられっぱなしの俺ではない。


「んんっ!……ふぅ…これからもどんどん奪ってくから」

「あら、それは楽しみです。うふふ、次はどんな初めてを奪ってくれるのでしょうか」

「……」


 駄目だ。顔が赤くなっていくのを感じる。対して紅愛は余裕たっぷりといった表情。この余裕を崩せる日は果たして来るのだろうか。


「そ、それよりせっかく来たんだし歌おっか。マイクの音量とか調節するからその間に曲入れてて」


 耐えきれなくなった俺は曲を入れるための機器を紅愛に渡してからマイクを手に持ち、軽く声を出しながらエコーや音量の調整を行う。


「何を歌おうか悩みますね」

「紅愛が歌いたいと思ったのを入れてけばいいんだよ」

「歌いたい曲……ではこれで」


 少しして紅愛が入れたのは一年ほど前に流行ったラブソングだった。家事をしている時に時々口ずさんでいたのでこのチョイスは納得だ。

 マイクを構え、歌い始める紅愛。大抵の事は何でも人並み以上に出来る紅愛は歌もその例に漏れず上手い。美しく澄んだ歌声は素晴らしいの一言に尽き、歌詞に合わせた抑揚も相まって聴き入ってしまうレベルに達している。


「……ふぅ」


 四分半ほどの歌を歌い終わった紅愛に声をかける。


「すごく上手だったよ」

「うふふ、ありがとうございます」


 映し出された採点結果を見れば、驚きの97点。上手いとは思ってたけどまさかこれ程とは。


「次は蒼太くんの番ですね。蒼太くんって家でも全然歌いませんしちゃんと聞くのは初めてですからすごく楽しみです」


 紅愛から向けられる期待の眼差し。その期待に出来るだけ応えたいなと思いながら俺はマイクを手に取って歌い始めた。




 約五分の歌を歌い終わると、紅愛が拍手をしてくれた。


「すごくかっこよかったです!やはり蒼太くんは声質的にも疾走感のある歌がよく合ってますね。いつまでも聞いていたくなるくらい素晴らしかったです。それに歌っている時の横顔も言葉では表現出来ないほど良かったです。それにそれに…………あっ」


 頬を紅潮させ、興奮気味に感想を伝えてくる紅愛。次から次へと溢れてくる俺への感想を嬉しく思いながらも流石に恥ずかしくなってきたので、抱きしめることで強制的に終わらせる。


「す、すみません///蒼太くんの歌があまりにも良くてつい興奮して」

「そこまで喜んでもらえたなら一生懸命歌った甲斐があったよ」


 しばらく抱きしめ、紅愛が落ち着いたタイミングで体を離す。


「あの…蒼太くん」

「どうしたの?」

「次の曲なんですど、一緒にこの曲を歌いませんか?」

「いいね。一緒に歌おっか」


 紅愛からのデュエットの誘い。知ってる曲だし断る理由もないので受け入れる。

 それから二時間ほど歌ってから俺達はカラオケを終えて帰宅した。





「初めてのカラオケはどうだった?」

「とても楽しかったです。周りを気にせず歌えるってすごく気持ちがいいんですね」


 寝支度を調えた俺達はベッドの縁に腰掛けて今日のカラオケを振り返っていた。


「じゃあまた今度一緒に行く?」

「はい、行きたいです」


 そこで会話は途切れ、しばらく沈黙が続く。その間に紅愛が近づいて身体を密着させてきた。どうしたのかなと思って紅愛の方を見ると、紅愛もこちらを向いており目が合った。


「……ねぇ蒼太くん、しませんか?♡」


 そのままじっと見つめ合っていると艷っぽい表情を浮かべて誘ってきた。その言葉が何を指しているのか分からないほど鈍感ではない。何が原因かは分からないがどうやら俺は紅愛のやる気を刺激してしまったらしい。

 ただ明日も学校はあるし流石に控えた方が良いだろう、そう判断した俺は鋼の意思で紅愛を止める。


「明日学校だよ?」

「一回だけでもいいので……駄目でしょうか?」

「うぐっ」


 しかし、紅愛は上目遣いで対抗してくる。


「一回で我慢しますから……ね?」

「わ、分かった。でも一回で終わり。それ以上は明日に響くし駄目だからね」

「はいっ!ん……♡」


 上目遣いに屈した俺は紅愛をベッドへと押し倒した。

 なお、この後紅愛が我慢できずに俺を誘惑してきて結局四回戦までしてしまうのはまた別の話である。

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俺を好きすぎる彼女はヤンデレ匂いフェチ おひとり @ohitori

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