あとがき
拙作、『Pirates of the sky Great beginning』最後までお読みいただきありがとうございました。
本作は私の目下のところのライフワークとなっております『月桃館五〇三号室の男』シリーズと同じ世界観で展開しておりまして、同シリーズの24年ほど前を舞台としております。
主人公は、かつて世界の三分の一を支配する『アキツ諸侯連邦帝国』との戦いに、小さな飛行艦を駆って身を投じた『神聖王国連合』に所属する空軍の将校。
数々の武勲を立てながらも、終戦と同時に人員整理により軍を追い出され、おまけに不況のお陰で年金まで打ち切られ、さらに二人の息子も勤め先が解散したり奨学金の貸しはがしに有ったりと、お先真っ暗な状況に叩き落とされます。
そして、追い詰められた一家が生き残る術として選んだのが、軍から押し付けられた小型飛行船に乗って、空行く貨物船や客船を襲い積み荷や金品を奪う事。つまり空賊家業を始める事でした。
妻に先立たれたり妻子に逃げられたりしたかつての部下に声をかけ一味を結成、月賦で武器をそろえ、土地や家を売り飛ばし船を整備し、古びたシーツの髑髏の旗を掲げて大空に舞い上がった『人類最初の空賊』の先に待つ者は??
と言った中身の物語で、ふつう空賊と言いますと『天空の城ラピュタ』のドーラ一家や『紅の豚』の空賊連合やマンマユート団みたいなコミカルながら浪漫を感じさせるものや、スチームパンクやファンタジーのカッコイイのが一般的でしょうが、そう言う既存の空賊像じゃぁ面白くないと思いまして、暮らしに困って悪事に手を出したかなり寂しくみじめで生々しい『リアル系』かな?って感じの空賊を搭乗させました。
如何でしたでしょうか???
当然ながら『生活が苦しくなったから犯罪をしてもかまわないんだ』なんてこれっぽっちも考えていません。けど、国が国民を守る義務を怠れば、こういう考え方をする人々が必ず出てくると思います。良い悪いにかかわらずです。
こう言う人々を出さないのも国の仕事だと思います。けど、この物語の世界にある多くの国々はそう言う仕事を怠っている国ばかりなので、空賊を空に舞い上がらせてしまったと言う訳です。(まぁ、我々の世界で言うと概ね1910年から20年代くらいの雰囲気を持つ世界なんで、人権とか社会保障とか言う概念が薄いのは当然ですが)
あと、まぁ、わざわざ断る必要は無いかと思いますが、念のために申し上げますと、本作における重要アイテムである『飛行船』についてですが、全く科学考証を無視していることをご留意ください。
この飛行船の浮力源になっている『浮素』なる元素は当然存在しておりませんし、飛行船の操作方法も航空力学や航空工学に全然沿ったものではありません。
完全無欠最初から最後までデタラメです。鋼鉄の塊を浮かす為に『反重力物質』なんて言葉を使いたくなく、そのくせ可能な限り泥臭い技術体系で船を浮かせたいと考えた末のデタラメです。
何卒、平に、平にご容赦くださいませ。
と、言いつつジョユス・オトゥナー率いる『キカヅチ空賊団』から始まった空賊という新しい犯罪は、これ以降二つの大戦を経てさらに蔓延ることになります。
まさに本作の物語はタイトル通り、空賊の大いなる始まりの物語でもあります。
その『空賊時代』とも言うべき、この物語の未来の姿も描きたくただ今構想しております。
その際は、本作よりももっとワクワクドキドキハラハラ系のお話にする予定でアリマス。
もし、本作をお気に入りいただけたら、次回の空賊物語もお楽しみにしていてください。
Pirates of the sky Great beginning 山極 由磨 @yuumayamagiwa
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