6
ワッチ(見張り)が明け、ダラルに操縦席を譲る。すれ違う時彼はジョユスの肩を叩き「最初の殺しはきつかったでしょう。息子さんを慰めてやってください」
それにはただ頷いて答える。
キャビンに入ると、アマンデがウイスキーの瓶とグラスを出して待っていた。
小さなグラスに琥珀色の液体を注ぐと、だまって彼に差し出す。「すまん」と言って受け取り一気に飲み干した。グラスをテーブルに置くと、彼女はまた注いでくれる。
「息子を、人殺しにしてしまった」ジョユスはため息の様につぶやいた。アマンデの肉付きの良い手が彼の肩に置かれる。
人の気配がして顔を上げると、ディリックとヌーナクが硬い表情で立っていた。
「船長」ディリックが呼びかけるとジョユスは「親父で良い」
「じゃぁ、親父。俺、腹括ったよ。今まで括って無かったわけじゃないけさ、でも、今日で完全に吹っ切れた。もう後戻りできねぇ」
そう昏い目で言うディリックを潤んだ眼で見つめた後ヌーナクも。
「俺もです、船長。最初は奴隷に成るのが嫌でみんなについて来ただけでしたけど、獣人の俺の命を守る為に、ディリックの兄貴は人殺しまでしてくれたんです。俺はもう一生『イカヅチ空賊団』の一員です」
ジョユスは立ち上がり、二人肩を両脇に寄せ抱きしめる。アマンデのすすり泣く声が聞こえる。肩に右舷銃座から降りて来たアルネスの手のぬくもりを感じる。いつの間にか起きていたアバルはキャビンの隅に佇み、優しく寂しそうに笑い自分の眼鏡を直す。
船橋からのダラルの声が伝声管から響いた。
「水平線から太陽が出ました。夜が明けです。一日の始まりですよ」
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます