第7話
週末の休みになった。
私達は今、ジェームズ・ラント先生のサイン会の行われる会場に来ている。
「リコリス無理言って済まなかったわね」
「いえ。ですがわざわざ当家のヘリまで使って貴重な休日にここまで来た理由をそろそろ教えて頂けませんこと?」
「ふふふ。リコリス貴女サプライズはお好き?」
「え?はっ!まさか!わたくし達の為にジェームズ先生を呼んで下さったの!?」
「私にそこまでの権力も人脈もありませんわ」
「なんだ、ガッカリ」
「でも、サイン会当日に会わせてあげる事は可能よ」
「はっ!まさか!ならば今日はおサボりの前準備、下見と言う奴ですわね!」
「まあ、当たらずとも遠からずかしら。当日は学院をおサボりすること無くジェームズ先生にサインを頂きに来れますわ」
「まあ!素敵!」
「ここでいいかしら」
座標を確認してチェックポイントを決める。
「置換するならこの銅像かしら」
銅像に触って確認する。
「何をなさっているの?」
「仕込みですわ。細工はりゅうりゅう後は仕上げを御覧じろですわね。さて、時間もまだある事ですし街を散策いたしませんこと?」
「そうですわね。時間的にお昼を頂いてもよろしいのでは?」
「そうですわね。何処が良いでしょう?」
こうして、私達は隣の州の街を散策しつつ美味しいご飯を食べ4日後のサイン会に気持ちを馳せるのでした。
◇
当日。
「それでは私は時間の30分前に気分が悪くなる予定ですのでリコリスは私の付き添いで教室を出ますわよ」
「ふふふ。楽しみですわね」
◇
「ううっ」
「大丈夫?アリーシャ?先生!アリーシャが気分悪そうなので保健室に付き添いますわ」
「大丈夫ですか?マルベール?」
「はい。先生、少し休めば問題ないかと」
「辛いようでしたら早退されてもいいですからね」
「ありがとうございます」
「行きましょう。アリーシャ」
「ごめんなさい。リコリス」
こうして私達は教室の抜け出しに成功したのだった。
◇
体育館倉庫に来た私達は周りを確認して扉を閉めた。
「それで、どうしますの?サイン会まで後20分もありませんのよ!」
「慌てないでリコリス。私の手を握って」
「え?ええ、はい」
両手で恋人繋ぎをする。
「そうしたら、目を瞑って」
「え?ええ」
そして目を瞑った事を確認すると意気揚々と4次元構築式を発動させる。
目標は週末チェックポイントをつけた座標。
即座に銅像と私達の場所が置換される。
「あ、アリーシャ。何だかわたくしドキドキしますわ。わたくしアリーシャから口付けを頂けるのかしら?」
「何を言っているの?リコリス。私、そのような趣味はありませんよ。それより目を開けてリコリス」
ゆっくり目を開けるリコリス。
「まあ!」
そこは4日前に訪れたあの会場だった。
「リコリス!早く列に並びましょう!」
「ええ!」
2人で新刊を手にサイン会の列へ。
「おや?こんな可愛いお嬢さんにも作品を愛して貰えるなんて光栄ですね」
「まあ!ジェームズ先生ったらお上手ですわ」
「アリーシャ狡いですわ」
「おや、そちらも随分と可愛らしい」
「いやですわ。ジェームズ先生ったら!本当にお上手です事」
その後は何事も無くサインを貰い、握手までして貰って2人のテンションはアゲアゲMAXだった。
◇
「では帰りましょうか」
「そうですわね」
基の座標に戻りまた4次元構築式を展開させる。
目を開けたリコリスに急に抱きつかれて(*´³`*) ㄘゅぅ💕された。
私もテンションアゲアゲMAXだったので٩(*˘ ³˘)۶ちゅぅ~❤し返した。
「ハアハア」
「ハアハア」
冷静になった2人は顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。
「あ、あのリコリス?」
「は、はい!な、何?アリーシャ?」
「えーと」
「う、うん」
お互い無かったことにしようと考え声をかけようとするとリコリスに声を掛けられた。
「アーシャ!」
「ふえ!?な、何?」
「あ、あのわたくし達って親友ですわよね?」
「そ、そうね」
そう言われて、まさか4次元構築式の話を聞かれるかと身構えたら
「わたくしの事はリコって呼んで下さいな!」
「ふえ!?」
「わたくしもアリーシャの事、アーシャって呼ぶわ」
それは家族や恋人にしか呼ばせない愛称。
「し、親友だからですよわよね」
「し、親友だからですわ!」
2人して顔を赤らめ、また互いに俯いてしまった。
「も、戻りましょうか」
「そ、そうですわね」
こうして何事もなく私達は教室に戻ったのでした。
こんなの私にどうしろと? no.name @fk2310
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