第6話

「ア、アリーシャ!つ、ついに、手に入れてしまいましたわ」


「なんですの?リコリス。おはようございます」


「おはようございます。ではないのですわ!」


 アリーシャはリコリスに朝の教室で開口一番にキス出来るくらいの距離まで近寄って宣わった。


「ち、近い」


「はっ!ごめんあそばせ。ではなくコレ!コレですわ!」


「え?なんですの?」


 リコリスの手に握られていたのは2枚のチケットの様だ。

 ぐしゃぐしゃに握られてるので内容は分からないが。


「サイン会の当選券ですわ!」


「サイン会?」


「ジェームズ・ラント先生のサイン会ですわ!」


 ガタタッ!!!


「何ですって!!」


 ジェームズ・ラント先生とは、あの累計販売数35万部を叩き出したロージア・ラピッツの作者である。


「ワタクシやりましたわ!あの競争率が高い上に、中々表舞台に出られないジェームズ先生のサイン会に見事当選しましたのよ!しかも2枚ですわ!」


「え?あ?まって!リコリス様!もしかしたら、もしかして、もしかしなくても慈悲深きリコリス様はこんな私にもチャンスを与えて頂けると仰って下さっているの?」


「ふふふ、勿論。モチロン!モチのロンですわ!」


「嗚呼、貴女様は女神でしょうか!?」


「ふふふ、アリーシャは親友ですもの!当然ですわ!」


「嗚呼、女神様!リコリス様!」


 ガシッとリコリスの両の手を覆う様に手を握る。


「それで!何時ですの?場所は?時間は?」


「慌てなくてもサイン会は逃げませんわよ!このチケットに書いてあ……」


 2人でチケットの日付を見ると1週間後で場所はサンモルトの駅前本屋。時間は午前10時とある。


「リコリス様?これ平日ですわね」


「そ、そうね」


「時間も午前中ですわね」


「そ、そうですわね」


「場所はお隣の州の首都ですわね」


「そ、それがなんですの!ファンであるならどんな障害も乗り越えられますわ!」


 なるほど、我が親友殿は学院をサボる気満々な上にお泊まりまで敢行しようとしてらっしゃるのね。

 その心意気や良し!


 ならば、ここは私が一肌脱ぐべきターンですわね。


「リコリス、聞いて。私に考えがあるのその為の仕掛けを組みたいから協力して頂戴。上手く行けば誰にも咎められる事なく生ジェームズ先生とサインをGET出来るはずよ」


「アリーシャ!そんな奇跡みたいな事が出来ますの!?」


「やってやれない事はないわ!リコリス私を信じてくれる?」


「勿論よ!貴女を信じず誰を信じるというの!」


「ありがとうリコリス。私、貴女の親友で良かった」


「アリーシャ!」


 こうして、私達の危険なお忍びサインGET&生ジェームズ先生を見てキャーキャー言おう計画が発動したのだった。


 そして、気合いを入れて声に出す。



「今度のお休みの日が肝ね。決して失敗は許されないわ!」

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