第5話
あれから1ヶ月程経ち、私にも仲の良い友達が出来た。
「アリーシャ。御機嫌よう」
「リコリス。御機嫌よう」
リコリスは同じ伯爵家のご令嬢であちこちに出来ている派閥にウンザリしていた私に共感してくれた数少ないご令嬢だった。
「そう言えば、ロジ・ラピの新刊ご覧になりました?」
「はい!今回のお話もとても楽しめましたわ!特にロージアがアルフォ様と手を繋いで駆け抜けるシーンはドキドキしてしまいました」
「ですわね!ですわね!」
因みにロジ・ラピとはロージア・ラピッツの迷走という題名のシリーズ化したラブロマンスミステリー小説である。
ヒロインのロージアが幼馴染みの青年アルフォととある事件に巻き込まれ独自の感性と機転で真相に迫る物語で、この事件を根幹として大小様々な問題を2人で乗り越えて行く。
その中で芽生えていく2人の恋愛感情。
しかし、素直になれない2人の焦れ焦れ感が続き、前回の刊では私立探偵業を立ち上げた主人公アルフォに助手として付いてきたロージアが拐われる事件が起き終了していた。
なので、今回の新刊は非常に待ち遠しかったのだ。
ロージアは危機に瀕しながらも脱出計画を練り、隙を付いて逃げ出すも後一歩の所で追い詰められてしまう。
もうダメだと「助けてアルフォ」と呟いたその時、そこに颯爽と現れるアルフォ。
アルフォも犯人からの要求から犯人像をトレースし最近の出来事や噂話から犯人を特定していた。
監禁されている場所を犯人とトレースして突き止め、更にロージアの思考と行動力もトレースし、ロージアを発見していた。
降りしきる雨の中2人手を繋ぎ、追ってから逃げる途中にロージアから聞かされた脱出計画を練り直し、逆に首謀者を出し抜き、罠に嵌める思考の柔軟性をみせるアルフォ。
首謀者を罠に嵌め捕らえた時に放ったあのアルフォのセリフが痺れる。
「お前のミスは俺のロージアに手を出したことだ。俺とロージアが組めば暴けない犯罪は1つもないんだよ!」
「きゃぁぁぁ〜!痺れますわ!アルフォ様!」
「ヤバいですわね!もう良いから2人早く結婚しろって感じですわ!」
「そうですわね!そうですわね!」
こんな他愛のない何気無い日常が何時までも続けばいいと最近ことある事に感じてしまう。
お祖母様はこの1ヶ月、毎日4次元構築式関連の宿題を出してくる。
それは思考の柔軟性の強化と可能性の扉を閉じない為に必要な事なのだそうだ。
凝り固まる思考は4次元構築式に歪みを生じさせ暴発させる危険があるそうで…。
お祖母様。
どうして今それ言った…。
柔軟な思考は幼年期が一番鍛えられるのは確か何だけど、こんなの私にどうしろと…。
本当にトホホだよ。
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