後編
いつもの様に他愛も無い与太話をしている中で、僕はどうにも遠距離恋愛(?)にもどかしさを覚えていました。
ある程度仲良くなったは良いけども、顔を合わせたのは一度切り。声は毎日聞けるけど、手を握る事もできません。
ある日冗談半分、駄目で元々の気持ちで言ってみました。
「一回
彼女は社会人です。急な休みなど取れる訳が無い、手紙や電話は何度もしているものの、一度しか会った事のない男性に誘われて、1000km彼方にまでやってくる女性が一体どれだけいるでしょう?
正直「いやそれはちょっと…」と100%断られるつもりでいたのですが、意外な事に彼女の答えは「横浜で行きたいイベントがあるから行きたいな」でした。
予想外の結果に僕も浮足立ちました。某炎柱ではありませんがよもやよもやであります。
慌てて当日の予定を組み上げたり、横浜中華街でのオススメの店を父親に聞いて生暖かい目で見られたりしました。
そして初デート当日、しとしと降る雨の中(別エッセイに書きましたが妻は雨女です)、彼女に連れられて行ったそこそこ大きな会場で催されていたイベントは、何やらスピリチュアル系の展覧即売会でした。
そういう趣味の子だと知ってはいましたが、ちょっと会場の空気に飲まれてしまったのは事実です。パワーストーンなどはまだ分かるのですが、『オーラ測定器』って何だよ? みたいな。
折角なので2人でオーラを測ってもらいました。どの様な仕組みなのか説明してもらったのですが、ついぞ理解出来ませんでした。ちなみに彼女は青色の光が体を薄く覆っている感じ、僕は黄色い光が体全体を広く覆っている感じでした。
係の人
その後は中華街で(かなり)遅いお昼ご飯を食べ、夕方過ぎに彼女をホテルに送っていきました。
初デートですからね。あくまで紳士的につとめ、いやらしい事なんてするつもりはありませんでしたよ。
…ありませんでしたが、別れ際の彼女の淋しそうな顔に応えずして何が男か?! という事で「何も無かった事もない」程度のイベントが有りましたが、ここは敢えて割愛させていただきます。
その後彼女は月イチペースで東京に泊りがけで来る事になります。
少しずつ、少しずつ仲良くなっていき、遂には僕のプロポーズに応えてくれました。
そして結婚して、子供が生まれてバタバタし続けて… 気が付けば20年です。
インターネットがまだ遠い存在だった時代、『インターネットで知り合って結ばれるネット婚』なんて概念すら無かった頃のネット(ゲーム)婚のお話でした。
冒頭に書いた通り、上記の事柄はもう20年以上も前の事です。細かい部分は記憶の齟齬があるかも知れませんが、極力脚色は避けています。
なにより現在までの毎日の積み重ねが、古い記憶をどんどん上書きしていきます。嬉しくもあり寂しくもあり、です。
なによりこんないい加減な性格の僕と結婚してくれて、現在まで夫婦を続けてくれている妻に一言「ありがとう」と言いたくてこの話を書きました。
妻よ、これまで苦労させてばかりのダメな夫でゴメン、加えて言うならこれからも苦労掛け続けると思う、覚悟してくれ。
でもお前がいたから今まで頑張ってこれたし、これからも頑張れると思う。
ありがとう。これからの人生もよろしくな。
元祖ネット婚ってやつを教えてやる! ちありや @chialiya
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