元祖ネット婚ってやつを教えてやる!
ちありや
前編
僕が妻と知り会ったのは今から20年以上前、当時ネットゲーム(ネットワークゲーム)と呼ばれるゲーム上でした。
今では
そのゲームはライター毎に作られたシナリオにそって状況が提示されます。それに対して『自分のキャラは〇〇を行う』というアクションを書いて郵送し、翌月に10〜20名程の行動結果をまとめた小説(用紙数枚)が運営から送られてきて、また更にその小説を元にして来月の行動を決める、それを約1年繰り返して大きなストーリーを作り上げる、というゲームです。
今にして思えば煩雑極まりないシステムです。しかし当時はそれが最先端でした。なにより全国の人達とTRPGの様に協力したり対立しながら、みんなで1つの物語を作る、というカタルシスがありました。
当時はインターネットも整備されておらず、遠方の人と連絡を取る手段は主に手紙でした。
毎月送られてくる小説の末尾には、その回に参加したプレイヤーの連絡先一覧が表示されます(これは勿論非公開にする事も出来ますし、運営を通じて手紙を転送する事もできました)。
その中で自分のキャラと目的を同じくする人や、同じ組織に割り振られた他のプレイヤーさんに直接手紙を出して交流する事が出来たのです。
ある時、私のキャラは組織より『とある任務』を与えられて某地方(のシナリオ)に移動しました。
そこで懇意になった『村の青年団』的な組織の中に妻(のキャラ)が居たのです。
私が主に連絡を取り合ったのは青年団長的な立場の人でしたが、妻のキャラとも相談して『お互いの目的の為に』協力しあったりしてました。
やがてそのゲームも満了し、運営によるファイナルイベントが静岡県で開かれました。それに妻も参加すると言うではありませんか。
僕にとって彼女はまだ、『名前から女性とは知っていたが、それ以外は顔も年齢も知らない九州在住のTさん』でしかありませんでした。
まぁその場ではお互い顔合わせをして、「次のシナリオでも一緒にできたら良いね」みたいな話をしただけな気がします。お互いにシナリオ担当したゲームマスターさんや、青年団長さんともお話したかったですし。
そして数ヶ月後、新たなシナリオの開始と共に僕と妻のキャラは最初から共同戦線を張ります。毎月「〇〇がしたい」「□□が怪しい」等と文通しながら行動を決めます。
手紙のやり取りもそれはそれで楽しいのですが、なにぶん『まだるっこしい』のが欠点です。
そこで僕は思い切って電話でのやり取りを持ちかけます。妙齢の女性に電話番号を聞くなんて、当時の僕にしては頑張ったものです。
当時は携帯電話の普及率も低く、女子に電話する時は相手の父親から「娘とはどの様な関係で?」とか聞かれるのがデフォでしたから。
しかし、彼女は僕が拍子抜けするくらいあっさりと電話番号を教えてくれました。というのも彼女はすでに独立してひとり暮らしをしており、『お父さんバリア』を最初から無視できたのです。
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