第8話 次の高みへ..

 「手応えは?」

 「あるわけないじゃん、コイツの能力って自分の遊びを具現化するだけで創る力じゃないんだよねー。」

 瀕死の男を屁とも思っていない態度がノアという青年の本質を物語る。


「帰ろうよヴェイジャア、もう疲れちゃった。

今日は量が多めのカレーが食べたいな」


「かしこまりました。食材はしっかりと常備しております」

一方的にゲームを終え、帰路につこうと立ち去る二人。真の目的な後回し、空腹に先送りされ二の次とされる。


「待てよ!」「アトム?」

大きな声で呼び止める。決死で挑んだ過酷なゲームが、こんな形で終わるのが許せなかったのだ。仮にもここは馴染みの遊び場、支配されていたとしても形は変わらない。


「…なに?」


「お前の欲しいのは俺だよな、だったら殺していけよ。ピエ郎じゃ期待外れだったんだろ?それとも怖いかよ、俺の力が!」


「…挑発してるつもりかな、そっちの方が余裕なく見えるけど。..まぁいいや、かかって来なよ、どーせ嫌がってもダメだろうし」

まんまと乗って足を止めた、というよりは面倒事を処理して満足したいという思いか。

全ては後に待ち構えるカレーの為だ


「アイツ、思ったよりものわかりいいわね..」


「馬鹿な男だ。せっかく情けをかけたのに、自ら死に向かうなんてな。」

ノアにとってはメリットしかない。欲しいものが手に入り、煩わしさも消える。一石を投じるだけで幾千もの鳥が羽ばたきをきかせる


「でかい傷残してやる..!」

右腕を大刀に変形、ノアに斬りかかる。


「剣かぁ..ならコレかな?」

ピエ郎から奪ったであろうナイフを取り出し箱に入れ、大きな薙刀を生成する。


「これで終わりっ..と」「うおっ、マジか!」

跳び上がり振りかぶるアトムに容赦なく振るわれ大刀を見事に破壊する。


「ぐあっ!」「アトム!」

勢いよく床へ落下したアトムの腕は半分近く削られ、大きく振られた薙刀の刃により腹にも深い傷を負っていた。


「じゃあね〜。

..てか神器壊れてるじゃん、やりすぎたー」


「身の程知らずが、恥を知れ」


「待ちなさいアンタたち!」

悶えるアトムの傍で怒鳴りをきかすくげ。


「なにさ。

アンタも死にたいってワケ?」


「アトムの神器が目的なんでしょ?

なんで壊す必要があるの、やりすぎでしょ!」


「なんだ、ただの心配か。

まだ時期じゃないってだけでしょ、また後で遭おうよ。神の城、ユグドラシルでさ」

足元の石ころを蹴り上げ掴み、アトムの頭目掛けて投げぶつける。ただでさえ瀕死のアトムは衝撃により気を失い、完全に目を閉じる。


「アトムッ!」


「いずれ刻が来ればわかる、それまで寝てて」

そう言い残し、二人は何処かへ消えていく


「アトム..アナタは私が治すわ!」

傷付いた身体に手をかざす。眩い光が、アトムを包み世界へ導く。


               第一部・完

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