二人暮らし

彼女、幽霊となってしまった彼女は自分が死んでしまった理由が分からないらしい、その代わり男に対する強烈な怨念と憎しみだけはとてつもなくあるらしい。

私と幽霊ちゃんはあの日、色々な話をして盛り上がった、幽霊ちゃんは筆談だったけど、書くスピードが早くて筆談なのに会話が成立してしまっていた。

幽霊ちゃんがあの動画に出て来てしまったのは、数日前から私の部屋に住み着いていた幽霊ちゃんが。


『いやちょっと幽霊ちゃん!それ貴方も不法浸入じゃん!』

『チ、チガウ、私がファンになったのはここに住んでたから貴方の撮影を沢山見たからで』


私が問いただすと、顔を真っ赤にしてこう弁明していた。

話を戻すと、あのインチキストーカーが何度も部屋に入ってくる所を目撃し、最初は彼氏かとも思ったが私の下着を物色していた事から、ストーカーだと思い、生配信中ならストーカーが見てると確信し、警告の意味を込めてあんな血走った目で出演してしまったらしい。

そして生配信の日の夜、私が金縛りにあったあの夜の事を聞くと、どうやら幽霊ちゃんが私の顔を見て興奮しすぎた結果、幽霊ちゃんの霊力的なものが私に流れてしまい、という事だった。


『でもこの家に暫く住んでたんでしょ?なら今さら顔見たってどうもしない筈じゃない?』

『確かに2週間前から住んでたけど、あの時はあんまり顔合わせないようにベッドの下にいたから』


余計怖いわ!


そしてあの男、インチキストーカーだが、なんとあの日彼女は、私のカメラを操作し現場を録画してくれていたのだ、そしてそれが証拠となりあの男は逮捕された、余罪はまだまだあるらしく、ざまぁみろといった感じだ。


そして私は。


『どうも、オヒトリチャンネルのレナです』


その日は配信ではなく編集した動画を出した。私の恐怖体験を語るだけの動画、同業者に同じ目にあってほしくないという気持ちもあるが、それ以上にこれは面白いものになると思ったから。


『ご覧頂いた映像は、フィクションではなく実際に起きた事です、人との接触が最小限の今、私も警戒すべき所があった、けれども悪人はいつも法を掻い潜ってきます、どんな手を使っても非力な私達に近づいて来ます、今の世の中、国が必ずしも守ってくれる訳ではない、今回の教訓はそこですね

え?あの状況からどうやって犯人を逮捕するまでを見せろ?すいません、それは出来ないんです、あまりに、信じられない話だと思うので、そして最後に、今まで応援してくれていたファンの皆さんには心配をかけたと思います、けれど私はまだこの仕事をしていたい、その覚悟の表れが、今日の動画です』


その日私の動画は急上昇一位、トレンドにも載る程に大盛況だった。


『実況系チャンネル、オヒトリチャンネルのレナ、先日の炎上から一転、素顔公開!なら先日写り込んだ顔は…、ねぇちょっと、これ見てよ!全くこの前は好き放題書いてたのに、無実と分かった途端これよ?』

『まぁまぁ、今日の予定は?』

『今日?動画の撮影、幽霊ちゃんも写る?』

『嫌だもう、撮影終わったら私とこの前のゲームの続きやってよね』

『お、やる気ね、負けないわよ?』


こんな感じで、二人暮らしを楽しんでいます。

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