青春夢見がちバカたちによる、ありふれない青春。

迅な_シスターズ

1 二年に進学。そこでまた友達百人作れるかって?不可能だっ!

 青春は、ありふれない。現実は、2次元とは違う。現実には可愛くて優しい幼馴染なんていない。実は自分のことを好いている美少女なんていない。だからせめて想像の中だけはと、甘くて、楽なものを創りあげる。それでも、それでも誰かがそれを求めて努力をすればいつかは手に入る物でもある。現実は、そうなっている。


ふと、空を見上げる。透き通るほど綺麗で、いつまでも見惚れてしまいそうな青空。そして、その周りに浮かぶ無数の雲。うむ、良い天気だ。青空と雲たちが良い味出してやがるっ!

 だが、空を見て御満悦な俺を妨げる影があった。

 「おい兄貴、邪魔」

 その正体は、俺の妹こと、向日葵ひまわりであった。

 「あ、悪りぃ」

 俺は即座に謝る。そして、その場からすぐに退く。まぁ俺が悪いからね?だって、玄関出てすぐのところでシート出して青空見てんだから。

 「大体、兄貴も学校じゃないの?」

 「あぁそうだが」

 「だったらこんなに呑気にしてて良いの?遅刻するよ?」

 「なんだ?心配してくれてんのか?」

 俺がそう言うと、向日葵は顔を赤らめてこう言った。

 「はぁ!?そんなわけ……あるに決まってるでしょ!!だって私、ツンデレじゃないもんね〜!!」

 と。しかも向日葵は、それだけ言うと行ってしまった。

 今日はツンデレだったのか。あの茶番はほぼ毎日やるからなぁ。あいつが何かしらの役を演じるやつ。

 しかし俺はそこで我に返った。

 ……あいつ弁当持ったのか?

 俺は急いで家の中に戻って台所へと向かう。……思いっきり弁当が置いてあった。あいつ……。置いてあった弁当を手に取ると、なるべく揺らさずに、そしてなるべく急いで家を出た。

 どうせ今は家に誰もいないから「いってきます」なんて言う必要はない。

 というかそもそも、「いってきます」なんて言う必要があるのだろうか?だってこの「いってきます」は、出発報告として言うわけだ。だったら、親や見送る人が玄関にいたとしたら、わざわざ出発報告をする必要はあるのか?親、そこで出発するの見届けてるじゃん。って話だ。何で言うんだろうか……?今世紀最大の謎だ……。あれか?気分の問題か?

 だがまぁそんなことを気にしても仕方がない。今気にしなきゃいけないのは……あいつ(向日葵)に弁当を届けることだ。あいつが気付いて取りに来てくれないと、俺は2年に進学早々に遅刻になってしまう。あいつの中学、チャリ通程度の距離だから早めに気付いてくれないと。だから、メッセージは送ったんだが……。既読は……っと。あ、ついたついた。

 そしてすぐに返信がきた。

 『あっらら〜。私ってばうっかりさん☆今すぐ取りに戻るから家の前で待ってて♡』

 気付いてくれて良かった……。そしてそこから待つこと5、6分……。

 「兄貴!取りに来てあげたんだから、感謝しなさいよねっ!」

 俺の妹は、まだツンデレを続けていたらしかった。

 「おいおい……。まだやってるのか」

 「何の話?それより、早く渡しなさいよ!兄貴のために取りに来てあげたんだから!」

 「いや自分のためだろ……。まぁいいや。ほい」

 「ありがとう……なんて言うと思ったぁーー!?」

 向日葵は、そう言いながら、行ってしまった。

 またか……。忙しい奴だな……って俺も急がないとヤバいわ!

 そう思い俺はクラウチングスタートの体勢をとる。そんなことしてる暇があったら急げって?この方が早い!(気がする)。

 そして、

 「バスターズ、レディ……ゴー!」

 と懐かしい台詞を吐きながら、駐輪場へと向かった。



 結論:ギリセーフ。ではあったんだが、教室に着いた時の俺といえば、そりゃあもう顔は真っ赤で息も絶え絶え、おまけに汗だくときてる。そんな状態で友達作りなんて出来ないよな?ってな訳で(どんな訳だ)、最近のラブコメのテンプレになりつつある(?)ぼっち、になってしまった俺氏なのでした。だが!諦めるのはちょいと早い。隣の席の奴とか前後の席の奴らが残ってるじゃん!

 前を見る。女子。しかもギャル。キッツ。

 右を見る。女子。しかもギャル。ありえん。

 後ろを見る。女子。しかもギャル。うっそん。頼みの綱だぞ、左!

 左を見る。……窓だったわ。つんだぁーー!!!運Aから俺の高校生活終了のお知らせ来ちゃうよ!大体、ギャルに囲まれてるって地獄かここはぁ!!(個人差があります)つーか、したら何で俺の席だけ空いてたんだ……?多分だけどこのギャル達は全員が全員仲が良いわけじゃないのか。だったら俺の席周辺に集まるなよ!!

 と、この世の終わりかのように絶望してる俺だったが、そこで奇跡(?)が起こる。教師が、俺の前の席のギャルに向かって

 「そこの席の人が来たわよ。宮内さん、どいてあげなさい」

 と言ったのだ!ってことは……!

 そうして、ギャルの代わりに座ったのは、目つきの悪い男子だった。うぉい!ギャルがヤンキーに変わっただけじゃねーか!何?神は俺にご立腹なの?苦しめるなら俺よりもっと適任がいるでしょーが!

 心の中で神に文句を言っていると、前の席のヤンキー(?)から声を掛けられた。

 「よう!これから2年間同じクラスだな、よろしくぅ!」

 と。

 あれ?案外ヤンキーじゃない感じ?

 「お、おう」

 「あぁ、目付きが悪いのはどうしようもないが、別にヤンキーってわけじゃないからな!」

 目の前の男子は俺の心を見透かしたかのように言ってきた。

 なーんだ。びっくりさせやがって。意外とお茶目なのな、神って。

 「お、おう」

 「俺の名前は蜻蜓あきえん あかときだ。お前は?」

 「俺は井希いねがい 躑躅つつじだ。よろしくな!」

 「おう!躑躅!」

 こいつなら友達になれる気がするわ!

 その後、しばらく暁と雑談をした俺氏なのでした。



 ……そういえば1年の時、同じクラスだった奴で仲良かった奴がいない気もする……。前言撤回!神、俺にご立腹だわ。どぉ゛じでだよ゛お゛お゛お゛!!!!

 まぁでも、こうして友達が出来たから今日は暁(もう呼び捨て)に免じて許してやるとするか!

 俺が心の中で神に対して偉そうにしてると、暁から声を掛けられた。

 「そういえばそろそろ始まるみたいだ、始業式」

 「んじゃ廊下に並ぶってことか。気を付けろよ?その目付きの悪さで怖がらせないようにな?」

 「お前だって目付き悪いだろーが」

 おぉ……!俺の言ったことを冗談として捉えてくれてる……!さっすが、暁だな!

 「行こうぜ、躑躅」

 「そうだな」

 俺は暁と一緒に廊下へ出て並ぶ。列は、出席番号順に並んでるので、必然的に俺と暁は前後になる。

 「ははっ、なんかこういうの懐かしい感じがするわ。」

 暁が唐突に笑いながら意味不明なことを言い出した。

 「何だそりゃ」

 中学でしょっちゅう並んだだろうが……。

 「あぁ、俺も言っててそう思ったわ」

 「わかってて言ったのか?それも何だそりゃ、だ」

 俺も唐突だが、思うに、こういう意味不明な会話をするのが親友だと思うんだよ。(※実際はそんなことないかもしれません。主人公の思い込みの可能性が無きにしも非ずです。)アニメとかラノベであるじゃん。特に青春物(感動ちょいあり)の奴なんかはさ。結局、俺が言いたいことは、暁はもう俺にとっては、親友足りえる資格が充分にあるってこと。まぁ、流石にまだ親友とは口にはしないけどな。暁がそう思ってないだろうし、それに初めて会ってからまだ1日目だし。


 話が180°変わるが、今回の始業式は、アレ・・があるんだっけか。……楽しみだな。

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