どのくらいの時間がたったのだろう。
ひどく長い時間が過ぎたような、ほんの一瞬しか時間がたっていないような、よくわからない。
王の間の風景は何も変わらず、音のない場所で僕はただうろうろと歩く事しかできなかった。王の間から出ることも、見えない壁に阻まれ、出来ない。
どうしたらいいんだろう。
僕は途方に暮れ、王の間の真ん中で座り込んだ。
王様とニーナ姫が佇んでいる。
王様もニーナ姫も微動だにしていない。
僕は二人を眺めることしかできない。
どうすれば、どうすれば。
考えても考えても答えは出ない。
ふと、気配を感じた。
視線の先にいるニーナ姫から何かを感じた。
人形のようにただ佇み、風景に溶け込む調度品のように存在感が希薄だったニーナ姫に何かを感じた。
僕は立ち上がりゆっくりとニーナ姫に近づこうと1歩踏み出した瞬間だった。
『僕の声が聞こえるかい?』
突然声が聞こえた。
僕はびっくりして後ずさった。
鈴のなるような美しく響くその声は僕を目覚めさせた女性の声と全く一緒だった。
ニーナ姫だと思う。
だけどニーナ姫の口は全く動いていない。
声もどこから聞こえてきたのかわからない。
この感じは初めてじゃない。
僕の故郷のはじまりの村で女神さまが僕に力を与えてくれた時、女神さまもこんな感じで僕に話しかけてきた。
直接僕の頭の中に語り掛けてくるようなそんな感じだった。
じゃあ、僕に話しかけてきているのは女神様?
あたりを見回しても誰もいない。
『僕の声が聞こえるかい?』
また聞こえた。
聞こえる。
聞こえます。
心の中で女神さまに答えた。
僕は答えようとしても話すことがなぜかできない、わからない。
『僕の声が聞こえているのならニーナ姫に近づいてくれるかい?』
女神様の言う通りに僕はニーナ姫に近づきニーナ姫の前に立った。
前に立ってから女神さまの声をしばらく待っていた。
『僕の声が分かるんだね。君は言葉を話せるかい?もし話せるのなら王の前に立ってくれないかい?』
話せません。
話し方が分からないのです。
僕はニーナ姫の前から動かなかった。
それから長い時間がたったと思う。
『君が話をできるようにした。何か話してみてくれないか?』
僕は女神さまに言われた通り話してみようとした。
「&$!$#&!%21%&$#1841!」
僕の口から声が出たけど自分でも理解できないような言葉が発せられた。
そしてまた女神さまは黙ったままになってしばらく時間が過ぎた。
『もう一度話してくれないかい?』
女神さまが僕に問いかけた。
先ほど言おうとした言葉を話そうとした。
「女神様!僕はどうしたら...!?喋れてる、僕は喋れているっ...!」
先程と違い、自分が発した言葉が自分で理解できた。
とても嬉しかった。
静寂の満ちた、まるで時間の流れが止まったような世界に僕一人だけ取り残されたようになっていた僕はとても怖かったけど今は、女神さまと話ができるようになった。
女神様、僕はこれからどうしたらいいのですか?
ゴーストリテラシー ろうと @pos_99
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ゴーストリテラシーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます