第41話 出立

門の下で振り返る。

今日でこの糞暑い南の国、レイゲンともお別れだ。


王宮襲撃から2週間。

王位簒奪による国の革命。

強く反発される事が予想された有力貴族達は謀殺で取り除いていたとはいえ、やはり遺族達からの反発は大きい。


国のシステム変更は一筋縄ではいかないだろう。


だがこれ以上私達に出来る事はない。

後はこの国がいい方向に転がって行く事を、願うだけだ。

あの子達の為にも。


「おねぇちゃーん!」


「レイ!?」


遠くからレイが駆けてくる。


「どうしてここに?」


「ガンゼルのおっちゃんから聞いたんだ。今日お姉ちゃんが町を出るって」


ガンゼルとは肉達磨……もとい革命軍のリーダーの事だ。

見た目通りの厳めしい名前をしている。


「どうしてもお姉ちゃんにお礼がしたくって」


「別にお礼なんて良いのに」


レイは当然、あたしが王宮を襲撃した事を知らない。

お礼と言うのは、革命軍に彼らの事を頼んだ事だろう。


「それと、俺。この国の兵士になるよ」


「兵士に?」


「うん。ものすごく強い兵士になって、貴族達がでかい顔できない様に街を守るんだ!」


彼には才能がある。

訓練を受けていたとはいえ、この歳であれだけ動けるのだ。

きっとその夢をかなえる事だろう。


「そう、応援してるわ」


理想で言うなら、彼が貴族の横暴を止める必要が無くなるのが一番なのだが。

だが世の中早々儘ならない物。

国のシステムの置き換えには、相当な時間がかかるだろう。


彼の様な将来有望な若者が、この国のを変えていってくれる事を願うばかりだ。


「うん!俺、頑張るよ!」


「それじゃあ元気でね」


「お姉ちゃんも元気で!」


手を振るレイに手を振り返す。

最初は熱くてだるい国だと思ったけど、こうやって見送りに来てくれた元気なレイの姿を見ると、来て良かったと心から思えた。


私は振り返って門を抜ける。


さらばレイゲン。


「ちょっと!待ってくださいよーー!」


格好つけて門を抜けた所で、私は大声で叫ぶ。

あの人達は待つという事を知らないのだ。

私がレイと別れ話をしている短い間に、もう遥か遠くまで進んでしまっていた。


ホント唯我独尊なんだから。


私はこれからも振り回され続けるだろう。

超常の天才令嬢、ティア・ミャウハーゼンに。


全く……先が思いやられるわ。

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最強令嬢の舐めプ~お嬢様のわがままで大賢者なのに魔法なしで世直しする羽目に~ まんじ @11922960

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