第11話 入学式2
「まもなく、△△〜、△△、です。」
車掌の声で目が覚めた。ふと車窓に目をやると、煌びやかなネオンと電飾が眩しかった。自分の全く知らない、異国の地に来たようだった。どこまで来てしまったのか分からないが、とにかく降りなければ。列車がガタンと大きく揺れて減速していく。初めて見る景色に心做しかわくわくしていた。
ドアが開いた。私は荷物をまとめてホームに降りた。改札を通りプラットフォームをでると、そこはまるで異世界だった。いや、まるで、でなく、本当の異世界のようだった。
歩いているのは、ガタイのいい男の人や、耳の尖った親子、ボロボロの布切れを纏って剣を持って彷徨っている人や、とんがりボウシのおばあさん。私は神隠しにでもあったのだろうか。これは神様が見せてくれている幻想なのか。夢なのか。何回か頬を抓ったりしてみたが夢ではなさそうだ。左手には商店街らしきものが見え、商品が陳列されているのが見えた。右手にはサーカス場のような建物があった。とにかく私はこの異色の光景に目を奪われ、その場を動けないでいた。何度瞬きしても変わらない光景に私はただ眺めることしかできなかった。
「おまえ、人間か?」
「うわぁああ!!!」
突然後ろから声をかけられ、驚いてしまった。振り返ると、胸まである茶髪に、鋭い目付きをした女の人だった。肩にはなにか重量感のあるものをぶら下げている。
「驚かせたな。私はリンだ。おまえはここの住人か?」
心臓がバクバクして、なにをいうのが正解なのか分からず黙っていると、
「喋れないのか?人間かどうか聞いてるんだ」
と迫られた。
額から冷や汗が流れてきた。こ、怖い…。人間だと言ったらどうなるのだろう。殺されるのだろうか。などと考えているとお腹が鳴った。
「…お腹で返事をするとはいい度胸だな。よし、ついてこい!」
「あっ、…」
その言葉のまま強引に腕を引っ張られて私は連行された。
どんどん街中に入っていく。これまですれ違う全ての人が、私の知ってる人間ではない。なんだかとても恐ろしいところに来てしまって、怖い人に連れていかれている。これは誘拐されているのだろうか。だとしたら被害とどけを--。
「ここだ。」
ぱっ、と腕を離されて一瞬よろめいた。体勢を戻して前を見ると、なにやら怪しげな文字で書かれている看板を掲げた建物があった。
「異世界食堂ニーチェ。私はここで料理を作ってる。とりあえず中に入れ。」
恐る恐るリンの顔をみると、少しだけ笑っているような気がした。それでちょっと安心し、「ありがとう…」とだけ呟いて中に入った。
異世界食堂ニーチェ 雀羅 凛(じゃくら りん) @piaythepiano
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