第15話 黒龍堂の新米道士

 戦いが終わって数日後、李珠の日常が戻ってきた。

 姉と共に飯屋へ行き、へとへとになるまで働いて、帰ってくる。前よりも李珠がよく働くようになったので、他の人達は驚いていた。


「いつの間にお使いまで覚えたの?」


 姉にまでそう驚かれてしまった。

 李麗は、あやかしに関する記憶を大部分失っていた。だから、黒龍堂に関する冒険は、李珠だけの秘密になるだろう。


「へへ」


 李珠は笑う。

 そんな秘密はまだ増えていくかも知れない。

 だって――


「李珠、いくのかい」


 飯屋が終わった後、『猫』が李珠を呼んだ。

 金華に導かれて、休みの日に、李珠は時折あやかしの世界へと飛んでいく。


「来たか」

「はい」


 飯屋には時々、不思議な話が流れ込む。それは姉をあのくしへと案内したけれど、今は李珠がそれに気付くようになっていた。

 圭城府で時々起こる怪異を解決する、見習い道士として。


「……なるほど、そのあやかしはな」


 話を持っていくと、夜叉国で――白い煙を焚きながら王仙夏が李珠に微笑んだ。

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龍のよろず屋 ~大辰国あやかし奇譚~ mafork(真安 一) @mafork

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