不思議な荷物⑫




翌朝になり、送馬は身体を揺すられて起きる。


「おーい、送馬くーん。 朝だぞ、起きろー」

「ん・・・」


―――・・・あれ、昨日僕はどうしたんだっけ?

―――兄さんと離れて、それで・・・。


どうやら工司の車の中で泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。


「お、起きたか。 食うか? さっきコンビニで買ってきたんだ」


そう言って菓子パンを手渡してくる。 だが食欲はないため受け取る気力がない。 なのに感情とは裏腹に送馬のお腹が鳴った。 恥ずかしくなり慌てて受け取る。


「い、いただきます・・・」


―――思えば昨日の夜は何も食べていないのか。


パンをかじっていると工司が言った。


「送馬くんは今日、学校どうする?」


昨日あのようなことがあったのに工司は普通に接してくれる。 時間を見ると朝の7時だった。


「今はゴールデンウィーク中なので学校はありません」

「あぁ、そうだったな」


工司も動揺しているのか頭が上手く回ってないのかもしれない。 それに昨日は葬式に戻らなければいけないと言っていたのに、多分行っていないのだろう。


「あの、テレビをつけてもらえますか?」


ニュース番では光平の遺体が見つかり犯人は自首で捕まったと報道されている。 犯人はまだここにいるというのに。


―――兄さんはやっぱり、僕のために・・・。


工司は本当の犯人は送馬だということを知らない。 だがこのニュースを送馬が熱心に見ていることから、あの遺体がそれだということは悟っていた。


「・・・工司先輩は、この後時間がありますか?」

「えーと、今日は・・・。 まぁ、あるっちゃあるけども」

「また昨日の場所、徳島まで僕を連れていってほしいんです」

「・・・なぁ。 本当に孝行が犯人だったのか? 俺はアイツがあんなことをやるとはとても思えないんだ。 あの涙、本当は送馬くんを庇ったんじゃないのか? 

 全て話してくれたら行ってやってもいいよ」

「・・・話します。 だからお願いします」


今は公共交通機関を利用する気にはなれなかったのだ。 懺悔して楽になりたいという気持ちもあったのかもしれないが、兄と工司の関係が崩れてしまうのはもっと嫌だった。 

例えそれにより自分が捕まることになったとしても。 二人はそのまま発車した。 道中話しながら徳島までやってきた。 工司は全てを聞き『馬鹿野郎』と小さく呟いた後言った。


「ここまで来てどうするんだ?」

「光平くんの両親に会いに行きます」

「はぁ!?」

「光平くんとは同級生で、同じ中学だったから」

「・・・そうか。 分かった、ここで待ってる」

「いえ、工司先輩は帰ってもらって」

「孝行に頼まれたんだ。 送馬くんを連れて帰れ、って」

「・・・分かりました。 ありがとうございます」


昨日の孝行と同様、街の人に光平の住所を聞きそこへ向かった。


―――・・・ここか。


チャイムを鳴らすと母親らしき女性が出てきた。 それを見て勢いよく頭を下げる。


「送馬です。 本当は光平くんを殺したのは僕なんです! ごめんなさい!」


罪を告白した。 この後は警察に自首をしに行き兄を解放してもらうつもりでいる。 母親は困惑した表情を見せ、玄関に置いてあった一枚の付箋を渡してきた。


「これは・・・」

「もし送馬さんが来たら渡してほしいと頼まれたの。 私は送馬さんたちのことを恨んではいないわ」

「・・・え?」


付箋を見ると『出所するまで待ってて。 孝行』と書かれていた。 作文事件の事情を全て聞いた後工司の車まで戻る。


「おかえり。 帰るか」

「・・・はい」


車に乗り込み高知へと出発する。


―――兄さんが来るまで頑張ろう。

―――バイトをして、兄さんを養えるくらいまでお金を貯めて。

―――そして一緒に暮らそう。


送馬は前向きにそう思っていた。






                                -END-



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不思議な荷物 ゆーり。 @koigokoro

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