第225話 ある薬とクリーンの使い方
あたし達は催眠薬の効果で眠っているレガマスを丸太に縛り高性能になった身体で担ぐようにしてハンターギルドまでもどった。
「パオラさん、ただいま」
縛ったレガマスは、あまりに巨体なので瑶さんとダイさんに任せてギルド前に置いて、さっそく依頼達成の報告をしようと窓口のパオラさんに声をかけた。
「あ、アサミ様お帰りなさい。納品ですか」
依頼を受けて1日目だからかしらね、パオラさんは普通の討伐の納品だと思ったみたいね。
「いえ、レガマスを捕獲できましたので報告に来ました。レガマス自体は大きいので外で瑶さんとダイさんが見張ってます」
あたしの言葉にパオラさんは驚いたみたいね。
「え、もうですか。レガマスは中々見つけられないって聞いているんですが」
「ええ、運が良かったんだと思います。とりあえず確認をお願いします」
あたしが言うと、パオラさんは慌ててギルド前に走っていったわね。
「な、なんですか。見た目はレガマスですけど、サイズが2周りは大きいじゃないですか。こんなのどうやって捕獲したんですか」
ギルドの前のレガマスを見たパオラさんが目を見張っているわね。もともとサイズは聞いていなかったのでこんなものだと思っていたけど、普通より大物だったみたいね。
「パオラさん、大きいと問題ありますか」
瑶さんがサイズ違いで問題無いか確認しているわね。
「い、いえ特にサイズに指定はありません。この背中のライン。レガマス、間違いありません」
「じゃあ、依頼達成で良いですね」
「あ、はい。間違いなく依頼達成ですが、すみません、こんなに早く達成できると思っていなかったもので依頼人への移送の準備が整っていないんです。すみませんが、このまま依頼人の元へ移送を依頼したいのですが、お願いできませんか」
あら、まるでゲームのキャンペーンクエストみたいね。でも、この後の予定があるわけでもないし移送だけならそんなに問題もないんじゃないかしら。
「別にそれくらい…」
「移送って、どこまでですか」
あたしが、思わず受けようとしたら、瑶さんが横から話を引き継いだわね。どこまでって、クリフのハンターギルドで依頼を受けたんだから依頼人はクリフの住人だと思い込んでいたけど考えてみれば他から回ってきた以来の可能性もあるわよね。
「グライナーの妖精の花園ってお店からの依頼なんですが、そこまでの移送もお願いしたいのですが、受けてもらえませんか」
パオラさんの言葉を受けて瑶さんは、あたし達を見回したわね。あたしも皆の顔を見ると頷いている。
「うん、わかりました。移送依頼お受けします。移送用の檻はありますよね」
「ええ、もちろん。檻になっている馬車がありますのでご利用いただけます。向こうで引き渡したら引き取ってきてください」
森の中を移送することは出来なくても街道を移送出来る馬車はあるみたいね。さすがに、縛ったままの状態で移送するのは大変なので馬車で移送できるのなら助かるわね。
グライナーまでの移動は、特別な事もなく順調だったんだけど届け先の場所は、何と言うか夜のお店の集まる地域にあってドキドキしながら妖精の花園ってお店のドアを叩いた。
「返事がないわね。中に入って良いですかね」
「それしか無いでしょう」
あたしの疑問に答えたユキがドアを開けた。
中に入ると受付窓口みたいな場所があってその先は廊下になっていて左右に部屋があるみたいな作りだったのよね。
「すみませーん。どなたか見えませんか」
窓口から声をかけてみることにした。
「はーい。いらっしゃいませ。本日はご指名…、あら可愛い女の人ね。入店希望かしら」
奥から女の人が顔を出してきた。
「いえ、ハンターギルドの依頼でレガマスを連れてきました」
「あら、こんなに可愛いらしいのに優秀なハンターなのね。あ、私はこの妖精の花園の店主でマリアよ、よろしくね」
値踏みするような視線がちょっと苦手なタイプな感じかしら。
「マリアさん、すみませんが、レガマスを確認して下さい」
瑶さんが間に入って話を進めてくれたので、ちょっとホッとした。
「あら、あなたもいい男ね」
「マリアさん」
今度は瑶さんに近寄って来たわね。すぐに躱されたけど。
「ハイハイ、レガマスの確認ね」
そう言って店の前に停めた馬車に向かった。
「こちらです」
店の前ではナミとユキが対応してくれている。さすがに、そこでは真剣な店主の顔のマリアさんがレガマスを確認している。
「ずいぶん、大型の個体ね。これなら…、店の裏庭にレガマス用の檻があるからそちらに入れてちょうだい」
マリアさんの指示に従ってレガマスを移動させる。当然暴れられては困るので催眠薬を嗅がせて眠らせたレガマスを裏庭の檻まで運んだ。
その様子を見ていたマリアさんは、驚いた顔でつぶやく。
「この巨体を、あなた達本当に人間なの」
「間違いなく人間です。ところで薬の材料って聞きましたけど、どんな薬かお聞きしても」
あたしが好奇心に負けて聞くと、ちょっとニマニマした笑顔でマリアさんが答えた。
「男性が元気になる薬よ」
「「「「え」」」」
瑶さんとマルティナさん以外のあたし達が驚いていると
「商売柄、こういうのが必要な客もいるからね」
そう言いながら、マリアさんはレガマスの下腹部からなにかを切り取り、淀みなくクリーンを掛けた。
「随時手慣れたクリーンね」
あたしがつぶやいたのが聞こえたのか、マリアさんは、さらにニヤリとした。
「ふふ、商売柄必要だからね」
「商売柄?」
あたしが首をひねると
「うちの商売、ギルドに聞いてないのかしら」
「妖精の花園のですか」
「聞いてなくても、察しそうなものだけど。うちは娼館よ。だからね事後にクリーンが必須なのよ。子が出来ちゃ困るからね」
マリアさんの答にあたし達は顔を赤くしてしまった。
「あれ、でも一般家庭でもクリーンは使うよな」
そんな中でダイさんが疑問をくちにした。
「はは、こつがあるのよ。客の物を受け入れた部分を意識して使うのさ」
マリアさんの赤裸々な言葉にあたし達は、さらに赤くなってうつむくしかなかった。
「あぁ、マリアさん。うちのメンバーにはちょっと刺激が強いので、そのくらいにして、達成のサインをもらえますか」
瑶さんが助け舟を出してくれて、話題を変えてくれたのでホッとしたのはナイショ。
「ふーん、皆いい年に見えるけどね。まぁ、いい。依頼書出してちょうだい」
マリアさんに達成のサインを貰って、ちょっとうつむき加減にハンターギルドまで引き上げた。
JC聖女とおっさん勇者(?) 景空 @keicoo
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