第224話 レガマス

「あ、暁影のそらのみなさん、こちらの依頼受けていただけませんか?」

クリフに戻り1カ月ほど経ったある日、ハンターギルドでいつものように納品をしているとパオラさんに声を掛けられた。

周りを見回すと普通に他のハンターも居るわね。ということは、特に内密な依頼というわけじゃないのね。

「これは、採取依頼ですか?」

あたし達に採取いらいっていうのは珍しいわね。

「採取依頼に分類されていますけど、実際には捕獲依頼と言うのが正確でしょうか」

「捕獲ですか?」

「はい、森の奥。そうですね、至らずの洞窟の更に少し奥に稀に出没するレガマスという獣がいるんですね。これのある部分がちょっと特殊な薬の材料になるんです。」

パオラさんがちょっと口を濁すような説明ね。

 「でも、それだったら、討伐してその部分だけ持ってきても良いんじゃないですか?」

 あたしが疑問をくちにするとパオラさんもちょっと言いにくそうに口を開いた。

「それが生きた状態でその部分を採取してすぐに加工する必要があるそうなんです」

「なるほど、それで生け捕りにしてくれって事なわけですか。瑶さん、どうしましょう?」

 あたしは、瑶さんに視線をむけてどうしようかと相談ね。

「お話は、分かりましたが、レガマスの強さはどんなものですか?」

 あ、そうよねターゲットの強さも分からずには受けられないわね。さすが瑶さんは、落ち着いているわね。

「そうですね、以前ワイルドティーガーを討伐されましたよね。一般には、あれより少し弱いと言われています。ただ、珍しいというか、出没地域が地域なのでめったに報告も無くバラツキがある感じです。ただ、特に魔法や特殊能力はなく単純にタフで力の強い熊型の獣ですね」

パオラさんの説明を聞いたあたし達は顔を見合わせ相談を始めた。

「ワイルドティーガーよりも弱いなら私達でなくとも受けられるハンターは、居そうだけどわざわざ私達に声を掛けた理由は何です?」

瑶さんの疑問も尤もね。何故かしら?

「単純に捕獲は討伐より難しいからですね。力任せな討伐なら可能なハンターパーティーはいくつもいますが、むやみに傷つけずに捕獲までとなると…」

パオラさんの説明に信頼されているのを感じたのよね。

「あたしは、受けても良いと思う。ワイルドティーガーより弱いならなんとかなるんじゃないかしら」

あたしの言葉にパオラさんがいきおいづいて言葉を重ねてきた。

「お願いします。しがらみもあって何とかしたいので」


結局依頼を受けることにしたあたし達5人は、至らずの洞窟近くでターゲットを探している。

「統率されてはいなそうだけどアンデッドばかりですね」

まとめて討伐したあのときほどでは無いけど、この辺りは未だにアンデッドが多い。あたしが軽く愚痴るとダイさんが呆れたように口をひらいた。

「朝未、はまだ聖俗性魔法で遠隔でアンデッド特攻だからまだ良いだろ?俺なんかコレだから、ゾンビ相手だと臭いしレイス相手だとドレインが怖いんだぜ」

「何言ってるの。朝未にエンチャント貰ってるから臭いはともかくドレインは平気でしょ?」

ダイさんの愚痴にナミが呆れたようになだめているわね。

「そうは言ってもなぁ。自力でだとレイスなんかは瑶さんと朝未、それに雪の3人しか戦力にならないからなぁ」

「ダイさんの出番はターゲットのレガマスが見つかってからでしょう」

そんな話をしていると、あたしの探知に感じたことのない反応があった。

「未確認の反応です」

あたしの言葉にみんなが、表情を引き締め、それぞれの武器を構えた。

待ち構えるあたし達の前に現れたのは3mを超えそうな灰色の熊。チラリと見えた背中に銀色のラインが見えた。

「背中に銀色のライン。レガマスです。ダイさん引き付けお願いします」

そう言い、あたしはいつもの補助魔法を掛ける。

「オラァコッチに来い熊やろう」

あたしの言葉にダイさんが挑発しながら至らずの洞窟で手に入れた盾を構えて前にでた。あたしとユキが範囲を絞ってコールドの魔法を掛ける。

今回、目的は討伐でなく捕獲なので武器での攻撃は牽制程度。瑶さんとナミはロープを構える。

ドカンと大きな音を響かせダイさんの構えた盾にレガマスが突っ込んだ。

「!」

一瞬あたし達は息を飲んだけれど、ダイさんは上手く盾でレガマスを抑え込んでいるわね。

更にあたしとをユキはコールドを重ねる。ダイさんも寒そうだけど、もう少し我慢してもらうしかないわね。補助魔法で魔法耐性が上がってると信じて頑張ってもらう。

ダイさんも言葉では色々言うけれど盾役に慣れレガマスの敵意を逸らさない。さすがに無傷とはいかないので、時々あたしとユキがヒールしている。

しばらくそうして粘っているとレガマスの動きが鈍ってきたわね。

「そろそろロープを掛けるよ」

瑶さんの掛け声にナミもロープを投げた。ロープの先には重りが付いていてレガマスに絡みつく。

動きが十分に鈍ったところでハンターギルドで準備して貰った催眠薬を掛ける。

あたしはウィンドの魔法で催眠薬をレガマスの顔辺りに誘導した。

更に格闘すること30分程。コールドと催眠薬の効果でレガマスは動かなくなった。

あたし達は、ロープでレガマスの手足を縛り捕獲に成功した。

後はギルドまで運んで依頼達成。

達成よね。

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