第18話

 足にまめができてしまった。二年生最後の登山は、思ったよりもきつかった。地図にある道が消えてしまっていて、僕らは迷いかけた。幸いにも木こりなどが使う細い道があり、「高い方に行けば大丈夫」という先生の言葉に励まされながら、なんとかちゃんとした登山道に出ることができた。

 終わってみれば笑い話ということで、結局は楽しかったのである。特に南宮さんは、良く笑っていた。「家で笑えないから、ここで笑わなきゃ」と言っていた。

 そして、家に帰ってくるとどっと疲れる。日常に戻ってきてしまった、という思いもあるし、筋肉痛がやってくるから、という当たり前の理由もある。

 いつものように、郵便受けを覗く。そこに、一枚の封筒が入っていた。送り主の名前は……

 慌ててその場で封を切る。中には手紙と、一枚の写真が入っていた。広い草原に、牛が何頭もいた。牧場のようだ。

 手紙には、こう書かれていた。


【何も言わずにいなくなってごめん。

 ハガキだけにしようかと思ったけど、ちゃんと、書くよ。

 今、山の中みたいなところに住んでます。

 近くにはダムとか牧場とかがあります。

 星もきれいです。

 なんとか生きてるよ。また、連絡する】


 何もかも、許せると思った。あいつなりに、考えた末の手紙だったのだろう。

 そうだ、今日も久佐木君からカメラを借りたのだ。早く、現像しに行かないと。

 リュックを玄関に投げ捨てて、僕は写真屋へと走った。どうやら僕は、まだまだ元気だった。



(完)

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輝く町は近く遠く 清水らくは @shimizurakuha

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