「久木田千尋 / 縞田留衣子」

 昼休みになり、彼ら彼女らは、当然のように食事をはじめた。


 それは食欲の露悪ではなく、長い時間をかけて、そうするべきであると洗脳されたに過ぎない。彼ら彼女らは、、気づかないうちに健康にいるのだ。


 なぜ、健康が目指されるべき目標とされているのか。その目標の設定が、。そのことに対する思考は、彼ら彼女らにはない。


「ねえねえ」


 私の左肩がぽんぽんと叩かれた。ふり返るまでもなく、久木田千尋であるということは分かった。


「一緒に話ながら食べない?」

「いい」

「そっか」


 いつものように私が拒絶すると、久木田千尋は「じゃあ、明日も誘うね」と言って、手を振ってからくるりと背を向けた。


 その後ろ姿を一瞥いちべつし、筆箱をもって、廊下へとでた。それを見つけた縞田留衣子は、右足を伸ばして、私をひっかけようとしてきた。そんなことは分かりきっていたから、面倒ながら、その佞悪ねいあく


 いつものように、部室へと向かう。

 後ろから、縞田留衣子の悪口が聞こえてくる。

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思春期 紫鳥コウ @Smilitary

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