第8話 テストだってさ

 とある日のとある学校での昼休み


「どうするよ優斗!来週中間テストだぞ!」


 チャラ男こと緒木周也おぎしゅうやは見た目にそぐわない情けない声で俺に泣きついてきた。


「どうするも何も、普通に勉強してればなんとかなるだろ」


「お前はそれでいいかもしれねえけどさ・・・俺の学力じゃまずいんだよ!」


 俺は普段から予習復習をきっちりとやっているため、成績は悪いほうではなく、毎回学年の上位10%に入っていたりする。

 しかし、この男はあり得ないくらい勉強をしないため、テストの度に泣きついてきて、付け焼刃にしかならない勉強しかしないため、下から20番目くらいの成績である。


「今からでも勉強すればまだなんとかなるかもしれないぞ。家に帰ったら5時間は勉強するんだな」


「は⁉無理無理無理無理絶対死ぬ。1時間でも無理なのに!」


 一体どうしてこいつは県内でも学力が高い方のこの学校に入学することができたのか。学校側がなにかのミスをしたとしか思えんな。

 本人を前にしてそれを言うのはあまりに酷なので言わないことにする。


「この学校にはいれるくらいの学力はあるんだ。死ぬ気で勉強すればまだなんとかなる」


「じゃ手伝ってくれよ~放課後空いてる?お前の家に行くからさ~」


 突然の訪問宣言に僅かに驚くが悟られないために平静を装い答える。


「い、いやそれは無理だ」


「どうしてだよ~頼むよ~」


「こっちにも色々事情があるんだよ。悪いな」


 その事情が同じクラスの女子と同棲していると知られては学校生活はおろか家でも色々とまずいことがある。

 ここは別の案を提示するしかない。


「ほら、図書室とかどうだ。あそこだと静かだし集中できる」


「え~図書館か・・・まあいいや。じゃ学校終わったら一緒に行こう」


「分かった。その代わり午後の授業も集中して受けろよ」


 こいつが相手だとなんとなく気疲れする。友人としては好ましく思っているが、なんとなく苦手というかやり辛いというか。まあ、そういう奴なのである。

 何はともあれ俺も勉強しなければな。

 特別学力に執着しているわけではないが、成績が下がるのはなんとなく嫌だ。

 趣味を制限するのは苦しいが頑張るしかない。




 

 授業が終わり、周也と約束していた図書室へと向かった。

 やはりというか、テスト期間なだけあって、多くの生徒が足を運んでいた。

 誰もが私語どころか一言も発せずシャープペンシルを走らせるカリカリという音と僅かな足音だけがそこには響いていた。

 この空間のルールに則り、周也のみに聞こえるくらいの囁きで話しかける。


「ここでは私語厳禁だからな。絶対に話しかけるなよ」


「おま、それ舐めてんのか。俺だって図書室くらい来たことあるっちゅうの」


 今しがた注意したのにも関わらず、このアホは普段話すのとなんら違わないような声量で返答する。

 周りの生徒の視線が痛い。

 再び囁くように注意する。


「だ・か・ら、ここでは静かにしろと言ってんだろ」


「お、おう悪かったよ」


 運よく空いていた席を見つけ、周也の集中力が切れるまでの1時間30分ほど勉強をした。

 もちろん、俺は1時間30分の勉強では満足できないので、家でもやった。


 周也は家でもやってるだろうか。

 教えてやらんこともないが、そこまで面倒を見て自分の学力をキープできる自身がない。

 周也にはがんばってもらうしかないな。

 

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同居生活はイベリスのように~テンプレ展開がそう上手くいかない件~ 水理さん @MizuRe

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