第7話 きらいな私
体調を崩したため、少しの間ですが1話あたりの文字数が少なめになります。
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普段から平日だろうが休日だろうが関係なく、俺が起きる頃には彩花さんは既に諸々の準備を終えている。
元々、俺は起きるのがそんなに得意ではなく、朝に弱い。
あのカーテンを開けたときの目を刺すような痛みと無理矢理まぶたをこじ開けられるような感覚が苦手だ。
しかし、今日に限っては、俺にしては珍しく朝の5時に目が覚めた。
昨日は特別早い時間に寝たわけじゃないのに。
二度寝しようにも学校があるためそのあとに起きれる自身がないし、そもそも二度寝ができそうにないくらいに目がはっきりと覚めてしまった。
まあ、いいや。早く準備を終わらせて久しぶりに朝ごはんでも作るか。
そう思い1階のリビングへと向かった。
何を作ろうかと考えながら階段を下りていると、すぐ目の前にある玄関に見慣れた明るい茶髪が見えた。
「こんな朝からどこに行くんだ?」
単純に疑問になったことを今まさにドアノブへと手をかけ、外に出ようとした義妹に投げかけると、まるで今まで俺の存在を感知していなかったように肩をビクッと震わせた。
よく見ると彼女の耳にはワイヤレスのイヤホンが付いており、それの影響だろう。
「なんで起きてるの?まだ5時よ」
「そりゃあ、俺だって早く目が覚める時くらいあるさ。まあ、かなり珍しいけどな」
そう言い、自虐的に笑ってみせると少し緊張感がにじんでいた彼女の顔が気持ち穏やかになった気がした。
「で、どこ行くつもりなんだ」
「あー・・・あんまり知られたくなかったんだけど・・・まあ、いいや。毎日ランニングをやってて今からちょっと走ってくるの」
あまり知られたくなかったのなら別に言わなくても良かったのだが、素直に教えてくれたんだ。こちらも素直に受け取るべきだろう。
「へ~、感心だな。ダイエットか?」
「私の体型でダイエットが必要だと思う?」
「悪かった。でも、他になにか理由があるのか?」
そう聞いた時、ほんの一瞬の間だけ、俺の義妹は言葉を詰まらせた。
何かまずいことを聞いた、と瞬時に判断し訂正しようとする。
「いや、無理に答えなくてもいい。色々、理由が―――」
「今の私が嫌いな昔の自分に戻りたくないだけ。それだけよ」
俺の発言を遮るように口にしたその台詞には堅い決心のような力強さがあった。
どう答えたものか。そう考えているうちに、
「それじゃ、行くから。朝ごはんまでには戻ってくる」
「あ、ああ。気をつけて――」
言い終わる前に閉められた扉を見て俺は互いに無関心である彩花さんとのはっきりと目に見えるような、互いの声も届かないような壁を感じた。
「朝ごはん何にしようか・・・」
なるべく気にしないように朝食のメニューを考えることにした。
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