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それから半月ほどで、わたしは高校3年生になった。陸上部は高2の秋で辞めていたから、わたしは高3になると同時に本格的な受験勉強に突入した。具体的には、予備校に通い始めた。こうと決めた息抜きの時間以外は、四六時中勉強のことを考え続けて、夢の中でさえ勉強に
受験勉強とその結果はそれだけでも色々あったけど、その話は別の機会に譲ろう。
とにもかくにも入学先の大学は決まったが、わたしの心はすっかり疲れ切って、うるおいを失っていた。
わたしは大学で、わたしに好意を寄せてくれる人と出会った。
彼はわたしをおしゃれな喫茶店や映画館、ドライブに連れて行き、自分から告白してくれた。交際を始めてからは横浜の中華街を歩いたり、江ノ島の水族館へ行ったりした。彼はいつも自発的にわたしを誘ってくれたし、デートの
それでも、人の
それから間もなくできた新しい彼氏とは、3ヶ月で仲違いした。半同棲のような生活をしていたのだけれど……、いや、別れたのはあまりにもつまらない理由だから、その話も別の機会に譲ろう。
2人の男にないがしろにされた今、わたしが思い出すのは木森先輩のことだ。
木森先輩はつくづく不器用な人だった。でも、下心のない
あの美術館巡り以来、わたしは木森先輩と1通のLINEさえ交わしていない。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ。楽しかったよ。またな」
「はい、またいつか!」
別れ際にそんな会話をして、それっきりだ。
わたしたちは男と女としてではなく、単に先輩と後輩として別れた。更新していないから、その関係は今でも変わらない。
そのせいで、わたしの中の木森先輩は、今も理想化された存在であり続けている。
山茶花(さざんか) あじさい @shepherdtaro
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