第3話
次の日、僕は朝早く起きて、町を出る。
向かうは北側。川に沿って上流に当たる。
1時間ほど歩いた先に、村があった。
その村は山のふもと辺りにあり、木材を使った家と日当たりの良い斜面を利用した農地が広がっていた。
「どうも!」
この辺りで薬草の情報を聞きたいところである。
村のほうが入る際のいろいろな手続きが楽な気がする。
「この辺りで薬草が取れるって聞いたんですが」
「お前も薬草目当てか」
村人の雰囲気が変わった。
「えっと、どうしたんですか?」
村人曰く、この村での冒険者が来る頻度というのは、最近増えているというのである。
しかも、その薬草絡みでだ。
まあ、僕自身、この村での薬草がどのような形で使われているのかを知らない。
「この村の特産物の一つに、その薬草があるんですよ」
村人は話を続ける。
自生している薬草を採取し、それを町に持っていき、それを売る。
そうすることで、生計を立てていた人たちがたくさんいたらしい。
まあ、冒険者がたくさんこの村付近に現れたことにより、この村周辺の薬草は少なくなってしまった。
そのため、村人たちは危険を承知でさらに山奥へと薬草の採取に行かなければならないらしい。
その結果、魔物に襲われる可能性が上がったわけだ。
「困りましたね、この村の輝石はどちらに?」
「ん?おぉ、それなら、俺の家に……」
「あ、あなたがこの村の長だったんですね!
少し、見せてもらっても?」
普通の冒険者は、そんなものを見たがらない。
「構わないが、お前、一体……」
村長の不思議そうな表情も気にせず、僕は村長の家へと案内してもらった。
そこにあったのは黄緑色の輝石。
「この輝石も一時期は深緑だったりしたらしいんだがな、俺の代からか、何故か黄色味がかってなぁ」
僕は村長の話を聞きながら輝石を見つめる。
「ちょっと、触っても良いですか?」
僕は村長に向かって話しかける。
「いや、あまり部外者というか、長になるやつ以外には触らせたくないっていうかさ」
「大丈夫ですよ、僕もこれの扱いは熟知しています」
そういうと、僕の輝石をチラリと見せる。
「おぉ、そういう事か。それなら、別に構わない」
領土を維持するための輝石であるため、その扱いはかなり大変だったりする。
僕はその軌跡を優しく持ち上げる。
「あの、これ……日光に当てたりしてます?」
僕は輝石を持ちながら、村長に話しかけた。
「いや、先代の村長がそれに日光を当ててたある日、とんでもない災いが起きたとかで、それ以降、日光には当ててないな」
うーん、自分の輝石と比べてもここまで雰囲気が違うものかと驚くところがある。
そして、黄緑色に輝いているこの村の輝石は植物に対応する町に特化していると言っても良い。
しかし、本来は緑色のはずのそれは力が徐々に失われつつあるのか、黄色っぽくなっているのである。
僕はその石を太陽光に当てる。
少しばかり、石が喜んだような気がした。
その日からか、領土が少しばかり活性化した気がした。
「輝石の力が少しばかり増したっぽいもんな」
輝石には色々なものがあるみたいだ、そんな気持ちで村を散策する。
「今日の薬草の収穫はいつもよりも多かったな」
そんな声も聞こえてくる。
輝石にあった領土の管理なんかは見ていて面白いものがある。
僕は数日間、その村で過ごした。
オージャイト タウン @kake_sho
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。オージャイト タウンの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます