第17話 再会
◆秋人視点◆
「これで気が
ライゼスから
「……え?」
「善人面して記憶喪失の振りか? どうせ、違反警告が
当てつけるようなライゼズの
周囲を見渡せば、自分はフィーチャーテーブルにいる。
勝った、らしい。
ライゼズに。
そして――優勝したらしい。
なんら実感を
「おかしいな……ライゼズ。あんたも企業にスポンサードされたプロ・プレイヤーだったんじゃないのか?」
ライゼズの顔は
秋人はさらに
「あれ? 違ったっけ?」
「……クソがっ」
そう
やれやれと息を吐き、気を落ち着ける間もなく――秋人を強烈な偏頭痛が
「いったぁ……」
あまりの痛みに秋人は
割れそうに痛い。
「おめでとう、駿河氏……」
宮下部長の声を聞いて、秋人は顔を上げた。
シャドー演劇部の面々が集まってきた。
宮下部長をはじめ、東、北原先輩も感激を湛えた瞳で見つめてくる。
恥ずかしい……。自分はそんな尊敬を集めるような存在などではない。むしろチート行為に手を染めた
勝美が一歩前に出て、秋人に顔を近づけてくる。
「なっ、なっ……!?」
「もう……〝あの人〟じゃないのよね?」
「……え?」
まるで神秘の
「そう……もう引っ込んじゃったんだ」
「…………」
残念そうに苦笑を浮かべた勝美は、すっと身を引いた。
そのとき、背後で声が起こった。
「駿河くん」
「……っ!?」
席を立ち、声の方に振り返る。
そこには、クロエがいた。
勝美に「ほーら」と背を押され、ビックっとしながら歩み出る。
「クロエ……どうして……」
照れ臭そうにクロエは、秋人から視線を
「駿河くん……試合、見てたよ。すごいね?」
「ああ……」
クロエとの再会。求めつづけてきた機会のはずなのに。あまりに
視線を合わせるのを、クロエは避けている。うつむいたままだ。
秋人は腹を
「クロエ!」
「えっ……えっ……!?」
「悪かった!」
「ちょっと、駿河くん……」
「クロエ――あの約束は、まだ有効かな?」
「約束って……」
「シールド戦だよ。また一緒に遊ぼうって」
「…………」
「たぶん、優勝賞品のブースターパックが手に入る。一緒にプレイしないか? もしよければ、シャドー演劇部で」
確認するように、演劇部の面々を振り返る。
宮下部長や勝美たちが
クロエは――その青白い顔に笑顔を広げた。
「……うん!」
◆ 優子視点 ◆
駿河秋人は、今朝も病院に立ち寄り、学校に向かった。彼は気づいていないようだが、ありとあらゆる心理テストで、〝それ〟は明らかだった。
目覚めたのだ。
『私だ……』
電話口に男の声が答える。
「芹沢博士。プログラム人格・
優子の報告に、芹沢と呼ばれた男は満足の笑みを洩らした。
「検体は、いまだ有効ということだな?」
「はい……偏頭痛の副作用が気になるところではありますが……」
「問題はなかろう。薬で対処できる範囲内だ。それに――いつまでもカードゲームで遊ばせておくわけにもいかん……そろそろ計画を次の段階に移行するときかもしれん」
特殊音源による脳機能の拡張。
勝利への原初的な渇望。
その研究の行き着く先は――。
「検体の観察をつづけてくれ」
「はい……」
優子はそこで通話を切った。
第一部・完
ナンバー・オブ・ザ・ビースト:TCGプロ・プレイヤーを引退した俺ですが、復帰してまた世界最強を目指します。 春日康徳 @metalunanmutant
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