第1話

 建て付けの悪いドアの下から流れてくる冷気に、足の指先たちが震えている。まるで冷気から逃げ込んできた虫たちを歓迎するかのような隙間が鬱陶しくてたまらない。コンビニ弁当を貪り、スマホの求人サイトをスクロールする。職に対してのこだわり云々を言っていられる状況ではなく、明日を生きられるだけの資金を賄えればなんでもよかった。求めるのはそれ以上でもそれ以下でもない。

 ふと、ひとつの広告が目に留まった。質素なサイトのなかで一際異彩を放つ長方形の中に書かれていたのは

                 《AV男優募集》

の文字。明らかに給料の桁が違うのだ。無論、男である以上興味をそそる内容なのは間違いないのだが、それ以上にこの男、館石翼は金に飢えていた。高卒4年目、就職に失敗しこんなボロアパートでバイトをころころ変えながら生計を立てている。最後に性に触れたのは高校生のときだろうか。自慰も半年以上前にして以降、体力的にも精神的にもする気になれなかった。

「これは流石に逃せないよな‥」

迷っている時間はないという感情と、そもそも自分の性器は健在なんだろうかと言う疑問が葛藤する。ただ、この勝負は前者の1ラウンドKO勝ちとなった。


 その夜、半年ぶりに剥いた性器の恥垢を洗い流し、現役時代には聞いたことの無い「浜守みらん」と言う名前の女優で祝杯を上げた。半年ぶりの賢者の中で広告に記されていた番号に応募の旨の電話をかけ、面接の日時を聞いた後は、ぼーっとしながら相槌だけ打っておいた。

 

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初恋は教え子らしい ぴ√ @pirinakeee

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